消毒とは
・消毒とは、体表面や環境中に存在する病原性微生物を、化学的または理学的手段によって直接に死滅、
あるいは感染力を失わせることであり、非病原性微生物の残存は容認している。
・全ての微生物を死滅させるときには滅菌という言葉を用いる。
・従って、消毒薬とは、化学的手段によって消毒する薬物の総称である。
主な消毒薬
毒
性 |
分類 |
一般名 |
特徴
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構造 |
高
水
準 |
アルデヒド系 |
グルタルアルデヒド
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無色または淡黄色の液体で、特異な刺激臭がある。水、アルコール、アセトンに易溶。2~20%溶液がグルタラールやステリハイド等の名称で販売されている。最も強い消毒薬である。芽胞を含む全ての微生物に有効。主に医療機器の滅菌、殺菌、消毒に用いられる。人体に使用してはならない。作用機序は菌体タンパク質中のアミノ基の部分がアルキル化されることによる。外見上はタンパク質凝固である。 |
中
水
準 |
塩素系 |
次亜塩素酸ナトリウム
(次亜塩素酸ソーダ)
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不安定な物質であるため、通常は水溶液として貯蔵、使用される。特異な臭気(いわゆる漂白剤の臭い)を有する。強力な消毒薬であり、漂白作用、酸化作用もある。医療器具やリネン類の消毒、環境浄化や排泄物による汚染の浄化などによく使われる。家庭用の塩素系漂白剤にも配合される。金属腐食性がある。強アルカリで皮膚刺激があり、塩素ガスが発生するため、歯科用などでの一部利用以外は人体にはあまり用いない。希釈された水溶液はアンチホルミンとも呼ばれる。作用機序は、細菌の細胞膜に浸透してタンパク質の-SH基を分解することによる。塩素ガスが発生するため塩酸と混ぜないこと。<NaClO
+ 2HCl → NaCl + H2O + Cl2>
セルロースを主体とする布地に次亜塩素酸ナトリウムをしみこませて40~50 ℃
にて乾燥させると爆発するため、要注意。 |
ヨウ素系 |
ポビドンヨード
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暗赤褐色の粉末であるが、これを10%程度の水溶液にして用いられる。水溶液は黒褐色であり、ヨウ素の特異な匂いと味がする。手術前の皮膚、術野、創傷面、粘膜など、広く人体の消毒に使われる。金属には腐食作用が強いため使われない。ヨウ素による過敏症に注意。うがい薬では「イソジン」が有名。薬効は遊離するヨウ素によるもの。ヨウ素等のハロゲンは細菌の蛋白質合成を阻害する事によって殺菌力を発揮する。塗布後30~60秒の経過で最も殺菌力が強くなるが、その後の殺菌力の持続性も高い。殺菌力は中性~アルカリ性で強い。肝炎ウイルスには効果は期待できなく、一部の芽胞には効果が得られないことがある。 |
アルコール類 |
エタノール
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消毒用エタノールは、15℃においてエタノールを76.9~81.4v/v%含む。即効性に優れ、手指、皮膚の消毒以外にも広範囲に医療用消毒薬として繁用される。ただし、創傷部位や粘膜には刺激があるので用いない。薬効はアルコールが高濃度であるほど、タンパク質中の構造水などを脱水して変性させる。アルコールが中濃度の場合、アルコールが菌体内に浸透して内圧を高めて溶菌させる。両方の作用を共に出すためには、アルコール濃度は70~80vol%が適当であるとされる。破傷風菌などの芽胞や肝炎ウイルスなどには効果が無い。可燃性のため火気に注意。
イソプロパノールも同じような効果を発揮するが、利点は安価であること。弱点は脂質の無い小型のウイルスに対する効果は期待できないことと、ヒトに対する毒性や脱脂作用が強い。 |
イソプロパノール
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フェノール系 |
クレゾール石けん液 |
排泄物の消毒によく使われたが、腐食性、皮膚刺激性、刺激臭が強く、医療現場での使用は減少した。 |
低
水
準 |
逆性石けん (陽イオン界面活性剤) |
塩化ベンザルコニウム
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陽イオン界面活性剤の一種。水溶液は逆性石鹸液とも呼ばれ、オスバン、ヂアミトールなどの商品名で市販されている。これを適宜薄めて、手指、粘膜、機器、机や床などの洗浄・消毒に使われる。金属器具の長時間浸漬時には防錆剤を添加。細菌細胞膜やタンパク質を変性させることによって、殺菌作用を発揮する。一般的なグラム陽性・陰性細菌には効果があるが、結核菌、細菌の芽胞、ほとんどのウイルスには無効である。経口毒性は強い。 |
塩化ベンゼトニウム
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陽イオン界面活性剤の一種。上記の塩化ベンザルコニウムと同様の殺菌作用を有する。水溶液は逆性石鹸液としてハイアミン、エンゼトニンなどの商品名で市販されており、手指、粘膜、機器の消毒などに使われる。マキロンの有効成分の一つである。 |
ビグアナイド系 |
クロルヘキシジン
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グルコン酸塩、あるいは塩酸塩、酢酸塩として用いられる。グルコン酸塩の水溶液はヒビテンやマスキン液などの商品名で市販されている。手洗いなどに繁用され、創傷部位や手術野の消毒にも利用されることがある。金属器具の長時間浸漬時には防錆剤を添加。低毒性であるが、粘膜には使用しない。アレルギー性接触皮膚炎に注意。作用機序は細菌細胞膜を変性させることであるが、高濃度使用では菌体内のタンパク質を変性させる作用も現れる。一般的なグラム陽性・陰性細菌には効果があるが、結核菌、細菌の芽胞、ほとんどのウイルスには無効であって、殺菌力は上記の陽イオン界面活性剤と同程度である。 |
あまり用いられなくなったもの |
・ヨードチンキ・・・ヨウ素のエタノール溶液。皮膚刺激が強い。
・ルゴール液・・・ヨウ素のグリセリン溶液。甘いが皮膚刺激が強い。
・アクリノール・・・病原菌、ウイルスに対する効果が弱い。
・マーキュロクロム・・・水銀に対する規制による。
・オキシドール・・・殺菌作用が弱い。 |
すり傷の消毒について
消毒する必要は無い。消毒によって傷口付近の細胞もダメージを受け、治りが遅くなる。
擦過傷(さっかしょう:いわゆる擦り傷)の一般的な手当の仕方
① 創面を水道水などで清浄化する。
② 創保護材などによって創面を保護し、皮膚の再生を待つ。
湿潤性の創保護材を使う。
ガーゼは使わない方が良い。水分や大切な浸出物を吸い取ってしまうため、治りが遅くなる。
傷口を乾燥させてはいけない。乾燥した部分は壊死し、治りが遅くなる。
ちなみに、痂皮(かひ:かさぶたのこと)は創傷治癒が止まって正しく治らないときに生じるものである。
<関連リンク>
◆寄生虫疾患・原虫疾患 ◆真菌症 ◆細菌感染症
◆マイコプラズマ・リケッチア・クラミジア感染症 ◆ウイルス感染症