糖質


糖とは
・糖とは、多価アルコール(分子中に水酸基を2個以上もつアルコール)の最初の酸化生成物であり、アル
 デヒド基 (-CHO) またはケトン基 (>C=O) を1つ持つ有機化合物を指す。
 アルデヒド基を持つ糖はアルドース、ケトン基を持つ糖はケトースとして分類される。
<主な単糖>
  三単糖
(トリオース)
四単糖
(テトロース)
五単糖
(ペントース)
六単糖
(ヘキソース)
七単糖
(ヘプトース)
アルドース
 
グリセルアルデヒド
 
エリトロース
トレオース
リボース
キシロース 他
グルコース
ガラクトース 他

 
ケトース
 
ジヒドロキシアセトン
 
エリトルロース
 
リブロース
キシルロース
フルクトース
ソルボース 他
セドヘプツロース
コリオース
<主な単糖の分子構造>
グリセル
アルデヒド
リボース フルクトース グルコース
・フルクトースとグルコースは共に六単糖であるが、フルクトースは五員環の形態をとりグルコースは六員環
 の形態をとる。糖で六員環のものはピラノース、五員環のものはフラノースと呼ばれるため、フルクトース
 はフルクトフラノース、グルコースはグルコピラノースと呼ばれる。

糖質とは
・糖質とは、単糖あるいは単糖を構成成分とする有機化合物をいう。
・栄養学では、狭義では消化性糖質を指し、炭水化物から食物繊維を除いたものを意味する。
 (食物繊維は人間が消化することができないセルロースなどを指し、消化できる他の生物にとっては糖質で
 ある。従って、広義では糖質=炭水化物である。)
・炭水化物とは、Cm(H2O)n と書くことができるものを指すが、糖質であるデオキシリボース(C5H10O4)は
 例外となり、一方では糖質ではないホルムアルデヒド(CH2O)がこの定義に当てはまってしまう。


糖質の分類
・糖質は次のように分類できる。
 ①単糖
 ②二糖・・・・単糖2分子が結合したもの
 ③三糖・・・・単糖3分子が結合したもの
 ④オリゴ糖・・・・単糖2分子~20分子程度が結合したもの
 ⑤多糖・・・・さらに多くの単糖が結合したもの


地球上に最も多い炭水化物(糖質)は?
・地球上に最も多く存在する炭水化物はセルロースである。
・これは植物細胞の細胞壁および繊維の主成分として使われており、天然の植物質の1/3を占めている。
 自然状態においてはヘミセルロースやリグニンと結合して存在しているが、綿はそのほとんどがセルロース
 である。
・セルロースの部分は硬く、また、ヒトはこれを分解するための酵素であるセルラーゼをもたないために分解・
 利用できないが、食物繊維としての効用はある。


デンプンの利用
・地球上に次に多い炭水化物はデンプンであり、セルロースの次に多く存在する。
・ヒトはデンプンを分解する酵素である、アミラーゼやαグルコシダーゼ(マルターゼ)をもつため、デンプンを
 グルコースにまで分解して利用することができる。

 デンプン   →     デキストリン      →    グルコース(αグルコース)
        ↑      マルトース       ↑
    唾液αアミラーゼ(プチアリン)    αグルコシダーゼ<膵液内、小腸上皮細胞>
    膵αアミラーゼ(アミロプシン)

・デンプンは、アミラーゼによって、デキストリンあるいはマルトースにまで分解され、さらにαグルコシダー
 ゼによってグルコースにまで分解される。デキストリンとは数個のα-グルコースが重合した物質の総称で、
 デンプンとマルトースの中間にあたる。
・マルトースは麦芽糖とも呼ばれ、α-グルコース2分子が結合した二糖類である。水飴の主成分である。
 ショ糖の約1/3の甘味をもつ。名称の由来は、モルト(Malt:オオムギを発芽させ、湯を加えることによって
 デンプンが糖化されたもの)に多く含まれることによる。


エネルギー源であるグルコース
・デンプンが分解されて生じたグルコースは、小腸上皮細胞の刷子縁において、グルコースを輸送する担体
 (キャリアータンパク質、sodium-dependent glucose transporter (SGLT))によって、Na+と共輸送される。
 (これは二次性能動輸送といわれ、Na+が濃度勾配に従って細胞内に移動する力が利用され、腸管内Na+濃度
 が高ければグルコース吸収は促進される。)
・細胞内に入ったグルコースは、直ちにリン酸化されてグルコース-6-リン酸(G6P)になる。これによって
 細胞膜の通過がさらに困難となり、細胞内にグルコースが留まり、順次に消費されていくことになる。
・G6Pが過剰の場合には動物デンプン(グリコーゲン)として、さらには脂質に変換されて、筋肉や肝臓に貯蔵
 される。
・普通の食事を摂ったあと約3時間の吸収期には、吸収されたばかりの、しかもグルコースが主に使われる。
 それ以降の空腹期においては、まず肝臓や筋肉に貯蔵されたグリコーゲンが分解されてグルコースが供給さ
 れる。
・肝臓に蓄えられたグリコーゲンはたかだか400kcal程度、筋肉中のそれも同程度だといわれているため、空腹
 期の次の段階では、グルコースの使用を脳などの中枢神経系に限定し、他の組織では貯蔵脂肪が分解され
 て用いられる。
・貯蔵脂肪のトリグリセリドから遊離したグリセロールは、肝臓においてグルコースに変換されて用いられる
 (糖新生)。
・脳はエネルギー源として脂肪酸を使うことができない(脂肪酸は脳関門を通過できない)ため、グリセロール
 から変換されるグルコースによっても不足する場合、筋肉などのタンパク質が分解されて、遊離した糖原性
 アミノ酸からグルコースが生成され、用いられるようになる。
 (脳において、更なるグルコース不足の時には、アセチルCoAから変換されたケトン体(主に3-ヒドロキシ
 酪酸)がエネルギー源として用いられる。)
・グルコース1分子から38分子のATPを作ることができる(酸素呼吸の場合)。
・エネルギー源としての糖や脂肪のメリットは、C、H、Oの3元素からからできているため、代謝物は水と
 二酸化炭素であって、クリーンなエネルギー源である。一方、タンパク質はこの3元素の他に窒素(N)や
 硫黄(S)が入っているため、代謝物の処理が面倒となる。


ショ糖(スクロース)の利用
・植物にはショ糖を多く含むものがある。ショ糖とは単糖であるグルコースとフルクトースが結合した二糖類
 である。
・ヒトはショ糖を分解する酵素であるスクラーゼをもつため、ショ糖をグルコースとフルクトースに分解して
 利用することができる。
・フルクトースは、エネルギー源になったり、ブドウ糖に変換されたり、トリグリセリド(中性脂肪)の合成に
 利用される。

 スクロース(蔗糖、ショ糖)  →   グルコース + フルクトース
               ↑
              スクラーゼ(インベルターゼ)<小腸上皮細胞>


乳糖(ラクトース)の利用
・母乳や牛乳などの哺乳類の乳汁には乳糖が含まれてる。乳糖は単糖であるグルコースとガラクトースが結合
 した二糖類である。
・ヒトは乳糖を分解する酵素であるラクターゼをもつため、乳糖をグルコースとガラクトースに分解して利用
 することができる。
・ガラクトースはグルコースと同じように、体内でG6Pに変換されて利用される。
・ガラクトースの「Gala」はギリシャ語で乳を意味する。脳糖ともいわれる。
・人体におけるラクトースの生合成は、乳腺においてグルコースがガラクトースに変換されることによる。

 ラクトース(乳糖、哺乳類の乳汁に含有)  →   グルコース + ガラクトース
                      ↑
                    ラクターゼ<小腸上皮細胞>


糖質の摂り過ぎに注意
・過剰の糖は生体内の様々な分子と糖化反応を起こし、老化促進や、様々な病気の原因を作ることが近年になっ
 て分かってきた。
・フルクトースとガラクトースは、グルコースの10倍ほど糖化反応に使われやすいと言われているため、特に
 ショ糖(=砂糖)の摂り過ぎは要注意である。


<関連リンク>
タンパク質  アミノ酸  必須脂肪酸  中性脂肪
脂溶性ビタミン  水溶性ビタミン  ミネラルの話

2011年10月作成  2024年1月最終更新   stnv基礎医学研究室・清水隆文