生物とは


「生物」あるいは「生き物」の定義は難しい
・「生物」は、和英辞典では「a living thing」、「a creature」、あるいは総称として「life」など
 と記されている。学問分野では「organism」という語も用いられる。すなわち、「生物」を単一
 の語で表すことに苦慮していることがわかる。
・国語辞典で「生物」を調べると、
 a. 生命活動を行っている物。
 b. 動物、植物、細菌真菌などの生き物のこと。
 c. 細胞を構成単位とし、代謝、増殖できるもの。
 d. 自己と外界との明瞭な境界があり、エネルギー変換能力、恒常性維持能力、自己増殖能力など
   をもつもの。
 などの様々な記載がある。
ウイルスは細胞という形態は持たないが、外界との明瞭な境界を持ち、他の力は借りるものの、
 増殖能力を持つ。しかし、自分が二分裂したりして単独で増殖することはできず、構造的には遺伝
 子をタンパク質の殻で包んだだけのような単純な構造であり、殻の内部で一般の細胞のような代謝
 が行われるわけではないため、現在のところは非生物として扱われている。
クラミジアやリケッチアは細胞の構造を持つが、ウイルスと同じように、生きた細胞に寄生して、
 その力を借りない限り生きることも増殖することもできない。
・すなわち、生物と非生物の間に境界線を引くことは容易ではない。


生物の特徴ベスト11

第1位
<生物は>死ぬことがある
・これは寿命を持つという意味ではない。
・ヒトを含めた動物には一定の寿命があるが、二分裂などによって延々と増え続ける細菌、その他、
 カビやキノコなどの菌類、多年生の植物などには明かな寿命は認められない。
・しかし、生きているものは死ぬ可能性を持っているということである。

第2位
<生物は>水を欲しがる
・生物が体内あるいは細胞内で行うさまざまな化学反応の場を提供しているのが水である。水が無い
 と少なくとも地球に誕生した生物は生きられない。
・陸上に棲息する生き物は、体内の水の量を一定に保つために多くのエネルギーを使っている。

第3位
<生物は>反応する
・外部環境の変化や外部からの刺激に反応する。
・命を守るために、より適した環境に移動したり、逃走したり、敵を攻撃したりする。
・変化や刺激を感じ取るための様々な受容体(レセプター)をもつ

第4位
<生物は>増殖する
・死ぬことがある以上、増殖できるときに増殖しておかないと絶滅する可能性がある。
・ヒトにおいても、増殖に対する本能は強く、異性と接触することを望む者が多い。
・日本人は減ってきているが、これは別の要因がブレーキをかけているためである。

第5位
<生物は>呼吸する
・細胞内にミトコンドリアを持つ生物は、酸素呼吸を行う。
・ミトコンドリアのクエン酸回路から二酸化炭素が、電子伝達系から水が排出される。
・ミトコンドリアを持たない生物のうち好気性菌は、ミトコンドリアと同様の機構で酸素呼吸を行う。
・ミトコンドリアを持たない生物のうち嫌気性菌は、酸素は使わないが、嫌気呼吸、無気呼吸、無酸
 素呼吸とも言われる呼吸を行う。

第6位
<生物は>食べる
・生物は、ナトリウム・カリウムポンプなどを常時稼動して細胞内外のイオン組成を調節するために
 大量のエネルギーを使うため、それ以上のエネルギー源を細胞内に取り入れることが必須である。
・様々な生物がいるが、その多くはブドウ糖(グルコース)を好んで細胞内に取り込み、解糖系 →
 ミトコンドリア内のクエン酸回路→電子伝達系を用いてATPを作り出す。
・植物の場合は「食べる」という表現は使わないが、根から無機物を吸い上げている。

第7位
<生物は>変異する
・遺伝子としてDNAが用いられ、それが複製されて子孫に伝わるが、その際に様々な機構によって
 変異が起こるようになっている。
・♂と♀がいる生物では、有性生殖の過程が変異の大部分を作り出している。
・細菌同士では異種においても様々な方法で遺伝子を交換しており、薬剤耐性遺伝子の広がりが大問
 題になっている。

第8位
<生物は>自分を守る
・生物の細胞の表面には、自己と非自己を見分ける機構、他を排除する機構が備わっている。
・ヒトの場合、免疫機構だけではなく、体表は皮膚、消化管においては殺菌酵素、IgA抗体、強い酸、
 マクロファージなどが、敵の侵入を、入り口で防いでくれている。

第9位
<生物は>細胞でできている
・生物は細胞で出来ており、外側に細胞膜がある。
・細胞膜はリン脂質の二重層と、それに組み込まれたイオンポンプ、イオンチャネル、受容体など
 から構成されている。
・細胞内は一定の状態に保たれており、このことはホメオスタシスといわれる。

第10位
<生物は>細胞や分子が更新されている
・多細胞の生物は、外観はあまり変化が無くても、古くなった細胞はアポトーシス(自滅)し、新し
 い細胞に置き換わる。
・さらにミクロな次元では、古くなったタンパク質は分解され、新しいタンパク質に置き換わる。
・その他、早かれ遅かれ、殆どの物質が常に更新されるのが生物である。

第11位
<生物は>独りでは生きられない
・生物は単独ではなく、多くの生き物たちと生態系を構成している。
・地球上の生物は互いに依存し合いながら生きている。
・また、そうでなければ生きていけない。


<関連リンク>
  細胞  ATPの産生  ウイルス感染症

2011年12月作成  2024年1月最終更新   stnv基礎医学研究室・清水隆文