今日は、特に美容分野において近年、注目度を高めてきている〝カルバミル化〟の原因について見ていこうと思います。なお、このカルバミル化は、動脈硬化をはじめとした医学的な分野で研究が進んできました。例えば、掲載した図(高画質PDFはこちら)の左上には動脈硬化の例を採り上げてみました。
血管壁を構成している平滑筋の部分を見てみると、老化に伴ってタンパク質を構成しているアミノ酸の一つであるリジンに、何やら他の物質(官能基)がくっ付いています。具体的に見てみると、それは〝H2N-CO-〟であり、これの名称は〝カルバモイル基〟と言います。
タンパク質の一部(リジン)に、このようなものがくっ付くと、タンパク質の性質が変化します。よく似た現象としては、糖分子がくっ付く糖化というものがありますが、何れもタンパク質の高次構造に変化を来します。
掲載した図の左下に、牛の大動脈から抽出されたエラスチンと、それをカルバミル化したエラスチンの写真を引用しました。本来の健全なエラスチンであれば、太くて丈夫な束になるのですが、カルバミル化されると細くて弱々しい束にしかなりません。これが実際の血管の中で起これば、弱くて硬くて脆(もろ)い血管にしかなりません。それが動脈硬化だということです。
或いは、皮膚のエラスチンでカルバミル化が起これば、弾力性が無くて薄くて皺の寄りやすい皮膚になります。因みに、皮膚におけるエラスチンの役割は、丈夫なコラーゲン線維を、柔軟性を持たせて束ねることです。それによって、コラーゲン線維が立体的かつ柔軟に3次元構造を取ることが可能になります。従いまして、エラスチンがカルバミル化されて本来の役割が果たせなくなると、コラーゲン線維の3次元構造が上手く保てなくなり、薄くて硬い皮膚になってしまう、ということです。それがひいては、皮膚に多くの皺を作ることにります。
では、カルバミル化(carbamylation)が起こる原因は何なのか…?ということですが、カルバミル化を生じさせる原因物質である〝イソシアネート(Isocyanate;イソシアン酸塩)〟が体内に増えることです。掲載した図の右半分を見て頂いた方が解りやすいと思うのですが、緑色の枠で囲んだ物質です。この物質が、タンパク質中のリジンというアミノ酸のアミノ基、および、タンパク質のN末端側(アミノ基の方)にくっ付くわけです。
では、そのイソシアネートがなぜ増えるのかについてですが、その原因は主に2つあります。1つは尿素が増加してしまうことです。尿素は、体内に生じたアンモニアを無毒な物質に変換する目的で作られる物質なのですが、作られた尿素のごく一部(およそ1%)がアンモニアとシアネート(Cyanate)に解離してしまうようです。そして、そのシアネートのおよそ半分がイソシアネートへと変化し、近くにリジンが在ったり、タンパク質のN末端が在ったりすれば、そこにくっ付いてしまう、ということです。
もう一つは、体内にチオシアネート(Thiocyanate)が増加した場合です。これが増える理由は後述しますが、これが体内にて何割かがシアネートへと変化し、その後は上述と同様であって、何割かがイソシアネートへと変化し、リジンやN末端にくっ付いてしまいます。
それならば、尿素やチオシアネートを増やさなければ、カルバミル化が防げることになります。先ずは尿素についてですが、尿素を増やさないようにしようと思うのならば、その原料であるアンモニアを増やさないことです。アンモニアを増やさないようにしようと思うのならば、アミノ酸をエネルギー源として消費しなければならないような食事をしないことです。それは即ち、エネルギー源として糖質や脂質をしっかりと摂ることです。ただし、脂質の摂り過ぎも良くありませんので、基本的には糖質(単糖や二糖類ではなくてデンプン)をしっかり摂ることです。逆に言うならば、タンパク質がメインの食事をしないことです。
次に、チオシアネートを増やさないためには、それを増やす原因として挙げられている喫煙や大気汚染を避けることです。また、炎症や加齢もチオシアネートが増える原因であるとされているのですが、炎症については少なくとも慢性的な炎症は絶対に避けるべきです。加齢につきましては避けられないものですが、老化という解釈をすれば、ある程度は抑制することが可能です。チオシアネートの増加と老化の関係は、鶏と卵の関係に近いですので、悪循環が生じないようにしたいところです。
以上のように、今日はカルバミル化の原因について見てみました。また、その原因を減らすことについても言及しました。あとは、もっと積極的にカルバミル化を防ぐ方法についてです。これにつきましては、記事を改めてご紹介する予定ですので、楽しみにしておいてください。やはり、いつまでも若々しい状態でいたいですね。