はじめに 2012年11月現在、小児を中心としてマイコプラズマ肺炎が大流行している。これまで、マイコプラズマ 肺炎に対する第一選択薬として用いられてきた抗生物質(抗菌薬)は、ここで紹介するマクロライド系の 抗生物質である。その中でもよく用いられてきたのは副作用の少ないアジスロマイシンである。 しかし、このマクロライド系に対する耐性を持ったマイコプラズマの割合が年々増え続け、その数値こそ 正確に算出することは不可能であるが、少なくとも今の患者さんに感染しているマイコプラズマのおよそ 8割以上はマクロライド耐性であろうとの見方が多い。 マクロライド系が効かないため、次の選択薬としてミノサイクリンなどのテトラサイクリン系抗生物質や、 小児でも使用できるニューキノロン系としてトスフロキサシンなどが用いられている。患者さんが大人なら ば、レボフロキサシンなどの他のニューキノロン系も第二選択薬となりうるが、ニューキノロン系の耐性菌 を増やしたくないため、リンコマイシン系やマクロライド系から派生したケトライド系を副作用に注意しな がら注意深く使用する・・、などの苦心がなされている。ちなみに、マイコプラズマは細胞壁を有しないため、 細胞壁合成阻害薬であるペニシリン系やセフェム系などのβラクタム系は効かない。 マクロライドとは? ・マクロライド(macrolide)とは、12以上の原子から構成される大環状のラクトンを有する有機化合物の 総称である。
・放線菌は「抗生物質の宝庫」とも呼ばれており、抗生物質を産生する菌種が多く、特にストレプトマイ セス(Streptomyces)属に多い。
マクロライド系抗生物質は真正細菌のタンパク質合成を阻害する
エリスロマイシンの改良版、日本発のクラリスロマイシン
代謝される薬物と併用したときに、その薬物の血中濃度が大幅に上昇する可能性がある。) ・肝臓における代謝産物のうち、14-ヒドロキシクラリスロマイシンはクラリスロマイシンのほぼ2倍の抗菌 活性を持っている。 現代において頻用されている抗生物質、アジスロマイシン
1週間にわたって効果が持続することになる。) ・マクロライド系は基本的には時間依存性の薬物であって、菌の増殖を阻止できる濃度を長時間保てば 効果が発揮され、濃度をむやみに上げても意味は無い。 ・β-ラクタム系抗生物質では効かないマイコプラズマやクラミジア、従来のマクロライド系では抗菌力が 弱かったインフルエンザ菌に対しても強い抗菌力を示し、一般的な急性感染症治療に求められる幅広い 抗菌スペクトラムを有している。 ・副作用は、他のマクロライド系と比較して消化器症状が少なく、薬物相互作用はほとんど無い。他の系 統の抗菌薬と比較しても副作用の少ない部類に入るため、現代において頻用されている。 ・ファイザー社が製造・販売しているアジスロマイシンの日本での商品名は「ジスロマック」(略号: AZM)である。 ・化学構造上、アジスロマイシンは15員環マクロライド系、前述のエリスロマイシンやクラリスロマイシン は14員環マクロライド系と呼ばれることもある。 ・耐性菌の問題は冒頭でも述べたように、やはり深刻である。他のマクロライド系抗生物質に耐性である と、アジスロマイシンにも耐性を持つことが多い(交叉耐性)。 どのような菌にも効き、副作用の少ない抗生物質は 乱用され、多くの耐性菌を産んできた
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