合成抗菌薬の第一号がサルファ薬である
スルファニルアミドが抗菌活性の本体
サルファ薬の作用機序
菌はスルファニルアミドを4-アミノ安息香酸と間違えて取り込む
・ヒトを含めた哺乳動物は、ジヒドロプテロイン酸合成酵素を持っていない(自分で葉酸を合成できない) ため、スルファニルアミドの影響は受けない。すなわち、菌類に対してだけ選択的に毒性を発揮すること になる。 喜びも束の間、耐性菌が現れる
・サルファ薬に対する耐性獲得機構は、そのターゲットであるジヒドロプテロイン酸合成酵素が遺伝的にニセモノを見分ける精度が向上した 変異し、スルファニルアミドやその類縁体(すなわちサルファ薬)に対する親和性が低下する(=結合 しなくなる)ことによって、これらの影響を受けなくなることであると解釈されている。 少し異なった作用機序の薬と組み合わせる
ST合剤として使われるトリメトプリム
・両薬を組み合わせることで耐性菌の出現リスクを低下させ、抗菌力的にも相乘効果が期待できる(トリ メトプリムの単独使用では耐性菌を産みやすかったため、単独使用は認可されていない。) ヒトにとっても重要なジヒドロ葉酸還元酵素を阻害しても良いの?
・ジヒドロ葉酸還元酵素は、あらゆる生物で普遍的に存在する酵素であるが、生物種ごとにその部分的な アミノ酸配列が変異してきており、外部形状も少しずつ異なっている。 ・そこで、細菌のジヒドロ葉酸還元酵素にのみ強い親和性を持つ薬物が選ばれた結果、トリメトプリムが 誕生した。従って、トリメトプリムはヒトの葉酸代謝には影響を及ぼさない。 ・ちなみにヒトのジヒドロ葉酸還元酵素に親和性を持つ(阻害する)薬物は、抗癌剤や抗リウマチ薬として 使われているメトトレキサートである。作用機序は、増殖の速い細胞群の増殖速度を抑制するということ である。 現代におけるST合剤の使われ方
・まず最初に基本的な原則であるが、他の医薬品と違い、ターゲットは頻繁に遺伝的変異を起こす微生物であって、昨日まで効いていたが今日から効かないという事態が起こりうることである。 ・上記の原則を踏まえた上で、現代においてどのような場合に使われてきたかのみを紹介する。 ①ニューモシスチス肺炎(AIDS患者で最も多い。旧:カリニ肺炎)。これは深在性の真菌である。細菌 以外にも真菌やトキソプラズマなどの原虫にも効果があるのが利点である。 ②尿路感染症。これは、他の抗菌剤と比較すると尿路への移行性に優れているためである。ただし、尿路 感染症に緑膿菌やアデノウイルスなど、ST合剤の効果が及ばない病原体が関与している場合は適用外で ある。(今日においては、尿路感染症の第一選択薬はニューキノロン系の抗菌薬になってきている。) <関連リンク> ◆抗生物質・ペニシリン ◆セフェム系 ◆ニューキノロン系 ◆寄生虫疾患・原虫疾患 ◆真菌症 ◆細菌感染症 ◆マイコプラズマ・リケッチア・クラミジア感染症 ◆ウイルス感染症 |