アミノ酸


アミノ酸とは
・英語ではAmino acid。
・広義では、アミノ基とカルボキシル基の両方の官能基を持つ有機化合物の総称である。
・狭義では、生体のタンパク質の構成要素である「α-アミノ酸」を指す。
・カルボキシル基(-COOH)の隣りの炭素をα炭素といい、ここにアミノ基(-NH2)が付け
 ばα-アミノ酸、その隣りのβ炭素にアミノ基がつけばβ-アミノ酸、さらにその隣りのγ炭素に
 アミノ基がつけばγ-アミノ酸と呼ばれる。
・グリシン以外のアミノ酸では、立体構造的に異なるD体とL体の2種類の光学異性体が存在し
 得る。
・地球上の生命体の材料としては基本的にはL体のアミノ酸が使われているが、部分的にはD体
 のアミノ酸も微量に使われているようである。
・アミノ酸のカルボキシル基が別のアミノ酸のα-アミノ基と脱水縮合して、酸アミド結合(-CO
 -NH-)を形成することで高分子となり、タンパク質を形成する。
・タンパク質のアミノ酸の連結にみられる酸アミド結合を、特にペプチド結合と呼ぶ。
・連結したアミノ酸の個数が少ない場合にはタンパク質ではなくペプチドもしくはポリペプチド
 と呼ばれることが多い。


タンパク質を構成するアミノ酸の分類

 
糖原性アミノ酸
 
糖原性およびケト原性
アミノ酸
ケト原性
アミノ酸
(栄養学的)
必須
アミノ酸 
ヒスチジン(His)
バリン(Val)
メチオニン(Met)
トレオニン(Thr)
トリプトファン(Trp)
フェニルアラニン(Phe)
イソロイシン(Ile) 
ロイシン(Leu)
リシン(Lys) 
(栄養学的)
非必須
アミノ酸 
セリン(Ser)
システイン(Cys)(酸化→シスチン)
グリシン(Gly)
アラニン(Ala)
グルタミン(Gln)
グルタミン酸(Glu)
プロリン(Pro)
アルギニン(Arg)(乳幼児期は必須)
アスパラギン(Asn)
アスパラギン酸(Asp)
チロシン(Tyr) 
 <補足>
 ※シスチンは2分子のシステインが、チオール基 (–SH) の酸化によって生成する S–S 結合を
  介してつながった構造を持つ。
 ※グルタミンは生体内において、グルタミン酸からグルタミンシンセターゼによって、アスパラ
  ギンはアスパラギン酸からアスパラギンシンセターゼによって生合成される。
 ※アミノ酸の安定性について
  ・グルタミンは粉末状では安定であるが、溶液状では-20℃保存で約2年間、4℃ では失活
   が進んで約2週間ほどしか保存できない。
  ・酸による安定性は、濃い酸で加熱するとトリプトファンが最も壊れやすい。次にはシステ
   インやシスチンが壊れやすい。アスパラギンはアスパラギン酸に変化し、グルタミンは
   グルタミン酸に変化する。
  ・システインは酸性条件下では安定であるが、中・アルカリ性条件では微量の重金属イオン
   により容易に空気酸化されてシスチンとなる。

・(栄養学的)必須アミノ酸とは
 ・体内で合成することができないアミノ酸のことをいう。
 ・完全必須アミノ酸とも呼ばれ、食事から摂取しなければならない。
  (覚え方:風呂場椅子一人目)
 ・タンパク質の栄養素としての価値は、それに含まれる必須アミノ酸の構成比率によって優劣
  がつけられる。
 ・その生合成経路は長くて複雑なものが多い。遺伝的な変異によって合成経路の途中の酵素を
  失う確率も高く、あるいは他から賄えるのならば自ら作らない方が省エネルギーでもある。

・(栄養学的)非必須アミノ酸
 体内で合成できるアミノ酸のことをいう。(グルコースを元にしてそこから様々な合成経路を
 経由して合成される。)

糖原性アミノ酸とは
 脱アミノ化を受けた後、炭素骨格部分がクエン酸回路、糖新生系を経由して、グルコース、
 あるいはグリコーゲンに転換されうるアミノ酸のこと。

ケト原性アミノ酸とは
 脱アミノ化を受けた後、炭素骨格部分が脂質代謝経路を経由して、脂肪酸やケトン体に転換
 されうるアミノ酸のこと。
  ケトン体とは、アセト酢酸、3-ヒドロキシ酪酸(β-ヒドロキシ酪酸)、アセトンの総称。
  絶食時や糖尿病の場合に肝臓で多くのケトン体が生成され、緊急時のエネルギー源として
  利用される。


アミノ酸の分類 -その2-
 親水性アミノ酸
   塩基性アミノ酸(アミノ基を複数もつ)……Lys, Arg, His
   酸性アミノ酸(カルボキシル基を複数もつ)……Asp, Glu
   中性アミノ酸……Ser, Thr, Asn, Gln
 疎水性アミノ酸
   脂肪族アミノ酸……Ala, Gly
   分岐鎖アミノ酸(BCAAと呼ばれている)……Val, Leu, Ile,
   芳香族アミノ酸(ベンゼン環を持っている)……Phe, Tyr, Trp
   含硫アミノ酸(構造中に硫黄を含む)……Met, Cys
 特殊アミノ酸
   イミノ酸……プロリン


アミノ酸の体内動態
・食事から摂取したタンパク質は、消化管にてジペプチドやアミノ酸にまで分解され、小腸内面
 の微絨毛において、アミノ酸は、アミノ酸を輸送する担体(Na+依存性と非依存性のものとが
 ある)によって輸送されて吸収される。
・ジペプチドは、H+依存性単体によりH+と共輸送されて吸収される。
・その後は絨毛にある毛細血管に入り、門脈を経由して肝臓に運ばれる。
・アミノ酸類の血中濃度や、その成分バランスは厳密にコントロールされており、食後であって
 も大幅に増加したり、成分バランスが大きく変わったりすることは一般的には無い。
 ちなみに、血中アミノ酸の異常は、そのアミノ酸の種類によって病気との関連性があり、病気
 の診断にも使われている。
・もし、サプリメントなどによって特定のアミノ酸が大量に摂取された場合、肝臓で分解され、
 腎臓を経て排泄されることになる。この作業は肝臓や腎臓に過大な負担をかけることになる。
・逆に、特定のアミノ酸が不足した場合、非必須アミノ酸であれば体内で合成される。
 必須アミノ酸であれば、筋肉などにあるタンパク質を分解して足りないアミノ酸を補充すること
 になる。


<関連リンク>
 タンパク質  糖質(炭水化物)  必須脂肪酸  脂溶性ビタミン
 水溶性ビタミン  ミネラルの話

2013年4月作成  2024年1月最終更新   stnv基礎医学研究室・清水隆文