NAD+を浪費するPARPの出番を減らす方法

老化に伴ってNAD+ の消費量が増える原因の一つは、PARPの出番が増えるから

 加齢に伴って老化していくことを何とか防ぎ、いつまでも若々しく生き続けるための方法について、何回かに分けてご紹介しております。今回は、老化の原因の一つとして挙げられるNAD+の減少を、なんとか喰い止めようではないか…、というお話の一つになります。なお、どの記事から読んでいただいても良いように、出来る限りの工夫をしていきます。

 掲載しました図(高画質PDFはこちら)の左上に、健康な成人、老化している人、対策(NAD+強化)を行った場合、の3種類について上から順に概念図が描かれています。
 健康な成人の場合は、NAD+の消費量と生合成量が釣り合っています。しかし、老化している人の場合はNAD+消費量が増えると共に、生合成量が減っています。だからこそ、抗老化対策として、NAD+の消費量を健康な成人並みに減らすと共に、NAD+量が増えるようにサプリメントとしてNAD+の前駆物質(NMN、ニコチンアミド・リボシル、ニコチンアミドなど)を補給したり、その他の方法(今後に紹介予定)にてNAD+生合成を活性化させることが有効になってきます。なお、前駆物質補給のお話は『老化によって減少するNAD+とニコチンアミドやNMNとの関係』、『もう一つのNAD+前駆物質であるニコチンアミド・リボシド(NR)について』にて述べています。
 一方、NAD+の消費量を減らすことが、今回の記事における抗老化のアプローチになります。老化が起こる場合、なぜNAD+の消費量が増えるのかと言いますと、図に挙げられている〝CD38〟によるNAD+の分解と、〝PARP〟の活動によるNAD+の大量消費よる2種類が主なものとなります。
 なお、このうちのCD38につきましては、概略と対処方法を『アピゲニンは全身の老化だけでなくUV-Bによる皮膚老化をも抑制する』にて述べていますので、まだ読まれていない方はご参照ください。もう一つのPARPにつきましては、今から紹介していくことになります。

 〝PARP〟というのは〝ポリ・ADP-リボース・ポリメラーゼ〟の略称で、細かく分類すると17種類あるのですが、最も多く存在するのがPARP1で、中央の図にはPARP1が挙げられています。次に述べる〝DNA一本鎖切断の修復にはPARP1が主として関わりますが、PARP2やPARP3も機能するとされています。従いまして、ここでは単に“PARP”と表記することにします。
 PARPの役割は他にもあるのですが、そのなかでも大きな役割であるとされているのがDNA一本鎖切断の修復に関わることです。因みに、DNA二本鎖切断の修復の場合に同様の働きをするのはBRCA1やBRCA2です。
 DNA一本鎖切断が起こる原因は色々あるのですが、二本鎖切断に較べれば軽度の損傷なのであり、活性酸素種が主な原因です。その発生源はどこなのかと言えば、慢性炎症が起きている現場です。慢性炎症と活性酸素種は互いに促進し合う関係にありますので、両者はセットになっていると捉えれば結構かと思われます。更に深く見るならば、その部位の抗酸化能が低下していたリ、老化したミトコンドリアから多量に放出されていたり、好中球やマクロファージが細菌を処理する段階で多量に作り出したり、などが絡み合っていると考えられます。

 PARPがNAD+を多く消費してしまう理由は次のようです。中央の図に描かれていますように、DNA一本鎖切断が生じると、PARPはその部分を検出して結合します。次に、PARPはNAD+のADPリボースの部分だけを切り離して自らの分子に数珠(じゅず)繋ぎに結合していき、ポリ-ADP-リボースを作ります。この動作によって、多量のNAD+が消費されていくことになります。
 また、DNA一本鎖切断が上手く修復できなかった場合は、細胞は安全対策として死滅する方法を選ぶのですが、その場合にもPARPが関与することになります。

 結局、PARPの活動によるNAD+の大量消費を防ぐには、DNA一本鎖切断を起こさないことであり、そのためには活性酸素種の増加を防ぐことが大切だということになります。それは即ち、慢性炎症を起こさないようにすることでもあります。
 なお、活性酸素種は、一方では体内にて有効利用されていますので、全くゼロにすることは出来ません。その代わり、ゼロに出来ないからこそ、有効利用した後にはそれを消去する仕組みが備わっています。従いまして、大切なことは、生じた活性酸素をしっかりと消去できる抗酸化能を維持することです。具体的には、健康体を維持することによって体内の各種の抗酸化機能(SOD、グルタチオン、カタラーゼなど)を高めることと、体外から摂取できる抗酸化物質、例えばビタミンCやE、カロテノイド、ポリフェノール、植物性の硫黄化合物など、各種のファイトケミカルを鋭意摂取することだということになります。(この結論は、先にupしている一覧表に記載済みです)

 
執筆者
清水隆文

( stnv基礎医学研究室,当サイトの keymaster )
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