・カルシウムを空気中に放置しておくとすぐに腐食し、表面から白くなっていく。 空気中の酸素、水蒸気、二酸化炭素によって、次のように反応が進む。 2Ca + O2 → 2CaO ・・・・酸化カルシウム(生石灰) CaO + H2O → Ca(OH)2 ・・・・水酸化カルシウム(消石灰) Ca(OH)2 + O2 → H2O + CaCO3 ・・・・炭酸カルシウム(石灰石や大理石の主成分) ・保存する場合は鉱油に浸しておく必要がある。 水と激しく反応し、水素ガスを出す ・カルシウムは取り扱いに注意が必要である。(危険物:禁水性物質) ・カルシウムの塊を水に放り込むと、水よりも重いため沈むが、激しく水素を出し、やがて水中あるいは 水面を踊るように激しく動き回って反応し、やがて溶けてしまう。 ・カルシウムの小片にに少量の水をかけると、反応により生じた水素と、高温で沸騰した水蒸気を吹き出し ながら、白っぽい水酸化カルシウムに変化する。 Ca + 2H2O → Ca(OH)2 + H2↑ ・生じた水酸化カルシウムの溶液は強いアルカリ性のため、皮膚を腐食する。 加熱により発火する ・カルシウムを空気中で加熱すると、溶融する前に発火・燃焼して酸化カルシウムになる。 2Ca + O2 → 2CaO ・・・・酸化カルシウム(生石灰) ・ちなみに、融点は840~850℃である。
やすい。 ・天然には様々な2価の化合物をつくって存在し、水溶液中では2価の陽イオン(Ca2+)が生じる。 ・建築用のコンクリートの原材料の一つであるセメントにも、3CaO・SiO2、2CaO・SiO2、3CaO・Al2O3、 4CaO・Al2O3・Fe2O3、CaSO4・2H2Oなどの形で存在し、カルシウムが中心的な役割を果たしている。 生物はカルシウムをどのように使ったのか? もともと極微量しかないため、細胞内に少しでも入ると影響が大きい したがって、決定的な反応の引き金として使った
の興奮性細胞に広く分布している。 <↓参考>
非興奮性細胞も、その活動にカルシウムイオンを利用している カルシウムは細胞内では主に小胞体に貯蔵されている 小胞体からのカルシウムイオンの出入りはたいへん小刻みである ・非興奮性の細胞(神経や筋肉ではなく一般的な組織を構成している細胞)も、その活動のスイッチ(活動の 制御)にカルシウムイオンを使っている。 ・小胞体から細胞質へのカルシウムの出入りはたいへん小刻みであり、これは「Ca2+スパイク」、及びその 連続したものは「Ca2+振動」と呼ばれている。 ・「Ca2+振動」の周期は、細胞外からの刺激の種類や程度によって変化し、これはデジタル信号として特定 の活動命令となる。
カルシウム拮抗薬について ・高血圧や狭心症の治療や改善にカルシウム拮抗薬が用いられることがある。 ・これは、血管の平滑筋にあるカルシウムチャネルの機能を拮抗(阻害)することによって、血管を拡張させ るものである。 (電位依存性カルシウムチャネルの阻害剤であり、細胞外から細胞内へのカルシウムイオンの流入を抑制 する。本来、カルシウムと拮抗させる薬剤ではなくカルシウムチャネルと拮抗させる薬剤であるから、 「カルシウム拮抗剤」という名称は適当でなく「カルシウムチャネル拮抗剤」とするべきものであるが、 日本においては「カルシウム拮抗剤」の名称が一般的となっている。ただ、この一般的な名称のために 一部でカルシウムの吸収が阻害される薬剤であるとの誤解がある。2008年現在市販されているカルシウム 拮抗剤は殆どL型カルシウムチャネルを介したカルシウム流入の阻止を行うことでその薬理活性を得ている と考えられている。) 大切なカルシウムを維持するメカニズム 特に大切なのは、細胞内や小胞体内のカルシウムイオン濃度である ・生物の体内に存在するカルシウムは遊離型、タンパク質結合型、沈着型があり、脊椎動物ではほとんどが骨 などの組織に沈着型として存在している。 ・動物では、カルシウムは内骨格や外骨格の主要な成分であり、骨はカルシウムの貯蔵場所である。 ・ヒトの体では、成人男性では約1kgのカルシウムを保有すると言われる。その多くは骨や歯に、ヒドロキシ アパタイト Ca5(PO4)3(OH) の形で存在する。 ・細胞内においては、カルシウムは小胞体に貯蔵されている。 ・血中のカルシウム濃度は厳密に維持されており、わずかにでも低下すれば、ただちに骨からカルシウムが動員 される。 ・血清のカルシウム濃度は8.4~10.2mg/dl程度の範囲に保たれている。正常値を10mg/dlとすると、そのうち 4mg/dlはアルブミンと結合しており、1mg/dlはリンなど他のイオンと結合しており、5mg/dlがカルシウム イオンとして存在する。 上皮小体ホルモン、ビタミンD、カルシトニン、その他ホルモン ・カルシウム代謝の調節には、上皮小体ホルモン、ビタミンD、カルシトニンの3つが主に関与し、その他、 副腎皮質ホルモン、成長ホルモン、エストロゲンなども影響を与える。 ・上皮小体ホルモンとビタミンDはどちらかが不足しても低カルシウム血症を起こすことになる。 ・カルシトニンは甲状腺で作られ、血中のカルシウム濃度を下げるホルモンである(後述する)。 ・妊娠、出産、授乳の時には、胎児の骨を成長させるために、通常の2倍近くのカルシウムが必要となるが、 このときにはエストロゲンの働きによって、腎臓でのビタミンD活性化促進によって腸からのカルシウムの 吸収を促進し、腎臓からの排出を抑制してカルシウム量を増やす共に、骨芽細胞の活動を高めて骨密度を 向上させる。 上皮小体(副甲状腺)の起源は魚のエラ
・上皮小体ホルモンは副甲状腺ホルモンあるいはパラソルモン(パラトルモン、英:parathyroid hormone、 parathormone、 PTH)とも呼ばれる。 ・84個のアミノ酸から成るペプチドである。 ・血液中のカルシウム濃度が低下すると分泌され、血液中のカルシウム濃度を上げる作用がある。 ・PTH受容体は骨、腸、腎臓の3箇所にあり、次のような作用をもたらす。 ①破骨細胞を活性化し、骨芽細胞を抑制することによって、骨吸収を促進し、その結果、骨からカルシウム とリン酸が血液に供給される。 ②腸管からのカルシウムの吸収を促進する。 ③腎臓でのカルシウムの再吸収を促進し、リン酸の再吸収を抑制する。 ④腎臓におけるビタミンDの活性化を促進する。 ・血中カルシウムの濃度の調節はPTHの他にビタミンDやカルシトニンも関わっている。 ビタミンDについて ・ビタミンDは次の方法によって血中のカルシウム濃度を上げる作用がある。 ①腸上皮細胞に作用してカルシウムとリンの吸収を促進する。 ②腎臓でのカルシウムの再吸収を促進する。 ③骨に対しては上皮小体ホルモンと同様に骨吸収を促進する。 ★原則として、PTHとビタミンDの両方がなければ血清カルシウム濃度は正常範囲まで上昇しない。 カルシトニンについて ・カルシトニンは甲状腺に存在する傍濾胞細胞(C細胞)によって主に産生されるが、甲状腺の他の細胞でも わずかに産生されるようである。 ・アミノ酸32個のペプチドホルモン。 ・血中のカルシウム濃度の上昇により分泌が促進され、カルシウム濃度が低下すると分泌が抑制される。 ・カルシトニンは次の方法によって血中のカルシウム濃度を下げる作用がある。 ①破骨細胞に働いて骨吸収を減少させ、骨新生を促進する。 ②破骨細胞の形成そのものも抑制する。 ③腎臓でのカルシウムの再吸収を抑制する(=尿中へのカルシウムの排泄を促進する)。 ④腸管からのカルシウムの吸収を抑制する。 ・ガストリン、コレシストキニン、ドーパミン、エストロゲンにより分泌が促進される。 血液中のカルシウムイオン濃度が低下すると(低カルシウム血症) <低下する主な原因> ・上皮小体(副甲状腺)機能低下症、ビタミンD欠乏症、および腎疾患がある。 ・その時のメカニズムとしては、骨からのカルシウムイオンの遊離減少、腎臓からの再吸収量の減少、消化 管からの吸収減少、血液中において他の分子と結合(キレート化)することによってカルシウムイオンが 減少するなどがある。 <症状> ・低カルシウム血症はしばしば無症候性である。 ・症候が現れる場合、細胞膜電位の異常が神経筋の易興奮性をもたらすことによる。 → 反射の亢進、強直性痙攣(背部および下肢の筋肉に多い)、テタニー※ ※テタニーとは、血液中のカルシウムやマグネシウムの減少が原因で、手足が痺れ(しびれ)、筋に 強い拘縮が起こり、手足の屈曲が数分間持続するもの。重症の場合は、喉頭筋、呼吸筋、全身の 筋にまで及ぶ。 → 身体徴候としては ◆トルソー徴候(上腕をマンシェットで圧迫し血流を遮断することで助産師手位が出現) 検査法:血圧計のマンシェットを上腕に巻き、最大血圧よりやや低目まで上昇させる。 何も変化無ければ4分以上内圧を上げる。 反射:「産科医の手accoucheur`s hand」と呼ばれる手つきで痙攣が起こると陽性。 4分以上内圧を上げても変化無ければ陰性。 換気をさせると出現しやすくなる。 ◆クヴォステク徴候(顔面神経を叩打することで上唇に筋緊張が出現) 目的:テタニー患者で、末梢神経系が機械的刺激に対して過敏になっていることをみる。 検査法:外耳孔前方で顔面神経根を叩打する。 反射:鼻翼、眼瞼、口角などが攣縮すると陽性。 クヴォステック徴候Ⅱ 検査法:頬骨弓と口角を結ぶ中点を叩打する。 反射:Ⅰと同じく鼻翼、眼瞼、口角などが攣縮すると陽性。 ◆ルスト徴候(腓骨神経を腓骨頭後方で叩打することで足の背屈が起こる)など。 ・低カルシウム血症が持続すると副甲状腺の主細胞の過形成による続発性副甲状腺機能亢進症が生じる。 <治療>ビタミンDあるいはカルシウムの投与を行う。 ★副甲状腺機能低下症(上皮小体機能低下症)とは ・低カルシウム血症と共に高リン血症が認められる。 ・ただし低カルシウム血症、高リン血症は、慢性腎不全でも生じるので、低カルシウム、高リン血症を示し、 腎機能が悪くない場合に、副甲状腺機能低下症と診断される。 ・主な症状は低カルシウム血症によるもので、手足のこむら返り、ぴりぴりするしびれ感、けいれん(テタ ニー)発作などがみられる。 ・ひどい場合には全身性強直性(きょうちょくせい)(強くこわばる)のけいれん発作が起こり、意識を失う こともある。 ・治療は、アルファカルシドール(アルファロール、ワンアルファ)またはカルシトリオール(ロカルトロ ール)という活性型ビタミンD製剤を内服する。 血液中のカルシウムイオン濃度が高まり過ぎると(高カルシウム血症) <主な原因> ・高カルシウム血症は骨や腎臓からのカルシウム再吸収の亢進、消化管からのカルシウム吸収の亢進により 生じ、悪性腫瘍に合併したり、副甲状腺機能亢進症に合併したりする。 <症状> ・症状としては悪心、嘔吐、中枢神経障害などが知られているが、これらの症状からは本疾患を疑うことは ほとんどない。血液検査で計ってみないとわからないことが多い。 ・心電図検査においてQT時間の短縮により高カルシウム血症が発見されることがある。 <治療> 血漿カルシウムを低下させる方策は主として4つある。 ①腸管からのカルシウム吸収の抑制 ②カルシウムの尿中排泄の増加 ③骨吸収の抑制 ④透析による過剰なカルシウムの除去 (使用される治療法は高カルシウム血症の程度と原因の両方による。) ★副甲状腺機能亢進症(上皮小体機能亢進症)とは ・(原発性)副甲状腺機能亢進症は、副甲状腺が腫大して副甲状腺ホルモン(PTH)を過剰に分泌させる。 腫大の原因は、腺腫、過形成、癌があるが、8割以上は腺腫であり、この場合は4つある副甲状腺のうち ひとつが腫大する。 ・症状は、高カルシウム血症、低リン血症、骨粗鬆症、尿路結石、腎障害などを来す。 ・治療の原則は、腫大した副甲状腺を摘除する手術である。腺腫の場合には、通常ひとつの腺だけの異常なの で、これを摘出する。 食事からの摂取について ・カルシウムは便や尿として体外に排泄されるため、これを補う最低必要摂取量として、厚生労働省は1日に 700mg(骨粗鬆症予防には800 mgを推奨)をあげている。 ・健常者では体液内濃度は平衡に保たれ、妊娠期の女性も食物からの吸収能力が自然に増すため、偏った 食生活でなければ追加摂取は必要ない。 ・過剰摂取すると、高カルシウム血症や腎結石の原因となるため、1日の摂取許容上限としてに2300mgが 示されている。 ・俗に、カルシウムが不足するとイライラなど精神不安定の原因になるとされるが、血液中のカルシウムの量 は約0.5 g(成人男性の場合。濃度10mg/dL、血液量5kgとして)とわずかであり、人体の成分として不足 する事はなく、イライラの原因ではない。 ・もしも血中濃度が正常範囲を外れているならば、上述した原因があげられ、上述の徴候が現れる。 骨粗鬆症とカルシウムの関係 ・骨粗鬆症とは、骨芽細胞による骨形成速度よりも破骨細胞による骨吸収速度のほうが高いことにより、骨に 小さな空洞が多発する症状をいう。 ・日本においては1000万人、アメリカ合衆国では3000万人に症状が現れていると考えられている。 ・骨粗鬆症は、中年以降に見られ、患者の8割は女性である。 ・骨粗鬆症の原因は次のようであるため、安易にカルシウム摂取量を増やそうと考えないことである。 ◆エストロゲンの影響 女性においては性ホルモンの一種であるエストロゲンの産出量が閉経後に急速に低下する。男性の場合 はエストロゲンは一生を通じてほぼ一定量を保つが、女性は閉経を境に男性のエストロゲン量よりも 少なくなる。 エストロゲンには骨芽細胞の活動を高める作用があるため、閉経によって骨粗鬆症へと進みやすい。 さらに女性は男性に比べてもともと骨量が少ないため、形成・吸収のバランスが崩れたときに、症状が 表面化しやすい。 ◆ビタミンDの影響 老人性骨粗鬆症では、加齢に伴う腎機能の低下によって生じるビタミンDの産生低下が大きな原因となる。 ・生活改善による対策としては、骨に適度な荷重や刺激を与えるために運動をすること、適度に日光を浴びる こと(週に2回、5分から30分程度の日光浴で充分)、そして、栄養的にバランスのとれた食事をすることで ある。 <関連リンク> ◆ミネラルの話 ◆マグネシウム ◆糖質(炭水化物) ◆アミノ酸 ◆必須脂肪酸 ◆脂溶性ビタミン ◆水溶性ビタミン |