顆粒球(好酸球、好中球、好塩基球)


顆粒球の細胞質には顆粒が見える
・染色をし、光学顕微鏡にて
 観察した場合、その細胞質
 に明瞭な顆粒が認められる
 ため、顆粒球(あるいは顆
 粒白血球)と呼ばれるよう
 になった。
・染色性の違いによって、好
 酸球、好中球、好塩基球に
 分類される。
・顆粒球は他の種類の血球と
 同じく、造血幹細胞から増
 殖・分化してくる。
・血液1mm3中の白血球の数
 は3,500~9,000個(赤血球
 の約500万個と比較すると、
 その千分の一程度である)
 が、このうち顆粒球は50~
 70%を占め、残りの大半は
 リンパ球である。
・顆粒球の90~95%は好中球である。
・直径は12~15μmであり、リンパ球より大きく、単球よりは小さい。ただし、アメーバのように
 変形するので、外形は定まらない。


顆粒がエオシンに染まれば好酸球
顆粒がアズールB(あるいはメチレンブルー)に染まれば好塩基球
顆粒がその中間であれば好中球

・血球を染色する場
 合、ギムザ染色と
 いう染色法がよく
 用いられる(一般
 的なギムザ染色の
 他にもメイ・ギムザ
 染色、ライト・ギム
 ザ染色など、様々
 な工夫が凝らされ
 ている)
・その染色液中には
 赤色の色素である
 エオシンYと、青色
 の色素であるアズ
 ールB(メチレンブ
 ルーから生成され
 る)が入っている。

エオシンY(エオジンY、eosin Y)
〔酸性の赤色色素〕

メチレンブルー(methylene blue)
〔塩基性の青色色素〕

アズールB(azure B)
〔塩基性の青色色素〕
・顆粒が、赤色の酸性色素であるエオシンYに染まれば、それが好酸球である。
・顆粒が、青色の塩基性色素であるアズールBに染まれば、それが好塩基球である。
・顆粒が、その中間的な色調に染まれば、それが好中球である。また、成熟した好中球であれば、
 の形状が上のイラストのように2~4葉に分葉する(くびれる)ことでも識別できる。


---<好中球の各論>-------------------------------

顆粒球の90~95%は好中球(neutrophil)である
好中球の多くは、普段は貯留プールにいる

・好中球は、末梢血においては1mm3中(1μL中)におよそ2,000~
 7,000個程度が存在する。このように計測される好中球は、血管内を
 血流に乗って流れているものであり、この好中球の一群は「循環プー
 ル
」と呼ばれることがある。
・一方、血管内壁にくっついている、あるいは血管内壁をはうように
 ゆっくり動いている好中球が存在する。この一群は「辺縁プール」と
 も呼ばれ、場合によっては血液循環に乗る。
・ さらに、骨髄には、末梢血に存在する量の10~30倍ほどの好中球が
 準備されており、この一群は「貯留プール」と呼ばれる。
・すなわち、健康体であって病原菌感染などの特別なことが無い場合に
 は、末梢血中の好中球の数は少ないが、感染などの非常事態の場合に
 は、辺縁プールや貯留プールから多量の好中球が血流に乗り、現場に
 向かう。

好中球

好中球は、真っ先に細菌を食べて殺す血球である
 しかし、戦わなくても早く死ぬ
 だから、常に新品が全身に送り届けられる

・好中球の役割は、細菌類を包み込み、自らの細胞内に取り込み(貪食し)、殺すことである。
・好中球は、その表面にあるレセプターによって、細菌などの異物を認識する。
・また、体の免疫システムによってすでに標識された細菌などの異物に対しては、好中球の表面に
 ある、IgGやIgMのFc部分、あるいは補体成分であるC3bなどに対する受容体によって、
 より敏感に素速く認識できる。
・取り込んだ細菌は、細胞内にて活性酸素、過酸化水素、次亜塩素酸、加水分解酵素(リゾチーム、
 ラクトフェリン、エラスターゼなど)によって殺菌・溶菌し、自らも死んでいく。
・傷口から出る膿は、好中球の死骸や、好中球が放出した分解酵素によって融解されたものである。
・細菌感染があった場合、骨髄における好中球の生産も亢進する。
・好中球のおおよその寿命は、血管内では6~12時間程度、組織に入り込んだ場合は数日ほどであ
 るとされる。
・好中球はマクロファージのような抗原提示は行わない。

真新しい好中球の核は、まだ分葉していない
・末梢血中で見られる好中球の核は、おおよそ3分葉ぐらい(分葉核球)であるが、骨髄にて出来
 上がったばかりの好中球の核は桿状であり、これは桿状核球(上図参照)と呼ばれる。
・細菌感染などにより、好中球の大量動員が必要な時には、末梢血中にも桿状核球の割合が増える。
 この現象は、「白血球の核形の左方推移」と言われる。
・非常時には、更に幼若な後骨髄球や骨髄球が末梢血に出てくることもある。

好中球は自分で現場に遊走する
・好中球は、表面にある各種のレセプターによって、感染などの非常事態を知り、感染巣の位置を
 知り、そちらに向かって移動することができる(これは化学走性と呼ばれる)。
・レセプターを刺激する物質は多種類あり、これらは好中球遊走刺激因子と呼ばれる。
・各種の白血球や感染巣の組織から出る様々な物質(インターロイキン、ロイコトリエンなどのサイ
 トカイン)、あるいは細菌自体が放出した物質が遊走刺激因子となる。
・感染巣は多くの場合、血管外であるため、好中球は血管壁を通過することになるが、これは血管
 内皮細胞と好中球の絶妙な形態変化によって通過が可能になっている。


---<好酸球の各論>-------------------------------

好酸球(eosinophil)の数は少ない
・好酸球の数は少なく、顆粒球のうちの、5~10%程度である。
・核は2分葉を示すことが多い。
・Ⅰ型アレルギーや寄生虫の感染などで増加する。
・肥満細胞より放出されるヒスタミンを不活化したり、寄生虫に神経
 毒を与えたりあるいは寄生虫卵の成育を抑えるとされている。
・弱い遊走能や貪食能を持っており、IgE免疫複合体を貪食する。
・肥満細胞から出されるIL-5によって活性化される。
・好酸球が必要以上に増多すると、臓器障害がもたらされる。

---<好塩基球の各論>------------------------------

好塩基球(basophil)の数はもっと少ない
・好塩基球の数は好酸球の数よりも少なく、顆粒球のうちの、1%以下
 である。
・好塩基球は、細胞の表面にIgEに対する受容体が存在し、組織内に
 ある肥満細胞と類似しており、アレルギー反応によってヒスタミンや
 ヘパリンなどの生理活性物質を放出する。
・顆粒の中にはSRS-Aも含まれており、気管支平滑筋収縮や血管透過性
 亢進がもたらされる。
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<関連リンク>
血球の起源  赤血球  リンパ球  単球・マクロファージ  血小板

2012年4月作成  2024年1月最終更新   stnv基礎医学研究室・清水隆文