先に、子宮がん(子宮頸がんと子宮体がん)について見てきましたが、今回は、それらと関係の深い〝卵巣がん〟について見ていこうと思います。
前回にも見て頂きました「罹患数」の経年変化のグラフを、掲載した図(高画質PDFはこちら)の右上に示しました。近年では、子宮体がんと子宮頸がんを足して2で割った感じの罹患者数になっていて、増加の傾向も同様であって、2種類の子宮がんの中間といった感じになっています。従いまして、改善していかなければ、この調子で増え続けていくことになります。では、どうすれば良いのでしょうか…。
Googleで「卵巣がんを防ぐ方法」を検索してみましょう。今日の時点で一番上に出てきた回答は、「卵巣がんは子宮頸がんや子宮体がんと異なり、その発生過程は不明な点が多いです。したがって確実な予防法はありません。これまでの研究では禁煙、節度のある飲酒、バランスのよい食事、身体活動、適正な体形、感染予防が効果的といわれていますが、いずれも決定的なものではありません」と出てきました。うーん、困りましたね~。
上記回答の下部には、関連する質問として「卵巣がんにならないためにはどうしたらいいですか?」という質問が作成され、AIが、どこからか最適そうなものを選んできて次のような回答を表示しています。
それは「卵巣がんの原因には、遺伝的要因や生活習慣、ホルモンバランスの変化などがありますが、特にいくつかの遺伝子の変異が関与していることが知られています。また、食生活や運動習慣を改善すること、定期的な婦人科検診を受けることが、卵巣がんの予防や早期発見につながるのです」となっていました。
自分で出来そうなことは、食生活の改善や運動習慣を改善することでしょうが、何をどう改善するのかの答えが書かれていませんので、これも困りますね~。
もう一つだけ…。検索結果の3番目に出てきたサイトに「卵巣がんの予防法」という項目があって、それが検索に掛かってきました。その中身には次のように書かれていました。
「早期発見が難しい上、死亡率も高い卵巣がん。これを防ぐには、若い頃から低用量ピルを服用し、排卵を抑えるのが有効です。これによって卵巣がんリスクを最大8割減らせることが実証されています。あわせて、若い時から婦人科の定期検診を受けることも大切。10~30代までは2年に1回、40代からは年に1回、超音波検査を受けるようにしましょう」ということでした。
う~ん、ピルを勧められてしまいました。まぁ、もし遺伝子検査を行ったとして、然るべき変異が見つかってリスクが相当高そうであれば、このような方法もあるかも知れませんが、「低用量ピルの副作用は?」とAIに聞いてみると、「低用量ピルには、吐き気、不正出血、頭痛などの副作用や、血栓症のリスクがあります。また、服用を忘れると避妊効果が低下する可能性があります。」となっていました。
いや、調べるまでも無いですが、ピルによって自らホルモンのリズムを乱しにいくわけですから、こんなものを若い頃から服用しろと…。上記の記事を書かれたライターさんには申し訳ないですが、これを読んで実行に移してしまう若い女性の健康、そして幸せを、親身になって考えたことは無いのでしょうか…。
さて、検閲の仕組みの無いネット情報を見に行くことはやめて、正しい答えを導き出していきましょう。
卵巣に生じるがんの殆ど(95%以上)は、卵巣の表層の上皮に生じるがん(表層上皮性腫瘍)です。言い換えると、卵巣の内部から発生するのではなくて、表面の皮(上皮)から発生するわけです。それにも拘らず、生じたがん細胞は比較的多くの種類に分けられているのですが、その理由は次のようです。
卵巣がんのがん細胞の起源は、どちらかと言うと、卵巣以外の組織、即ち、子宮頸管、子宮内膜、卵管であることが多いのです。そして、それらは卵管を経由した月経血の逆流(健常な女性でも一般的に見られる)によって、それぞれの場所から運ばれてきた細胞だということなのです。なお、掲載した図の左下に、そのことを示している図を引用させていただきました。
あまり細かいところまで見る必要は無いのですが、上記のことが卵巣がんを、ややこしそうなものにしている原因だと言えます。普通ならば、卵巣の表層上皮に生じるがんなのであれば、その起源も、卵巣の表層上皮細胞だと思うわけです。ところが、どうも様子が違っていて、色んな種類のがん細胞がある…というのは、色んな部位からそれぞれ異なった細胞が卵巣表層上皮まで来ているからだということです。
冒頭に挙げたGoogleの検索結果、即ち「卵巣がんは子宮頸がんや子宮体がんと異なり、その発生過程は不明な点が多いです。したがって確実な予防法はありません」という論調は、あまりにも諦めが早いわけです。
結局、子宮(子宮頸管や子宮内膜)や卵管が健全であれば、がん細胞の元となるような不健全な細胞は卵巣にまで来ないことになります。従いまして、最大の予防法は、子宮全体や卵管を、健全に保っておくことです。間違っても、ピルなどを使ってホルモン変動のリズムを人為的に乱している場合ではありません。即ち、ピルによって子宮の健康度を高めることはできませんし、使えば使うほど逆効果となります。
次に、子宮や卵管から逆流してきた不健全な細胞が、卵巣表層上皮の内側に入ってしまう現象についてですが、これは左下の図にも示されていますように、最も可能性の高いのは〝排卵時に生じた卵巣表層の傷〟が生じるからだと考えられます。では、何故そのような傷になってしまうのでしょうか…。
排卵の場合、成熟した卵母細胞は、卵巣表層上皮の細胞層を破って外に出ることになるのですが、その後は速やかに修復されます。ところが、修復が不完全であると、その部分が傷として残ることになります。そして、子宮や卵管から逆流してきた不健全な細胞が、その傷から潜り込むことになります。
妊娠や出産を経験している人の場合、その期間は排卵が抑えられますから、卵巣表層上皮に傷が出来る確率が下がります。しかし、妊娠や出産をしていない場合は、その間も排卵が続きますから、傷が出来る頻度が高まるということになります。
だからこそ、ピルを使って排卵を抑制すると、排卵による卵巣表層上皮の傷を減らすことができますから、卵巣がんも減ることになります。ただし、上述しましたように、ピルなどという不自然な方法で排卵を減らすべきでないでしょう。
では、排卵に伴う卵巣表層上皮の傷を無くすにはどうすればよいのでしょうか…。それは、修復作業が速やかに行われるように、全身の健康度や、卵巣の健康度を高めることだということになります。
では逆に、どのような場合に健康度が失われるのでしょうか…。掲載した図の右下に、牛乳の摂取量(横軸;g/日)と、卵巣がんの発症率(縦軸;女性10万人あたりの卵巣がんの発生人数)の関係を、国別にプロットしたグラフを引用しました。
日本(Japan)の部分には赤色のアンダーラインを入れておきましたが、これによると、日本人は平均として1日に150gの牛乳を飲むようです。ところが、たくさん飲む国では、1日に900g以上飲む国もあります。そして、たくさん飲む国ほど、卵巣がんの発症率も高くなっています。
「日本人は牛乳の摂取量が少ないですから…」というフレーズを見かけることがあるのですが、これはあくまで平均です。全く飲まない人も多いわけですから、飲む人はもっとたくさん飲んでいるわけです。
牛乳のがんに対する弊害は、乳がんや子宮がん、前立腺がんなどでも古くから有名ですし、その他の部位においても、やはり危険な飲料となります。このブログでも、『学校給食に牛乳が出されるのは子ども達の為ではない』にて〝牛乳の副作用〟を挙げておきましたので、必要に応じてご覧ください。
牛乳は、特にがんに対しては、非常に都合の悪いものです。また、その他の乳製品や、肉類(加工肉や赤身の肉)など、動物性食品の過剰摂取が悪いのです。どのような理屈を付けようが、様々な国で行われてきた調査結果を覆すことはできません。
排卵に伴う卵巣表層上皮の傷の修復においても、牛乳中の成分や組成が悪影響を及ぼしています。また、その後の発がんをも促進することになります。
なお、卵巣がんの罹患率を見ると、日本では女性10万人当たり約21人であると算出されていますように、かなり低率であると言ってもよいでしょう。逆に言えば、殆どの日本人女性は、比較的健全な食生活を送り、健康な体を維持していると捉えて結構でしょう。しかし、ごく一部の女性は、牛乳をたくさん飲んだり、肉類を多く食べたり、菓子類を含めた加工食品を多く食べていることでしょう。そのような人に限って、植物性の食品をあまり摂らないため、必要なミネラル、ビタミン、繊維質、ファイトケミカルが不足し、子宮や卵管や卵巣の健全性も損なっていることでしょう。もちろん、遺伝的な体質もあるのですが、やはり食生活の影響が最も大きいわけで、50歳代~60歳代で卵巣がんにかかってしまう、ということになります。
最終結論は次のようです。卵巣がんを防ぐには、日本古来の和食に徹すること、足りない栄養素はサプリメントにて補うこと、適正体重を維持すること、健康体を作ること、ということになります。