どういう事かと言いますと、視力検査で0.5~0.6程度の近視なら、度数の最も弱い+0.5程度の老眼鏡を1週間も装着すれば、視力は0.7~1.0程度にまで高まるということです。この方法は、私自身も利用しており、先月に済ませた(大型)自動車運転免許更新時にも重宝しました。これによって高まった視力は、その後の日常的な目の使い方に注意すれば、維持することが出来ます。因みに、私のプロフ写真はメガネをかけていますが、これは度の入っていないメガネで、UVカットと保湿用のために必要な時だけかけているものです。
では、視力矯正のための本来のメガネとは逆のレンズを使うと、なぜそのような効果が出るのかについてですが、それは次のようだと思われます。皆様のなかで、近視を補正する近視用のメガネ、すなわち凹レンズのメガネを使用している人、または過去に使用した経験のある方なら体験されているはずです。例えば、近視用のメガネをかけて1~2年もすると、次は更に度数の高いメガネに変えなければ目標の視力を得られない、という現象が生じます。或いは、メガネを度数の高いものに変えたとき、メガネ屋さんから「今はキツク感じるでしょうけど、しばらくすれば目が慣れますから大丈夫ですよ」と言われた経験をお持ちの方もいらっしゃることと思います。或いは、時と場合によって一時的に近視用のメガネを使う人の場合、メガネを外した直後には更に視力が低下していることを感じることと思います。このような現象が生じるのは、焦点調節を担っている神経系/脳による補正機能が、現状に合わせて適応しようと変化することによるものです。
近視になる原因は、言うまでもなく複数挙げることができます。一つは、眼球の奥行きが相対的に長くなり、即ちレンズである水晶体から網膜までの距離が本来よりも長くなることです。二つ目は、遠くを見るときに水晶体の厚みが薄くなり難いことです。三つめは、世間では殆ど言われることのない神経系/脳による調節機能のズレです。これはいわば、焦点調節機能(ピント合わせ)におけるソフトウェアの問題です。
ところで、生命の神秘、生命の巧妙なメカニズムを、目の焦点調節機能にも感じることが出来ます。近視であろうが、遠視であろうが、目は目標物までの距離を正確に割り出すことによって水晶体の厚みを変化させます。では、目は、一体どのようにして目標物までの距離を割り出しているのでしょうか…。
片目の場合は遠近感がわかりにくいですが、しかし、その片目自体は、それのみでしっかりと目標物までの距離を割り出し、ピントを合わせてくれます。試しに片目をつぶって遠くを見たり近くを見たりを繰り返してみても、それぞれの場合にしっかりとピントを合わせてくれます。
一方、機械のカメラのオートフォーカスの場合、その仕組みは幾つかありますが、例えば入射光を2つに分けて位相差を検出したり、コントラストの強弱を検出したりなど、それこそ大変複雑な機構と高度な信号処理回路を駆使することによって初めて実現できるもの。しかし目は、何気なく、完璧な精度で、いとも簡単にオートフォーカスしてくれています。
近視の矯正に老眼鏡を用いる方法は、オートフォーカス機能のソフトウェアの部分を少々書き換えてやろう…とするものです。例えば裸眼の視力が0.5であった場合、老眼鏡をかけることによって視力が0.3まで低下したとします。すると、脳は、老眼鏡をかけた状態で0.5あたりになるように修正しようとするのです。修正が終わってから老眼鏡を外してみると、0.5であった視力が、なんと、0.7あたりまで変更されていた…、ということになるのだと思います。