タンパク質(主に栄養学的視点から)


タンパク質とは
・タンパク質(蛋白質、protein)とは、アミノ酸が多数連結してでき
 た高分子化合物のことである。
・学術用語としては、カタカナ表記の「タンパク質」を用いる。
・連結しているアミノ酸の数が少ない場合はペプチドと呼ばれるが、
 その個数に対する定義は無い。(おおよそ40個前後)。
・生体においてタンパク質の構成要素として使われるアミノ酸の種類
 は、基本的には L-α-アミノ酸である。
 (カルボキシル基(-COOH)の隣りの炭素をα炭素といい、ここ
 にアミノ基(-NH2)がつけばα-アミノ酸、その隣りのβ炭素に
 アミノ基がつけばβ-アミノ酸、さらにその隣りのγ炭素にアミノ基
 がつけばγ-アミノ酸と呼ばれる。詳細はアミノ酸のページを参照。)

アルブミンの三次構造モデル

アミノ酸とアミノ酸はペプチド結合
・右図のように、アミノ酸同士が結合する結合様式を
 ペプチド結合という。
・もう少し詳しく言えば、あるアミノ酸のカルボキシ
 基が、別のアミノ酸のα-アミノ基と脱水縮合して
 できた酸アミド結合 (-CO-NH-)をペプチド
 結合という。
 (アミノ基を複数持つアミノ酸の場合、α炭素に
 付くアミノ基が結合に使われる。)


ペプチド結合

タンパク質は、遺伝子のコードに基づいて、リボソームにて合成される
 タンパク質でなければ、生体中の複雑な精密部品は作れない
・タンパク質は生物に固有の物質であり、その合成は生きた細胞中のリボソームで行われる。
・タンパク質は、体の主要な構成成分である(人体の固形成分の50%以上)。
・たいへん高度な機能を持つ生体中の部品は、タンパク質でできている。
 <例>  構造タンパク(コラーゲン、ケラチンなど)
       膜タンパク(受容体、イオンチャネルなど)
       収縮タンパク(筋肉のミオシン、アクチンなど)
       酵素(消化、代謝などに関わる)
       輸送タンパク(アルブミン、ヘモグロビンなど)
       防衛タンパク(免疫抗体など)
       情報伝達や機能の発現に関わるタンパク(インスリン、成長ホルモン、ACTHなどのホルモン
        や、ホルモンとは呼ばれないが、ある種機能の発現を直接に制御するタンパク質など)
       その他、他の生物においては蛍光を発するタンパク質(ある種のクラゲの緑色蛍光タンパク
       質(Green Fluorescent Protein; GFP)や、ある種のイソギンチャクの赤色蛍光タンパク
       質(Red Fluorescence Protein; RFP)など)も存在する。
   これらのように、生命に欠かせない重要な機能をもつ部品はタンパク質でできている。

タンパク質を食べる目的は必須アミノ酸の摂取
・タンパク質を食べる必要性は、それにしか含まれていない必須アミノ酸を摂取することであり、それ以外
 のアミノ酸は体内でから合成される(非必須アミノ酸)。
・タンパク質の栄養素としての価値は、それに含まれる必須アミノ酸の構成比率によって決まってくる。
 この比率は、プロテインスコア、ケミカルスコア、アミノ酸スコアなどと呼ばれて指標にされている。
・タンパク質を多く食べない民俗は、彼らの体内の腸内細菌によって必須アミノ酸がまかなわれている。
 (例:パプアニューギニア人は、イモ類が食材の中心であり肉などを食べないが、腸内にアミノ酸を作る
  細菌が住んでおり、必須アミノ酸の不足分が補填されている。草食動物も同じ理屈により必須アミノ酸
  を得ている。ちなみに、日本人は古代より動物の肉や魚介類を食べてきた。)

体重70kg ならば最低でも 50g/日
・タンパク質の必要量は、日本人の成人で、0.72 g/kg体重/日 であるとされている。
 体重が70kg の成人ならば、タンパク質の必要量は50g/日となる。
・平成19年度の国民栄養調査では20歳以上の日本人が1日に食べているタンパク質の平均値は70.8g
 だそうであり、平均値としては足りていることになる。

タンパク質の消化と吸収
・食物中のタンパク質は分子が大きいためにそのままでは吸収できない。したがって、ペプチド(ジペプチド、
 トリペプチドなど)、あるいはアミノ酸にまで分解されてから、小腸から吸収される。
<胃の中で・・・>
  タンパク質  →  プロテオース(タンパク質分解中間体の組成のはっきりしない混合物)あるいは
         ↑   ペプトン(タンパク質の部分的水解により生じる中間体ポリペプチド)
         ↑
        ペプシン(消化酵素)
   ◆ペプシンについて
     ・ペプシノーゲンとして胃の粘膜で作られる。
     ・これが塩酸を含む胃液中に分泌されるとpHの低下によって立体構造が変化し、ペプシンとなる。
     ・酸性アミノ酸残基-芳香族アミノ酸残基と続く配列のカルボキシル基側(C末端側)のペプチド
      結合を加水分解する。
     ・326個のアミノ酸から成る。
     ・pH2.0付近が最適条件であり、中性・アルカリ性では不可逆的に立体構造が変性し活性を失う。

<小腸内で・・・(膵液にて・・・)>
  タンパク質  →  プロテオース、ペプトン
         ↑
       トリプシン、キモトリプシン(消化酵素)
    ◆トリプシンについて
     ・膵液に含まれる消化酵素の一種。
     ・塩基性アミノ酸残基のC末端側のペプチド結合を加水分解する。
     ・201 個のアミノ酸から成る。
     ・最適pHは8~9
    ◆キモトリプシンについて
     ・膵液に含まれる消化酵素の一種。
     ・芳香族アミノ酸残基のカルボキシル基側のペプチド結合を加水分解する。
     ・最適pHは8~9

  タンパク質  →  アミノ酸(C末端側からアミノ酸遊離)
         ↑
        カルボキシペプチダーゼ(消化酵素)
    ◆カルボキシペプチダーゼについて
     ・膵液に含まれる消化酵素の一種。
     ・ポリペプチドをC末端側から1残基ずつ加水分解し、アミノ酸を遊離する。

<小腸上皮細胞(刷子縁、細胞質)で・・・>
   ポリペプチド  →  アミノ酸(N末端側からアミノ酸遊離)
           ↑
         アミノペプチダーゼ(消化酵素)
    ◆アミノペプチダーゼについて
     ・ポリペプチドをN末端側から1残基ずつ加水分解し、アミノ酸を遊離する。


<関連リンク>
アミノ酸  糖質  必須脂肪酸  脂溶性ビタミン  水溶性ビタミン  ミネラルの話
痩せる方法

2012年3月作成  2024年1月最終更新   stnv基礎医学研究室・清水隆文