視床下部(Hypothalamus)には神経分泌細胞が存在する
・生体を維持するためには、全身の様々な箇所にそれぞれ適切な指示を送ってコントロールする ことが必要であるが、そのために動物は、電気的な信号を用いる神経系と、物質を流して知ら せる内分泌系の2つの系統を使って生体を維持している。 ・視床下部にある神経分泌細胞群は、神経性のみならず内分泌性の情報も受容し、中枢神経系と 下垂体などの内分泌系とを機能的にも形態的にも結び付けている。
視床下部には何種類もの特殊な細胞群が集落を作っている
担っているわけではなく、あくまで他の部分、たとえば辺縁系などとの共同作業によってその目的 を達成している。 視床下部ホルモンについて ・上述した中で、①の視床下部ホルモン分泌細胞(神経分泌細胞)が分泌するホルモンについて下に まとめる。 ・神経分泌細胞で合成されるホルモンの多くはペプチドであり、神経細胞の軸索末端部から血管内に 直接に放出される。 ・オキシトシンとバゾプレッシンは、下垂体後葉を通じて分泌されるため、下垂体後葉ホルモンとし て扱われる。従って、下垂体ホルモンのページに記した。 【視床下部ホルモンのまとめ(5種類)】 <略して呼ばれることが多いため、その英語の意味の解説も付記しておいた。> CRH corticotropin-releasing hormone 副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン 略称はCRF(-factor)とされることもある。 corticotropin:(=adrenocorticotropic hormone) release:「放出する」 releasing hormone:「放出ホルモン」 ・視床下部から分泌されるペプチドホルモンの一つ。(アミノ酸41残基) ・視床下部の底部にある正中隆起の血管網に放出され、下垂体門脈を通って下垂体前葉に到達し、 副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の分泌を促進させる。 ・糖質コルチコイドにより分泌が抑制される。 TRH thyrotropin-releasing hormone 甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン thyrotropin:(=thyroid stimulating hormone) releasing hormone:「放出ホルモン」(上記参照) ・視床下部から分泌されるペプチドホルモンの一つ。 ・ピログルタミン酸・ヒスチジン・プロリンの3残基からなりC末端がアミド化されたペプチド (Glp-His-Pro-NH2) である。 ・下垂体前葉からの甲状腺刺激ホルモン(TSH)やプロラクチン(PRL)の分泌を促進させる。 ・甲状腺ホルモンにより分泌が抑制される。 GnRH gonadotropin releasing hormone 性腺刺激ホルモン放出ホルモン gonado-、gonad-:「性腺」の意の連結形 tropin:=stimulating hormone releasing hormone:「放出ホルモン」(上記参照) ・視床下部から分泌されるペプチドホルモンの一つ。(アミノ酸10残基) ・下垂体前葉からの卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体形成ホルモン(LH)の分泌を促進させる。 ・GnRHは男性では一定の頻度で分泌されるのに対し、女性では月経周期によってその頻度が異なり、 排卵前に急激に高まる。 GHRH (GHR) growth hormone-releasing hormone 成長ホルモン放出ホルモン growth hormone:「成長ホルモン」 releasing hormone:「放出ホルモン」 ・視床下部から分泌されるペプチドホルモン。(アミノ酸44残基) ・成長ホルモン放出因子(GRF, GHRF) やソマトクリニンとも呼ばれる。 somato-、somat-:「体」、「体の」の意の連結形 crinin:「クリニン」(腺分泌促進物の古語) ・下垂体前葉からの成長ホルモンの分泌を促進させる。 ・ソマトスタチンによってその作用が阻害される。 ソマトスタチン somatostatin (成長ホルモン分泌抑制ホルモン) somato-、somat-:(上記参照) statins:「スタチン(= releasing factors)」 ・視床下部、膵臓のランゲルハンス島、消化管の内分泌細胞などから分泌されるホルモン。 ・下垂体からの成長ホルモンの分泌抑制、ランゲルハンス島からのインスリンおよびグルカゴンの 産生抑制・分泌抑制、消化管からの栄養の吸収抑制、セクレチン、ガストリン、胃液、胃酸の分泌 抑制など。 ・視床下部では、GHRHとソマトスタチンは、成長ホルモンの脈動の分泌によって交互に放出される。 <関連リンク> ◆下垂体ホルモン ◆甲状腺ホルモン ◆副腎皮質ホルモン ◆性ホルモン ◆ストレスとは |