NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)を上手く使おう

NSAIDsは、プロスタグランジン類の生成を担っているシクロオキシゲナーゼを阻害する。

 薬には、真に良いものと、極悪のものがあります。良い薬は人の命を救ったり、病気の治癒を促したり、健康を取り戻すために有効であったりします。例えば腎機能を失い、透析が必須である人にとっては、透析中の血液凝固を防ぐ薬が無ければ、その人は生き延びることができません。或いは、血栓を溶かす薬のおかげで、脳梗塞の状態から蘇る場合もあります。このあと紹介するNSAIDsも、大変有用な薬の一つだと言えます。
 しかし、世の中には悪い薬も沢山あります。その代表は何と言っても抗がん剤です。これは無差別攻撃によって一般細胞のほうにも大きなダメージを与え、人を早期に死亡させます。或いは、向精神薬も悪い薬の代表です。多くのものは、特定の神経伝達物質の受容体や輸送体を阻害することによって、強制的に信号の流れ具合を変化させるものであって、間違っても神経細胞を健康にするものではありません。
 もう一つの問題は、現代医療や医薬品を全面的に否定する人たちがいることです。そのような人たちは、薬の作用機序などの細かいことが解らないことが多いため、全面否定するしか方法がないのだということです。これは、薬の有効利用をする機会を奪ってしまうことになりますので、適切ではないということになります。

 では、テーマであるNSAIDsについて見てみたいと思います。これは、多くは「頭痛・歯痛・生理痛などの薬」「消炎鎮痛薬」「抗炎症薬」「解熱薬」などとして売られています。飲み薬の他に、貼ったり塗ったりする外用薬もありますが、ここでは飲み薬に絞って見ていこうと思います。
 有効成分はアセチルサリチル酸(アスピリン)、イブプロフェン、ロキソプロフェンが主です。よく似たイメージのものにアセトアミノフェンがありますが、これは鎮痛の機序が違っていますので、NSAIDsには該当しません。
 例えば、花粉症などのアレルギー反応が起こったりすると、目や鼻の粘膜は過剰なヒスタミン放出によって炎症性細胞の活動度が増し、他の炎症性物質の放出も増えます。そして鼻粘膜がただれたようになって、出血しはじめたりします。
そのような時、花粉症の薬を使わなくても、例えばアスピリンやイブプロフェンが主成分のNSAIDsを飲むと、それなりに症状が軽くなります。アラキドン酸から生合成される炎症性物質の生合成が抑制されるからです。症状がひどくならないうちに、適宜、NSAIDsを使ってみるのも方法の一つだと言えます。
 その他、特にアスピリンは、通常の用量の1/4程度を飲むと、血栓の予防に有効なことが広く知られています。血栓が出来やすい家系の人は、必要に応じて利用してみるのが有効でしょう。
 或いは、老化が進むほど、組織中における慢性炎症の程度が高まることが確認されています。逆に言えば、慢性炎症を起こしている組織が多いほど老化が進んでいる、と言うことができます。その慢性炎症を起こしている原因は、蓄積した老化細胞です。たまにNSAIDsを飲む人ほど、老化が遅い傾向にあることが知られています。
 がん(癌)も慢性炎症が原因で発症することが多いですから、たまにNSAIDsを飲む人の方が、発がんが少なくなる傾向が見られます。がん以外にも、多くの疾患は慢性炎症が引き金になっていることが多いですので、たまにNSAIDsを飲むことは、健康維持のためにも有効だということになります。
 そもそも炎症は治癒反応ですから、これが起こらないと逆に具合が悪いのですが、ついつい過剰になってしまうことが多いようです。なぜ過剰になるかというと、炎症というのは、ウイルスや病原菌などの外来微生物が侵入してきたときに、感染巣の周囲の細胞をも死滅させておけば、ウイルスや細菌が広がって行き難くならからです。
 では、風邪で熱が出たという場合はどうなのでしょうか…?これは、NSAIDsを使って熱を下げることは、風邪のウイルスをやっつける力を弱めてしまうことになるため、逆効果となります。しかし、感染症でない場合の炎症反応は、状況を見ながら、適宜、NSAIDsにて炎症を少し抑えてやることが秘訣だと言えます。それによって、過剰な炎症による組織破壊を抑制することが可能になります。

 以上のように、歴史の長いアスピリンを代表とするNSAIDsは、うまく使うことによって、アンチエイジングの効果も得られるため、適宜、有効利用する価値があるということになります。

 
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