地表にまで届く紫外線(UV)は、ある程度の量を浴びることが健康維持や病気の治療において重要なのですが、目だけは例外です。また、ルテインやゼアキサンチンが不足している状態で青色光(ブルーライト)を多く浴びることも高リスクとなります。
本来、この地球に生まれ、地上で暮らすことになって何億年(約3.6億年前と推定されている)と経ちますが、ヒトの場合は50歳代や60歳代で既にUVやブルーライトによるダメージを受ける人が出てくるというのは、少々心外なのではないでしょうか…。ヒトの目は地上での生活に完全には適応できてないということになります。
まぁ、目だけではなく、腰や膝などは重力と二足歩行にも適応できていないですし、他にも色々とあると思いますので、ヒトはまだまだ不完全体だと思っておかなければならないでしょう。
先にupしております記事のうち『発症率100%の白内障を防ぐ方法』におきましては、白内障の原因と対策について述べましたが、そのうちの一つとしてUVを挙げました。また、『加齢黄斑変性の予防には摂り難いゼアキサンチンをサプリで』におきましては、ルテインやキサントフィルのブルーライト吸収と、それの不足が黄斑変性に繋がることを述べました。なお、ブルーライトは、目以外の全身に浴びることの重要性を『青色光を浴びると太り難い体になる』にて述べておりますので、紫外線と同様、体には重要であるが、目には厳しいということになるわけです。
結局、目だけをUVやブルーライトから完璧に保護し、他の部位には適度に浴びましょう、ということになります。
そこで重要になるのがメガネの選び方なのですが、レンズの素材として用いられているものには、ガラス、アクリル、ポリカーボネートの3種類があります。そこで先ず、素材の特徴を一通り知っておくことが重要になります。また、地上に届く紫外線の波長と到達量を併せて知っておくことも重要になります。
添付しました図(高画質PDFはこちら)の左上は、地表に届く紫外線の波長と強度の関係を示したものなのですが、6月の場合と12月の場合が別に描かれています。6月の場合を見ていきますが、波長が300nmよりも短いUVは、殆ど届いていないことが解ります。なお、UV-Bと命名されている波長の範囲は280~315nmですので、UV-Bのうちの長い波長は地表に届いているという解釈で結構だと思います。そして、それよりも波長の長い領域がUV-Aで、光学的には315~380nmの範囲内のものになります。因みに、安全性を見込むような文脈の場合では、400nmまでがUV-Aの範囲内に入られる場合があります。
次に、メガネのレンズに使われる素材である、ガラス、アクリル、ポリカーボネートの紫外線透過率なのですが、前2者につきましては添付しました図の左下のグラフ、ポリカーボネートにつきましてはその右側のグラフに示されています。なお、それぞれの素材は、敢えてUVを吸収するような添加物やコーティング剤が施されていない、純粋かつ一般的な素材の場合です。では、順に見ていくことにしましょう。
ガラスのレンズは、メガネと言えばガラスが普通であった時代から使い続けられている素材なのですが、地表に届くUVのなかで300nmに近いほど透過はし難いのですが、それより波長が長くなるほど、多くを通してしまうという特徴を持っていることが判ります。
例えば、クルマのガラスにはUVを吸収する、いわゆるUVカットガラスが採用されるのが普通になっています。因みに、吸収するということは、熱に変換してしまって透過させないということですので、UVカットになるわけです。クルマにUVカットガラスを用いないと、車内のプラスチック類が短期間でボロボロになってしまいますので、内装が鉄板むき出し(表面塗装のみ)である三菱ジープのようなクルマでない限り、UVカットガラスが必須になっています。
ガラスをメガネのレンズに用いた場合、敢えてUVを吸収したり反射させたりする加工を施さない限り、UV遮蔽性としては「低~中」だということになります。添付しました図の右上の部分の表の左の列に、ガラスの特徴がまとめられていますので、後からでも結構ですので眺めておいていただければと思います。
次に、UV遮蔽効果としても2番目に相当するアクリルについてです。100円ショップで売られている各種のメガネのレンズの材質は、その殆どがアクリルだということです。表中の「コスト」の欄にも書かれていますように、非常に安価なのですが、そのUV遮蔽性能は、かなり高いです。
添付しました図の左下のグラフにおいて、赤色の破線で示されているのが2mm厚の通常のアクリル板における光の透過率です。UV-Aを380nmまでであるとした場合、地表に届く紫外線(UV)の全ての領域(300~380nm)を、ほぼ全てカットできることになります。目に悪い紫外線というのは、波長が短いほど物質を劣化させる力が強いですので、単なるガラス製のメガネを100円ショップのメガネに換えるだけで、大いなる紫外線対策になるわけです。
その他、UV吸収特性を高めたアクリル(UVカットアクリル)のレンズもあるようなのですが、次に紹介するポリカーボネートとのコストパフォーマンスが近似しますので、それならば、ポリカーボネート製を選択することになるかも知れません。
次に、素材としてUV遮蔽効果が最も高いポリカーボネートを見てみましょう。添付しました図の下段中央のグラフが、光の透過曲線です。UV-Aを380nmまでとした場合は、地表に届くUVの全てを遮蔽できることになります。そして、UV-Aを400nmまでとした場合、前記のUVカットアクリルと同等以上のUVカット性能を発揮することが判ります。
ポリカーボネートは、製法によってUV吸収特性を大いに変化させることが可能です。世の中には、ガラスの代わりにUVを透過するプラスチックを必要とする場合もあるのですが、そのような場合には特性を変えたポリカーボネートが使われています。逆に、ブルーライト付近まで遮蔽したいという要望もあるわけですので、素材のUV吸収特性を長波長側へとシフトさせ、更にブルーライトを吸収できる他の素材を混入させることによって、比較的安価にUVカット+ブルーライトカット用のプラスチックレンズのメガネが作られるようになりました。
因みに、図の右下の方に参考に挙げました「PCメガネ」というのは、千円以内で販売されているもので、さすがに100円よりは高いですが、1桁安いと思う人もいらっしゃることでしょう。そしてこれは、ブルーライトならば39%を遮蔽できる、として売られています。
以上のように、高性能なものが安く手に入る時代になりました。若年化してきております白内障や黄斑変性を予防するために、未だの方はぜひ検討してみてください。
