血液中(末梢血中)のリンパ球の割合も少ない。
末梢血におけるリンパ球と顆粒球の比率は変化する ・自分の体を攻撃してくる癌細胞、細菌などの微生物、ウイルス、あるいはアレルゲンなど、いわゆる 異物の種類や量に応じて、体はそれらを最も防御しやすいようにリンパ球と顆粒球(好中球、好酸球、 好塩基球)の比率を変化させる。 リンパ球は、リンパ器官に多量に存在する ・リンパ器官とは、リンパ球の増殖、分化、および機能発現の場となる器官を言う。 ・このうち、リンパ球の増殖および分化の場であって抗体産生などの機能発現を行わないものは一次リン パ器官と呼ばれ、骨髄や胸腺が相当する。 (その他、鳥類には、Bリンパ球の語源でもあるファブリキウス嚢:bursa of Fabricius が存在する) ・一方、抗原依存性の増殖と抗体産生および免疫反応を行う器官は二次(末梢性)リンパ器官と呼ばれ、 リンパ節、脾臓、扁桃(舌扁桃、口蓋扁桃、耳管扁桃、咽頭扁桃)、パイエル板(腸管リンパ節)、 虫垂などが相当する。 リンパ球の概略 ・リンパ球(Lymphocyte)は、比較的小さく、直径8~12μmの球形の細胞である。 ・大型の丸い核をもち、それに対して細胞質は少ない。 ・抗体(免疫グロブリン;後述する)を産生したり、自ら様々な化学物質を出すことによって標的細胞や 異物を攻撃をするが、特にウイルスなどの小さな異物や腫瘍細胞に対してはこれらのリンパ球が中心と なって対応する。 ・種類としては、Bリンパ球(B細胞)、Tリンパ球(T細胞)、NK細胞などに分けられるが、その外部 形状から区別することは困難である。 ・末梢血中のリンパ球におけるそれぞれの存在割合は、Bリンパ球20~30%、Tリンパ球が70~80%を 占める。 ---<Bリンパ球の各論>-------------------------- 骨髄で未熟Bリンパ球、脾臓で成熟Bリンパ球になる ・Bリンパ球は、骨髄中において、造血幹細胞 → リンパ系幹細胞 → プロBリンパ球 → 大型プレBリン パ球 → 小型プレBリンパ球 → 未熟Bリンパ球 へと分化する。 ・未熟Bリンパ球は血流に乗って脾臓に到達し、そこで成熟Bリンパ球になる。 ・細胞表面には、抗原を認識するためのレセプターとして細胞膜結合形のIgMやIgDを装備する。 ・このようにしてできあがった成熟Bリンパ球は、血流に乗って二次リンパ器官に到達し、そこで抗原に 対する反応に備える。 ・一部のBリンパ球は、消化管上皮、粘膜組織など、外来抗原との接触頻度の高い組織にも定着する。 Bリンパ球は形質細胞に変化すると、抗体を産生する
抗体は血清中にあるから液性免疫 ・形質細胞は抗体(免疫グロブリン)を産生するだけの専門性の高い、極度に分化した細胞であり、核 は少し小さく歪な形になり、そのぶん細胞質が少し多く見える。 ・形質細胞は細胞ごとに産生する抗体の種類が決まっており、単一の抗原特異性を示す。 ・形質細胞が放出した抗体は血清中にあり、血液や組織液によって運ばれるため、抗体による免疫メカ ニズムは液性免疫とも呼ばれる。 ・抗体とは、特定の分子にとりつく(抗原抗体反応)機能を持った分子であり、その働きによって病原体 を含む抗原抗体成分は凝集する。また、血液中に存在する補体(免疫反応を媒介する血中タンパク質 の一群で、多くの種類がある)を結合させることによって、オプソニン化(食細胞に貪食されやすく なる)、細菌の殺傷(細菌外膜に穴を開ける)、マクロファージ等の化学遊走の誘起などを起こす。 ・いったん抗体が産生されると、その情報はメモリーBリンパ球に記憶され、次に同じ抗原が侵入すると、 すみやかに、それに対応した抗体の産生が開始される。 抗体には、次のような種類がある
IgM ・ヒト免疫グロブリンの約10%を占める。 ・通常は血液中のみに存在し、感染微生物に対して最初に産生される。 ・5量体で存在することが多く、補体を結合させる活性も高い。 ・赤血球のABO式血液型におけるA抗原やB抗原に対する主な抗体である。 ・20週目ほどの胎児が最初に発現する抗体でもある。 IgD ・ヒト免疫グロブリンの1%以下である。 ・Bリンパ球表面に存在し、抗原認識、そして抗体産生の誘導に関与する。 ・形質細胞になると失われる。 IgE ・ヒト免疫グロブリンの0.001%以下と極微量しか存在しないが、アレルギー患者では増加する。 ・寄生虫に対する免疫反応や、アレルギー、気管支喘息に大きく関与している。 ・マスト細胞(肥満細胞)や好塩基球の表面受容体に結合し、そこに更に抗原タンパク質が結合すると、 細胞内顆粒中に貯蔵されているヒスタミンなど放出する。 ---<Tリンパ球の各論>-------------------------- 骨髄でTリンパ球前駆細胞(T前駆細胞)、胸腺でTリンパ球になる
の教育」とよばれる。 ・この教育は、個体が成熟するまでに完了する。 ・ヒトの場合、胸腺の中にTリンパ球が最も多く存在するのは10歳代前半であり、ピーク時の胸腺の重さ は30~40gである。 ・胸腺を経たTリンパ球はやがて種々のリンパ器官に運ばれていく。 ・胸腺はその後は急速に萎縮して脂肪組織に置き換わり、それまでに選ばれたTリンパ球のみが骨髄に おいて増産される。 ・細胞の表面には、Tリンパ球に特徴的なT細胞受容体(T cell receptor ;TCR)を備えている。 ・TCRにはαβ型とγδ型の2種類があり、大部分のTリンパ球はαβ型(=αβT細胞)である。 (αβ型とは、糖タンパク質でできたα鎖とβ鎖がジスルフィド結合(S-S)によって結合した二量体、すな わちαβ鎖をもつ型であり、γδ型とはγ鎖とδ鎖が結合したγδ鎖をもつ型である。これらは抗体のL鎖に よく似ており、定常部(constant region=C領域)と、抗原に直接結合する可変部(variable region =V領域)から成り立っている。本来少ないγδ型Tリンパ球の存在場所は比較的限局しており(皮膚、 舌の上皮、腸管上皮、子宮など)、胸腺や二次リンパ組織には少数しか存在しない。) Tリンパ球にはいくつかの種類がある ①ヘルパーTリンパ球(ヘルパーT細胞、Th)は 各種のリンフォカインを放出する ・ヘルパーTリンパ球は、マクロファージなどから抗原提示があると、インターロイキンやインターフェ ロンなどの各種のリンフォカインを放出し、主に他のリンパ球にそれぞれの役割を果たすように刺激を 与える。(インターロイキン(Interleukin、ILと略される)とは、白血球(leukocyte) から分泌され るもので、細胞間(inter-)のコミュニケーションの役割を担う物質の総称である。) ・細胞の表面にCD4と名付けられた分子を持っているので、CD4陽性Tリンパ球とも呼ばれる。 ・このCD4陽性Tリンパ球はヒト免疫不全ウイルス(HIV) や、ヒトT細胞白血病ウイルス (HTLV-1) が感染 する細胞である。 ・このヘルパーTリンパ球は、その産生するリンフォカインの種類によって、さらに次のように分類されて いる。 Th1・・・・・IL-2(インターロイキン2)、IFN-γ(インターフェロンγ)、TNFα(腫瘍壊死因子)など を産生する。これらよって、Tリンパ球の増殖や分化、マクロファージ、NK細胞、細胞傷害性 リンパ球が活性化される。(どちらかというと細胞性免疫を増強、またはコントロールする。) Th2・・・・・IL-4、IL-5、IL-13などを産生する。これによって、主にBリンパ球の増殖・分化や抗体産生 が促され、マクロファージからの炎症性サイトカインの産生が促進される。(すなわち、液性 免疫やアレルギー反応を増強、またはコントロールする。) Th17・・・・IL-17などを産生する。これによって、炎症が促進される。また、自己免疫疾患との関わりが 報告されている。 (TReg・・・・レギュラトリーTリンパ球 : 後述する) ②細胞傷害性Tリンパ球(キラーT細胞、Tc、あるいはCTL)は 標的細胞の自滅を誘う ・かつてはキラーT細胞と呼ばれたが、今では細胞傷害性T細胞(cytotoxic T lymphocyte)と呼ばれ、 略号としてはTc、あるいはCTLが用いられる。 ・宿主にとって異物となる細胞(癌細胞、移植細胞、ウイルス感染細胞など)を認識して消滅させる。
同じ抗原が再び現れた時に短時間で増殖する。 ③その他のTリンパ球 ・上記の他に、その細胞表面にD4、CD25、およびFoxp3といわれる分子を発現するTリンパ球の存在が 言われており、これは他のTリンパ球の活性を抑制するというので、レギュラトリーTリンパ球(制御 性T細胞)と呼ばれている。(かつてはサプレッサーTリンパ球と呼ばれた時期があった。) レギュラトリーTリンパ球が、例えば癌細胞の周囲を取り囲んでしまうと、細胞傷害性Tリンパ球が攻 撃できなくなり、癌細胞は増殖を続けるという構図になる。 ・その他、CD8陽性T細胞から分化するレギュラトリーTリンパ球、胸腺を介さずに分化成熟する末梢性 Tリンパ球、NK細胞とTリンパ球の性質を併せ持つNKTリンパ球などの存在が言われている。 ---<ナチュラルキラー細胞の各論>------------------- ナチュラルキラー(NK)細胞は即戦力 ・形態的には他のリンパ球と比較すると大形であり、細胞内に顆粒を有し、顆粒の中にはパーフォリン やグランザイムなどを含んでいる。
|