クレアチン・クレアチンリン酸・クレアチニン


クレアチンとは
アミノ酸の一種である。
・略号は Cr。
・体内での生成は次のようである。
 <腎臓で> L-アルギニン + グリシン → グアニジノ酢酸 + L-オルニチン
  ↓
 <肝臓で> グアニジノ酢酸 + S-アデノシルメチオニン → クレアチン + S-アデニル-L-ホモシステイン
・肝臓で生成されたクレアチンは、血流によって主に筋肉に運ばれ、その90%以上は筋肉に存在し、
 特に心筋に多く、平滑筋に少ない。
・血中のクレアチンは腎臓で濾過され再吸収されるが、多くのクレアチンが尿に出る場合は、再吸収され
 る以上の大量のクレアチンが体内で生じていることを意味する(進行性筋ジストロフィー、多発性筋炎
 など)。


クレアチンリン酸はエネルギー貯蔵物質
・筋肉に運ばれたクレアチンは次のような反応にてクレアチンリン酸(ホスフォクレアチン、PCr)を生じる。
 <筋肉で>  クレアチン + ATP  →  クレアチンリン酸 + ADP
                ↑クレアチンキナーゼ
               (この反応は筋肉組織にてATP濃度が高い休息時などに行われる。)
・すなわち、リン酸化されたクレアチンになる。
・クレアチンリン酸は、ATPとともにエネルギー貯蔵物質として
 働く。
・急激な運動により筋肉におけるATPが不足した場合、
 <筋肉で>  クレアチンリン酸 + ADP → クレアチン + ATP
 の反応が進む。この反応によりATPを生成し、ATPの欠乏を防ぐ。
 この反応は可逆的であり、ATP濃度の調整にも役立っている。

クレアチンリン酸
・しかし、筋肉中に蓄えられたクレアチンリン酸は、激しい運動の場合は10秒前後ぐらいで使い果たさ
 れ、後はグリコーゲンの分解によるグルコースの供給にゆだねることになる。
・ここで生じたクレアチンは次の2パターンをとる。
 クレアチンキナーゼにより再びクレアチンリン酸を生じる。
 非可逆的な非酵素的脱水を経てクレアチニンになる。
  クレアチニンは最終的には腎臓にて尿中に排泄される。


クレアチニンは尿中に排泄される
・クレアチニンはクレアチンの代謝産物
・腎機能の評価(クレアチニンクリアランス)に利用される。
・クレアチニンクリアランスとは腎臓の糸球体がクレアチニンを一分間にどのくらいろ過しているかを
 調べる検査である。
・クレアチンのほとんどは尿細管で再吸収されるが、クレアチニンは再吸収されずに尿中に排泄される。
・基準値は90~110mg/分であり、基準値より低い場合は腎機能障害の疑いあり。


クレアチンキナーゼ(CK)は筋が壊れると血中に流出する
・クレアチンキナーゼはクレアチンとATPからクレアチンリン酸とADPを生成する反応の媒介である。
・クレアチンホスホキナーゼ(CPK)とも呼ばれる。
・骨格筋あるいは心筋が障害を受けた際に血液中に流出する。このために筋肉組織の障害を調べる酵素
 
として、血中クレアチニンキナーゼは臨床上重要である。
  高値…心筋梗塞、心筋炎、筋ジストロフィー、多発性筋炎、甲状腺機能低下症など
  低値…甲状腺機能亢進症、結合織疾患、高ビリルビン血症など
・クレアチンキナーゼには3種類のアイソザイム(酵素としてのはたらきは同じだが、分子構造などが
 異なる酵素群)がある。
  CK1・・・・脳や脊髄に多い(CK-BB)
  CK2・・・・心筋に多い(CK-MB)
  CK3・・・・骨格筋に多い(CK-MM)
・心筋梗塞の発症後、CK値が上昇するには若干のタイムラグがある(数時間後から上昇)。
・血液を採取し、クレアチンリン酸と酵素の入った試薬と比色計を用いて測定する。
・激しい筋肉運動をすると、筋肉からクレアチンキナーゼが血液中に漏れ出て上昇し、24時間前後で
 ピークとなり、3~4日後にもとに戻る。
・クレアチンキナーゼは、筋肉の量と比例するため、男性は女性と比較して20~30%高値になる。
 女性の場合は、朝から夕方にかけて数値が上昇しやすく、妊娠後期と出産前後にやや高めになる。


<関連リンク>
 ATPの産生(エネルギーを得るしくみ)

2011年12月作成  2024年1月最終更新   stnv基礎医学研究室・清水隆文