基に水素イオンまたは二酸化炭素が結合することにより、ヘモグロビン分子の立体構造が変化 し、ヘムの酸素親和性が低下する。これはボーア効果と呼ばれる。 ・また、解糖系の中間代謝産物であるグリセリン2,3-リン酸がβサブユニット間に結合することに よってもヘムの酸素親和性が低下する。このことは、酸素が少ない環境下ではヘムが酸素を離し やすいことになる。 ・このような複数のメカニズムによって、ヘモグロビンは酸素濃度の高い肺で酸素を効率よく結合 し、酸素濃度の低い組織に入ったときには効率よく酸素を離すことができるのである。 一酸化炭素は危険 ・一酸化炭素(CO)は、血液中ではヘモグロビンに対する親和性が酸素の250倍ほど高いと言われ ている。 ・通常の21%酸素の空気に0.1%の一酸化炭素が混入すると、平衡状態では約半分のヘモグロビン が一酸化炭素結合型となる。 ・一酸化炭素が一つのサブユニットに結合すると、他のサブユニットに結合している酸素とヘムの 親和性が高まり、組織において酸素を離さなくなるため、酸欠症状が一気に起こるとされている。 赤血球の寿命は約120日 ヘムは ビリベルジン → ビリルビン → ウロビリノーゲン(尿中) ウロビリノーゲン → ステルコビリン(大便)
尿として排泄された後の環境中においても進行する。) ・排泄されなかったウロビリノーゲン(全体の95~99%)は肝臓にて再び抱合型ビリルビンに変換 され、胆汁として再利用される(腸肝循環)。 ヘム → ビリベルジン → ビリルビンの変化は随所で起こりうる ・内出血による痣(あざ)は癒えるにしたがって、その痣の局所において赤色のヘム、緑色のビリ ベルジン、黄色のビリルビンへと変化していく。 HbA1c(ヘモグロビンA1c)とは? ・ヘモグロビンには、上述したようなα鎖とβ鎖の組合せ以外にも、α鎖とγ鎖、α鎖とδ鎖の組合せが ある。 ・まとめるならば次のようになる。(病的なヘモグロビンは除く) ◇ α2β2・・・・ヘモグロビンA ・・・・ 正常成人ヘモグロビンの約90を占める。 ◇ α2γ2・・・・ヘモグロビンF ・・・・ 胎児血液中の主成分である。正常成人では約0.5%。 ◇ α2δ2・・・・ヘモグロビンA2 ・・・・ 正常成人ヘモグロビンの約2~3%を占める。 ・さらに、ヘモグロビンAのβ鎖のN末端に糖が結合したものはヘモグロビンA1と呼ばれ、正常成人 ヘモグロビンの7~8%を占める。 ・糖の中でグルコース(ブドウ糖)と結合したものはヘモグロビンA1cと呼ばれ、正常成人では 4~5%を占め、糖尿病患者では増加する。 エリスロポエチンにより産生が誘起される ・エリスロポエチンはアミノ酸165残基からなるペプチドホルモンである。 ・主に腎臓の尿細管間質細胞において産生されるが、肝臓においても少量産生されるようである。 ・失血、気圧低下、肺・心疾患などで酸素分圧が低下すると腎臓からエリスロポエチンが分泌され、 それが造血幹細胞を刺激して赤血球の増殖・分化を起こさせる。 ・副腎皮質ホルモンや甲状腺ホルモンは組織の酸素代謝を亢進させることによって酸素分圧を低下 させるので、エリスロポエチンの分泌を促進することになる。 ・その他、造血に対し、アンドロジェンは促進的に、エストロジェンは抑制的に働くために、赤血 球数に性差があると言われる。 ヘマトクリット値(Ht、Hct)、MCV、MCH、MCHCは貧血検査の指標 ◆ヘマトクリット値とは ・ヘマトクリット値(hematocrit)は、血液中に占める血球の体積の割合(%)を表す。 ・成人男性で40~52%、成人女性で35~47%が正常な範囲であるとされている。 ・ヘマトクリット値が低ければ、血液が薄いことを意味している。ヘマトクリット値が高ければ、 血液が濃いことを意味している。 ◆MCV(平均赤血球容積)とは ・Mean Corpuscular Volume の略であり、赤血球1個の容積(体積)の平均値である。 ・計測器においては次の式で算出される。 MCV = ヘマトクリット値(%) ÷ 赤血球数(×1000000/μL) × 10 すなわち、ヘマトクリット値が45(%)、赤血球数が500万個/μL であれば MCV = 45 ÷ 5 × 10 = 90 となる。 ・基準値はおよそ80~100とされている。 (単位はfL(フェムトリットル、=μm3、=10-15L、=10-9μL)である。) ◆MCH(平均赤血球血色素量)とは ・Mean Corpuscular Hemoglobin の略であり、赤血球1個あたりのヘモグロビン量の平均値で ある。 ・計測器においては次の式で算出される。 MCH = 血色素量(g/dL) / 赤血球数(×1000000/μL) × 10 ・基準値はおよそ28~32(pg)とされている。 ◆MCHC(平均赤血球血色素濃度)とは ・Mean Corpuscular Hemoglobin Concentration の略であり、赤血球1個あたりのヘモグロ ビン濃度の平均値である。 ・計測器においては次の式で算出される。 MCHC = 血色素量(g/dL) / ヘマトクリット値(%) × 100 ・基準値はおよそ31~36(%)とされている。 <関連リンク> ◆血球の起源 ◆リンパ球 ◆顆粒球(好酸球、好中球、好塩基球) ◆単球・マクロファージ |