単球・マクロファージ

単球(Monocyte)とは
・単核白血球とも呼ばれる。
・末梢血において、全白血球のうち3~6%を占める。
・直径は20~30μmで、白血球の中では一番大きい。
・核はおおよそ腎形で、部分的に陥凹したり切れ込みが
 入ったような形状を呈していることが多い。
・細胞質には、アズールBなどの青色の塩基性色素に染
 まるアズール顆粒をもつ(リソソームとも呼ばれる)。

塩基性色素に染まる顆粒は酸性
・塩基性色素に染まる細胞内顆粒、すなわちリソソーム
 (lysosome ; ライソソーム)は、生体膜に包まれた
 細胞小器官の一つである。
・リソソームの膜に組み込まれたプロトンポンプは、
 リソソームの内部を pH5 程度の酸性に保っている。

中央が単球、周辺のものは赤血球
・そのリソソームの内部には、酸性条件下で働く加水分解酵素群(リゾチーム、ペルオキシダーゼ、
 ホスファターゼ、ヌクレアーゼ、エステラーゼ、リパーゼ、コラゲナーゼなど)が含まれている。

異物を飲み込み、リソソームを結合して、内部の酵素で分解する
・単球は、末梢血中で異物と出会った場合、その異物を飲み込み(貪食し)、リソソームと融合して
 酵素を作用させ、異物を分解する。
・リソソームの語源は、「lysis:分解」+「some:~体」である。
・分解物のうち有用なものは細胞質に吸収され、不用なものはエキソサイトーシスによって細胞外に
 廃棄されるか、細胞内に留まる。
・単細胞生物においては、リソソームは消化器官として機能しており、単球においても同様な働きを
 している。

単球は造血幹細胞から生まれてくる
・単球は骨髄で生まれる。
・骨髄中の造血幹細胞から
 前駆細胞(顆粒球・マクロ
 ファージ系前駆細胞 →
 マクロファージ系前駆細胞)
 → 単芽球 → 単球へと分化
 する。

単球は、血管から外
 に出ると、マクロ
 ファージになる

・単球として血液中にいる
 期間はおよそ数時間から
 数日であるとされる。
・その後は血管外に出て、
 マクロファージ(macro
 -phage、MΦ)と呼ばれ
 る細胞に分化する。
・macro-:「大きい」、「長い」の意の連結形。
 -phage:「食べるもの」、「細胞を破壊する細胞」の意の名詞語尾。
・大食細胞とも呼ばれる。
・単球およびマクロファージはともに単核食細胞系(mononuclear phagocyte system(MPS))に
 所属する。


造血幹細胞 → 顆粒球・マクロファージ系前駆細胞(CFU-GM)
  → マクロファージ系前駆細胞(CFU-M) → 単球 → マクロファージ

・血管壁を通り抜けた単球は、血管外の組織や体腔に遊走し、そこで組織固有のマクロファージに分化
 する。
  
Encyclopædia Britannica, Inc.より引用

・組織に入ると、マクロファージは細胞内にリソソームなどの細胞内顆粒を増やし、より多くの消化酵素
 を蓄積する。
・マクロファージは、組織内では分裂によっても増殖することができ、寿命は平均的には数ヶ月、場合に
 よっては数年であるとされる。
・炎症時に血管から滲出したばかりのマクロファージは「滲出マクロファージ」、組織中にすでに在住し
 ているマクロファージは「組織球」と呼ばれて区別されることもある。組織球は特定の器官内に留まり、
 移動しない。
・マクロファージはリンパ小節や脾臓の赤脾髄などのリンパ組織に多く存在するが、その他の器官に移動
 した場合、例えば肺に移動して分化したマクロファージは肺胞マクロファージ(alveolar macrophage)、
 腹腔内のものは腹腔マクロファージ(peritoneal macrophage)、肝臓の洞様血管(類洞)の壁に定着し
 たものはクッパー細胞(kupffer cell)と呼ばれる。
・また、破骨細胞、脳に存在するミクログリア細胞、鼻腔・肺・胃・腸管などに存在する樹状細胞、表皮
 のランゲルハンス細胞もマクロファージの一種である。

マクロファージは強い貪食能を持つ
・炎症の初期にはどちらかというと好中球の活躍が大きいが、やがて多くのマクロファージが集まり、
 抗体-抗原複合体、死んだ細胞や細菌を貪食して処理する。
・マクロファージが貪食した異物は小胞(食胞、Phagosome)の形で取り込まれ、細胞内のリソソームと
 融合することによって、リソソーム内の様々な加水分解酵素によって分解される。(上述の単球と同様
 である。)

食べた物が何であったかを知らせる(抗原提示、種々物質の放出)
・マクロファージは、貪食して分解した断片の一部を細胞表面に提示する。
・これは「抗原提示」と呼ばれ、ヘルパーTリンパ球やBリンパ球が認識することによって免疫反応が開始
 される。
・マクロファージは炎症の際などに、Tリンパ球の生産するサイトカインを受け取ることにより活性化する。
・活性化されると、炎症にまつわる様々な物質を放出する。(各種サイトカイン、C1~C5までの補体タン
 パク、プロテアーゼ 、プラスミノーゲン活性化因子、血液凝固因子、プロペリジン、活性酸素、過酸化
 水素など)。
・上述のランゲルハンス細胞や樹状細胞は貪食能が弱く、抗原提示が主な役割である。


巨細胞はマクロファージの融合体
・貪食すべき異物があまりにも大きい場合や処理しきれない場合には、マクロファージ同士が融合して
 巨細胞になる。
・巨細胞は異物巨細胞、ラングハンス巨細胞(Langhans giant cell)、トートン型巨細胞(Touton
  giant cell) などに分類されている。
・異物巨細胞は、より大きな異物を貪食
 するためにマクロファージが癒合した
 ものであり、多数の核が散在して観察
 される。
・ラングハンス巨細胞は異物を消化でき
 ず細胞内に溜め込んでいるものであり、
 多数の核が辺縁に追いやられている状
 態が観察される。主に肉芽腫性疾患に
 認められる。
・トートン型巨細胞は、脂肪を貪食した
 場合の状態であり、多数の核が比較的
 中央部分にリング状に並んでいる状態
 が観察される。

ラングハンス巨細胞(Langhans giant cell)

<関連リンク>
血球の起源 赤血球 リンパ球 顆粒球(好酸球、好中球、好塩基球) 血小板

2012年10月作成  2024年1月最終更新   stnv基礎医学研究室・清水隆文