・Koller(1884年)によって局所麻酔作用が見出され、初めて医薬品として用いられた。 ・現在の日本においては、日本薬局方収載品として「コカイン塩酸塩(塩酸コカイン)」の原末が販売され ている。これは目的に応じて、粘膜ならば5~10%溶液、点眼ならば0.5~4%溶液、外用ならば1~5% の軟膏などとして使用される。 ・局所麻酔薬としての作用機序は、電位依存性ナトリウムイオンチャネルの興奮を抑えることで、感覚神経 の興奮を抑制することによる。 ・麻酔の効果は15~30分間持続する。 コカインの覚醒作用と精神依存性 ・コカインを全身的に投与した場合、脳・神経系に下記のような多大な影響を与える。ちなみに一般的な最 大投与量は1回に50mg、1日に100mgまでとされる。 ・コカインの覚醒作用は、ドーパミン作動性神経のシナプス前終末からのドーパミン放出を促進させること、 および、ドーパミントランスポーターに直接結合して阻害し、放出されたドーパミンの取り込みを抑制し てシナプス間や細胞外のドーパミン量を増加させること等によるとされている。 ・具体的な徴候としては、中枢神経系が興奮して体温上昇、呼吸促進、心拍数増加、血圧上昇、反射機能 亢進、不眠、多弁などが現れ、また多幸感、爽快感、自信、活力などの増大が見られる。 ・上記の状態が5分~15分程度続いた後は、ドーパミン量が急激に低下するために、逆の徴候すなわち憂鬱 になったり落ち込んだりする。 ・連続的に投与した場合、シナプス前終末のドーパミンが再補充されるまでには時間がかかるため、更なる コカインを要求するが、得られる多幸感は減少していく。 ・一度に数百mg以上を投与した場合、気分的にハイテンションにはなるが、異常な行動や暴力的な行動を するとされる。 ・一度の使用量が増え、それが継続すると、神経過敏であるが外界からの刺激に対する反応は鈍り、錯覚、 妄想、幻覚、幻聴を生じる妄想性精神疾患(薬物性の統合失調症)をもたらす。 ・妄想あるいは幻覚で特徴的なのは、自身の皮膚の下で寄生虫や蟻が這い回るように感じるもので、自身の 皮膚を掻きむしって出血を起こしたりする。 ・習慣性・依存性は強いが、主に精神依存であり、肉体依存は弱いと言われる。 コカインは突然死を招く ・肉体的には、少量使用においても麻酔作用や、中枢興奮による痙攣作用が発現し、呼吸停止や心不全の リスクが極度に高まり、突然死を招くことがある。 (世界的に有名だった歌手がコカインなどによって突然死した事件は記憶に新しい。) 麻薬及び向精神薬取締法第2条により麻薬として指定 ・日本において、コカインは「麻薬及び向精神薬取締法」第2条により麻薬として指定されており、その取り 扱いは法に準ずる。 <関連リンク> ◆覚醒剤 ◆麻薬 ◆MDMA ◆鎮痛薬 |