少々細かな図(高画質PDFはこちら)になってしまいましたが、今後のことも考えて、免疫系について頭の中を一度整理してみたいと思います。
骨の中心部分に骨髄がありますが、その中に在る造血幹細胞(血液幹細胞)が新しい細胞を次々と生み出し、生み出された細胞が様々な種類の細胞へと分化していきます。大きく分けるならば、赤血球、白血球、血小板の3つに分けるのが一般的です。その中で、免疫に関わるのは白血球ですので、それに絞って見ていくことにします。
白血球を分けると、顆粒球、単球、リンパ球の3つに分けることができます。顆粒球は更に好中球、好塩基球、好酸球に分けることができます。単球は血管外に出るとマクロファージ、組織内に定着すると樹状細胞へと分化します。リンパ球は非常に細かく分けることができるのですが、大まかにはT細胞、B細胞、NK(ナチュラルキラー)細胞に分けることができます。なお、NK細胞は顆粒球に近い特徴を持っていて、上述の〝細胞性免疫〟の一つとして重要な役割を果たしています。
ここからはT細胞とB細胞の話に絞りますが、T細胞は未熟な状態で骨髄から血中に出た後、胸腺にて捕捉され、そこで大変身を遂げる共に、様々な種類のT細胞へと分化するとともに、併せて増殖することになります。体の大きさに対する胸腺の大きさは幼児期から10歳代で大きく、即ち、子どもの頃にT細胞の〝教育〟がしっかり行われます。その内容は、特に〝自己と非自己の区別を正しく行う〟ことが最大の目的です。因みに、正しく判別できるT細胞は、候補T細胞全体の2%程度であると見積もられていて、それ以外のT細胞は自滅させられることになります。
図中に赤色の★印を付けておいた箇所が5箇所ありますが、そこはアレルギー疾患や自己免疫疾患に至る場合のキーポイントとなる箇所を示しています。胸腺におけるT細胞の教育・選別が正しく行われないと、自分の体の一部を敵だと判断して攻撃対象になってしまうことを意味しています。
胸腺内にて分化して生じた様々な種類のT細胞の増殖程度は、他の多くの種類の細胞から放出される様々な種類のサイトカインの種類と量によっても調節されます。従いまして、例えば、どのような炎症を、どの程度起こしたかによって、各T細胞の比率も変わってくることになります。
そして、次に★を付けて示したのが制御性T細胞(Treg)の働きです。これは〝制御〟という言葉で特徴づけられていますように、特に過剰な免疫反応を抑制する場合に中心的に働いてくれるT細胞です。そして、これは腸内の酪酸菌および酪酸によって充実させられるところが重要ポイントであり、腸内細菌の話において述べたとおりです。
その下段において★を付けて示したのはTh1とTh2で、これは花粉症の話『花粉症を抑えるのも酪酸産生菌』の記事にて食餌内容との関係を述べましたので、ここでは繰り返しません。ただ、免疫反応に対して促進的に働くTh2が優勢になると、その結果としてB細胞(成熟したものは〝形質細胞〟と呼ばれる)が必要以上に活性化されることになり、アレルギーや自己免疫疾患を加速させることになります。
次に、B細胞についてですが、これを分けるなら、一般的なB細胞と、メモリーB細胞になります。B細胞は抗体を産生する細胞で、抗体の種類を大きく分けるならば、図に示されている5種類だと捉えて結構です。また、一つのB細胞は1種類の抗体しか作れませんので、結合する相手が変われば別の抗体が作用するわけであり、それは即ち別のB細胞によって作られた抗体だということになります。
従いまして、膨大な種類のB細胞が必要になるわけですが、どの種類の抗体が特に必要なのかをメモリーB細胞が記憶し、記憶に新しい敵が侵入したならばB細胞間の連絡によって、該当する抗体を作るB細胞が大量生産される、という仕組みになっています。
図の左下にグラフを示しておきましたが、横軸が年齢で、縦軸は血清中の抗体の濃度を示しています。赤ちゃんの頃は、出生前にお母さんから臍の緒を通じてIgGが供給されます。出生後は供給されなくなりますから、徐々に低下していき、9か月目ではほぼゼロになっています。
その代わり、母乳で育てられている場合は、母乳中にあるIgA(分泌型IgA;sIgA)によって抗体が補われます。この時期を、IgAが含まれない人工乳で育てると、多くの感染症を引き起こしてしまうことになります。
抗体による免疫力として中心的に働くのはIgGなのですが、これが高まってくるのは5~6歳以降ですので、低年齢の子どもにワクチンを接種しても、抗体産生能力そのものが低いですから、期待されているような効果は示しません。今では1歳に満たない頃から何らかのワクチン接種が始まりますが、それは誤ったワクチン行政によるものです。ましてや、ワクチンを接種した子どものほうが様々な疾患に罹りやすいという結果が出ているのは、不自然なことをした結果として自然な発育発達が犠牲になるのだと考えられます。
花粉症の場合はIgEが問題になりますが、これがグラフに現されていない理由は、アレルギー反応を起こしていない限りは非常に微量だからです。そして、IgEはB細胞から更に分化した形質細胞によって作られます。
今日の結論としては、必要以上の抗体産生を抑えたければ、★で示した箇所に着目する、ということになります。