以前に「ワクチン接種者からシェディングを受ける」と訴える人の話をしましたが、今回のお話は、それにも関連するものです。また、数十年ほど前にはシックハウス症候群というものが流行しましたが、これもよく似た現象になります。その後、化学物質過敏症とか、電磁波過敏症などもというのも登場しました。そして、これを患っている人は、そうでない人には理解してもらえないような、大変辛い思いをしているということです。
今では、上記のような過敏症を、世界的には〝本態性環境不耐症 (IEI:Idiopathic Environmental Intolerance)〟と呼ぶことにしよう、との見解になっています。ただ、以前から使われている呼び方も残っていて、特に化学物質に関するものは〝多種化学物質過敏症(MCS:Multiple Chemical Sensitivity)〟という語もしばしば使われています。ただ、特定の化学物質と症状との因果関係を特定できないことが多いため、化学物質という語は入れずに、化学物質も環境要因の一つだと解釈して、日本では〝環境過敏症〟と呼ばれることもあります。なお、冒頭に触れました「ワクチン接種者から被害を被る」という現象も、これに含まれることになります。
結局、この一連の症状は〝本態性環境不耐症〟だということです。
どのような症状が出るのかについては、掲載した図(高画質PDFはこちら)の左側にまとめておきました。即ち、人によって様々なものが現れるのですが、例えば、心臓のドキドキ感、筋肉の不調和、手足や指のしびれ、胃のむかつき、下痢、便秘、気分の落ち込み、集中力や思考力の欠如、イライラ、記憶力の低下、疲労、めまい、ふらつき、眠気、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、喘鳴、目や鼻のかゆみ、皮膚の発疹、頭痛、胸痛、筋肉痛、関節痛、体の各部位の腫れ、頻尿、などになります。
また、この本態性環境不耐症を患う人は、次のような疾患にも罹りやすいことが明らかになっています。即ち、各種のアレルギー、感染後遺症、ワクチン後遺症、自律神経失調症、甲状腺機能低下症、慢性疲労症候群、パニック障害などです。この事実は、本態性環境不耐症というものは、その原因として挙げられているものによる直接的な作用ではなくて、あくまで当該生体反応のきっかけになっているに過ぎない、ということがわかります。
何かに例えるならば、表現はあまり良くないかもしれませんが、今にも崩れそうな建物があった場合、それは地震が起きても崩れますし、強い台風が来ても崩れますし、ダンプカーが突っ込んでも崩れます。崩れるきっかけは様々なのですが、そのきっかけがいずれであろうが、建物が崩れるという同様の現象を引き起こす、ということに似ています。
では、本態性環境不耐症の根本的な原因は何なのかと問われれば、一言で言うならば、ヒトが一生物として好ましくない環境で、好ましくない生活をしているからだ、ということになります。
〝環境〟に〝不耐〟という表現になっていますが、実際は、環境の方が激変してしまったために、ヒトがそれに対応し切れていない状態になっているということです。要するに、悪いのは環境の激変なのです。私の場合、草や木や土、そして細菌を含めた莫大な種類の生物と共に暮らしていますので、本態性環境不耐症とは無縁の生活をしています。そのせいで、悩んでらっしゃる方々の苦悩が完璧に理解できていない可能性もあるのですが、逆に、生活環境を変えれば解決する問題である、ということを実証していることにもなります。
掲載した図の右上部に、都会の一風景の写真を載せましたが、これは如何にも異常な世界です。私たちの身近な祖先はお猿さんですが、このような場所にお猿さんを連れてきたら直ぐに病気に罹るでしょう。従いまして、このような場所で病気をせずに暮らしてらっしゃる人は、相当強靭な心身をお持ちの人なのだと思います。私なんかは、とても暮らせません。直ぐに本態性環境不耐症に罹ってしまうかもしれません。
お仕事の関係で、人工環境から自然豊かな環境に引っ越しできない人のために、せめてもの対策を挙げておきますので、まだ実現できていない項目がありましたら、直ぐに実践に移していただければと思います。
図の右下に羅列したのですが、一つは、フィトンチッド(植物が発散する揮発性物質)を可能な限り多く浴びることです。匂いに敏感に反応して異常をきたす人でも、フィトンチッドであれば、そのような反応を示さず、逆に、それまでの不調が改善されていきます。このことは、匂い成分による化学物質過敏症というのは、フィトンチッド不足に対する禁断症状なのだと言うこともできます。
次に、土壌細菌を多く取り込み、その餌となる食物繊維を多く食べることです。本態性環境不耐症の人がアレルギーを起こしやすいのも、腸内細菌叢(ウイルスなども含めたマイクロバイオーム)が貧弱であるために、種々の生体反応に対して抑制が効かなくなるのです。「あのお店、美味しそう♪」などと言って、美味しさを最優先にしているお店の食べ物を多く食べることは控えてください。
次に、各種の人工物から出来るだけ離れることです。特に、柔軟仕上げ剤や香粧品類は肌に直接触れる可能性がありますので、使いたいのであれば本態性環境不耐症に罹ることを覚悟のうえで使ってください。ただ、他の子どもたちへの香料被害も大きいですので、人が集まるところに行く場合は、無香料にしていく必要があります。
次に、加工度の高い食品を避けることです。特に、ファストフード、ハンバーグ、菓子 パン、パスタなどの小麦粉製品、清涼飲料水などは、必要な栄養素が欠けていたリ、様々な添加物が使用されていたリ、血糖値スパイクを生じさせたりなど、多くの悪影響を及ぼす食品です。このようなものを沢山食べていて「化学物質過敏症に効く薬は無いでしょうか?」などの質問をされたならば、「そんな都合の良い薬はありません」と即答します。
次に、現代人の多くが不足させている次のような栄養素を補給するすることです。一連の記事において度々登場する物質が多いのですが、それは当然の結果であって、それらの不足が殆どの疾患の原因になっているからです。特に本態性環境不耐症の場合であれば、マグネシウム、セレン、ビタミンC、ビタミンB6、オメガ3(EPA、α-リノレン酸)、タウリン、グルタチオン、グルタミン酸、各種ファイトケミカル、食物繊維の補給を重視していただければと思います。