北極圏の温暖化が日本に異常気象をもたらすメカニズム

北極圏の温暖化が日本に異常気象をもたらすメカニズム

 世界的に、異常気象が多く起こる時代になってきました。日本でも、猛暑のレベルが年々高まり、夏には35℃を越えるのが当たり前になってきました。また、線状降水帯などの発生によって、水害も増えました。そうかと思うと、冬には大寒波が来て、豪雪になったりします。要するに、異常気象と呼べる現象が頻繁に起こるようになってきたわけです。これは、神様から人類への注意喚起なのでしょうか…。
 今日は、そのような異常気象が起こりやすくなってきた原因について、最も基本的なメカニズムを紹介したいと思います。メカニズムが解れば、それを防ぐために努力すべきことが明確になってくることでしょう。

 掲載した図(高画質PDFはこちら)の左上には、地球上の各地域の気温の変化が示された図を引用しました。なお、スマホで読んでいただいている方は、後で見てもらっても結構です。
 地球全体としては、さほど大きく温度上昇しているわけではありません。例えば、この図の場合、1951~1980年の平均気温に対して、2022年の気温がどうであったかを示しています。気温が下がった地域は、さすがにありませんが、殆ど変わっていない地域は多くあって、概して言えば、赤道付近がそれに該当します。
 一方、極付近には4℃ほどの温度上昇が見られる地域があります。特に、暖流が流れ着く地域では温度上昇が激しくなっています。先にupしました『自分たちの繁栄よりも北極圏の保全に努めなければならない』で少し触れましたが、氷河、海上の氷、雪、永久凍土が融けて年々少なくなってきており、生物の生態系も大きく変化しつつあります。
 そのような変化は、極付近以外ではあまり多くは見られないのですが、異常気象の増加という点では明らかに増加してきていると言えます。そこで問題になるのが、極付近の温暖化と、中緯度地域の異常気象との関係についてです。

 この問題については、複数の研究機関の研究者によって専門的な解説が試みられているのですが、大局的に捉えたものが発見できませんでしたので、私の今回の記事にさせていただきました。
 まず、極付近の温度上昇が激しいことについてですが、これについて「なぜ極付近(北極や南極)が大きく温度上昇するのですか?」という疑問が最初に生じることと思われます。もちろん、その理由は明らかであり、複数あるわけですが、捉え方を変えたほうが良いと思っています。即ち、「極付近の温度が大きく上昇する」と捉えるよりも、「赤道付近と極付近の温度差が狭まるように(温度差が小さくなるように)事が進行している」と解釈する方が妥当だということです。もっと言えば、「今まで極付近の温度が低過ぎたので、それが解消されてきている」と捉えたほうが良いのではないかと思うのです。
 そもそも、球形の物体に一方向から光エネルギーが放射されますので、光の当たり具合が少ない部分の温度が上がり難いのは当然ですが、地球には対流している空気がありますから、それがしっかりと循環すれば、どこも似たような気温になっても不思議ではないと考えられます。ただ、それによる温度差の解消が不十分であるため、極付近が極端な低温になっているということです。

 では、空気の循環について見てみましょう。温度が高まった地域と、あまり高まらなかった地域の温度差が大きいほど、循環する空気の流れは速くなって当然です。例えば、コンロでも火鉢でも良いのですが、その真上では上昇気流が起きています。温められた空気は熱膨張して比重が軽くなりますから、上の方に向かって移動します。その代わり、周囲からコンロに向かって空気が流れ込み、いわゆる対流が起こることになります。
 では、コンロの火力を弱めたらどうなるでしょうか? 結果としては、対流による空気の流れが遅くなります。火力を弱めるというのは、コンロの真上の空気の温度と、コンロの周囲の空気の温度との差を少なくすることになります。またこれは、赤道付近の温度と、極付近の温度との差を少なくすることと同じことになります。

 もし、赤道付近の温度と極付近の温度が同じであれば、そこに在る空気の温度も一緒になり、気圧の差も無くなり、両者間での空気の移動は無くなります。
 現実的には、両者の温度が一緒になることは難しいですので、温度差が小さくなることを考えてみましょう。温度差が小さくなれば、気圧差も小さくなり、空気の移動が穏やかになり、風が弱まることになります。
 地球上を吹く風の流れは、地球が自転していることや、球体であることによって、非常に複雑になっていますが、次に着目していくのは、異常気象を起こす場合に最も影響力が大きいジェット気流です。このジェット気流も、温度差や気圧差が小さくなれば弱まることになります。
 そして、弱まるほど、蛇行しやすくなります。この理屈は他のものでも一緒で、速く動いているものほど曲がり難くなります。145km/hで進む野球ボールは曲げやすいですが、160km/hで進む野球ボールは曲げ難いです。ただ、160km/hのボールを曲げるスーパースターが居るかもしれませんが…、普通は無理です。同様に、流れが遅くて弱いジェット気流は曲がりやすくなります。そして、地形による温度差や気圧差の影響を大きく受け、大きく蛇行してしまうことになります。

 タイトルにしました「北極圏の温暖化が日本に異常気象をもたらすメカニズム」の核心は、北極圏の温度が上がり、赤道付近の温度との差が小さくなったことによって、寒帯ジェット気流が弱まり、激しく蛇行するようになったことです。
 蛇行が激しくなると、その蛇行の仕方によっては、日本の上空に北極圏の寒気が降りてくることになります。これが、温暖化が進んでいても、日本が厳寒になったりする理由になります。逆に、寒帯ジェット気流の蛇行が北上した場合、日本は南方の温かい(熱い)空気に包まれ、夏場であれば猛暑になる、ということです。
 なお、この蛇行の仕方は予測するのが非常に難しく、例えば次の年の寒波はどうなるのか…とか、夏の猛暑はどの程度になるのか…などの予想は極めて難しいということです。

 今後についてですが、極付近の温度上昇が止まるようであれば、赤道付近と極付近の温度差が比較的小さい状態で安定化し、各種の風が穏やかに流れるようになり、海流も穏やかに流れ、異常気象が減る時代になると予想されます。しかし、極付近の温暖化を抑える対策を講じなければ、既に温暖化の悪循環、即ち雪や氷の減少、極付近での微生物の繁茂、太陽熱の吸収過多、それによる温度上昇、という悪循環がが生じていますので、異常気象の激化は避けられないということになります。
 巷では、「ビジネスのために地球温暖化を掲げているだけだ」という旨の持論を展開している人が何人もいらっしゃいますが、それは地球全体の気温上昇が極めて少ないことが裏付けになっているのでしょう。しかし問題は、極付近の温暖化で、非常に深刻な問題だということになります。

 
執筆者
清水隆文

( stnv基礎医学研究室,当サイトの keymaster )
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