昨日の夜も、今日の夜も、ここ滋賀県の甲賀市では星空が奇麗です。更に標高が高くて、空が更に暗い地域では、更に奇麗な星空が見えることでしょう。
添付しました図(高画質PDFはこちら)の左端に引用させていただいた写真は、オリオン座と、小三ツ星の真ん中の星であるオリオン大星雲を写したものです。オリオン座のこの見え方(傾き方)だと、11月末の場合であれば午前2時頃に相当する感じで、その時間に見える方角は、ほぼ真南になります。
因みに、今晩(11月22日)の午後9時では、南東の比較的低い位置にあって、中央の三ツ星が縦に並んで見えました。そして、小さな双眼鏡で小三ツ星の真ん中の部分を見ると、周囲がぼんやりと見えるオリオン大星雲を確認することが出来ました。高性能な望遠鏡で見れば、一番下の写真のような奇麗な星雲の姿を見ることが出来るのでしょう。
そのまま見上げていくと、今度はプレアデス星団(すばる)が見えます。双眼鏡で見ると、青っぽい複数の星が集団を作っていて、幻想的で面白い光景です(これの写真は載せていません)。
これらの中で、地球に最も近いのがプレアデス星団で、光の速度で約440年かかる距離にあります。即ち、約440光年の彼方にあります。この青く見える星たちは、まだ形成の途中にあって、周囲を星間物質(ガスや塵)に包まれていますので、高性能な双眼鏡で見ると、周囲に青っぽい雲のようなものが見えます。
次に地球に近いのは、オリオン座の左上の、赤く見えるベテルギウスで、約530光年の距離にあります。赤く見える理由は、既に赤色超巨星になっていて、寿命の終わりに近づいていることを示しています。赤いのは、表面温度が低いということでもあります。
次に地球に近いのは、オリオン座の右下の、青く見えるリゲルで、約860光年の距離にあります。青く見えるのは表面温度が高いからで、太陽が約5,800K(ケルビン)、リゲルはその約2倍の約12,000Kという高温になっています。Kという単位につきましては『人類の生活に大きな影響を与える太陽磁場の成因』をご参照ください。また、質量は太陽の約23倍、光度の差で言いますと、太陽の約12万倍ということになります。とてつもなく明るい星です。推定年齢は約800万年で、太陽は既に46憶念も経っていますので、太陽位に比べるとかなり若い星であるということが出来ますが、激しく反応を起こしていますので、寿命は短いであろうとされています。
次に地球に近いのが、小三ツ星の真ん中の星に相当するオリオン大星雲で、そこまでの距離は約1,300光年です。この中心部には、トラペジウム星団と呼ばれる若い星の集まりがあって、星間ガスと塵から新しい星や惑星系が、次々と形成されている最中だということです。そのため、オリオン大星雲は「星の形成領域」、或いは「星のゆりかご」と呼ばれています。
以上の星だけでも、星の誕生の場面はオリオン大星雲で見ることができ、少し成長した段階はプレアデス星団で見ることができ、若々しく全力でエネルギーを放射している若い星の姿はリゲルで見ることができ、晩年の星の姿はベテルギウスで見ることができる、という具合になります。もう少し短く表現するならば、オリオン大星雲=星の誕生の場面、プレアデス星団=少し成長した若い星の集まり、リゲル=若くてエネルギー全開の青色超巨星、ベテルギウス=晩年の赤色超巨星、ということになります。
11月末の21時の南東の空の一角を見るだけで、星の一生の姿を肉眼で見られることになっているわけです。とても有難い話です。
次のような事実もあります。それは、距離を示した「○○光年」という単位から、例えばオリオン大星雲であれば、約1,300年前のオリオン星雲を見ていることになります。けっして、現在のオリオン大星雲を見ているわけではないということです。
1,300年前と言いますと、西暦700年代半ばであって、その頃の日本は奈良時代(710~794年) に相当します。ちょうど平城京が都で、聖武天皇や光明皇后の時代であり、東大寺で大仏の建立が進められていた頃です。そして、私たちは今、その頃のオリオン大星雲を見ていることになります。星を見るということは、その多くは遥か彼方にありますから、歴史を遡って見ていることになり、タイムトラベルをしていることになりますので、凄く面白いです。
そのようなことを思いながら星を眺めていると、添付した図の大きな表に示しましたような健康効果を得ることができます。表を見て頂けば良いのですが、下に健康効果の種類と、主な機序または要因のみを、順に羅列しておきます。
先ずは【精神面】における効果についてですが、「ストレスの軽減」を挙げることができ、それは、日常の喧騒からの離脱、視覚刺激や聴覚刺激の減少、副交感神経優位化などが、作用機序または要因になるということです。
以降、順に見ていきますが、「癒し・リラックス・集中力の向上」につきましては、星の瞬き、光の揺らぎによる向精神効果、心理的な障害からの回復、などが機序であると考えられます。
「創造力・ひらめきの向上」につきましては、星に集中することによる脳のデフォルトモードネットワーク(DMN)の疲労解消が、機序であると考えられます。
「畏敬の念獲得、謙虚さの回復、不安や緊張の緩和」につきましては、人間は広大な宇宙の中の小さな存在であることに気付き、自分たちの存在を再評価することが、機序であると考えられます。
「つながりや共生の意識向上」につきましては、皆が同じ星空の下にいて、皆が地球という宇宙船の乗組員だという感覚を得ることが、機序であると考えられます。
「充足感、好奇心の養成」につきましては、晩秋から冬にかけては空中の水蒸気量が減少し、そのために星が鮮明に見えることの感動体験が、機序であると考えられます。
次に【身体面】における効果ですが、「近視の改善、目の疲労回復」につきましては、遠方注視による毛様体の弛緩、眼軸長の短縮化、遠近調節のリセット、涙液分泌促進、などが機序であると考えられます。
「睡眠の質の改善」につきましては、暗がりによるメラトニン分泌の促進が、機序であると考えられます。
「姿勢の改善」につきましては、星を見上げることによる猫背の矯正、胸部の拡張が、機序であると考えられます。
「自律神経のバランス改善」につきましては、遠くの一点を見つめることによる鎮静、呼吸の改善が、機序であると考えられます。
「自律神経調節機能の強化」につきましては、寒冷刺激による交感神経・副交感神経の交互刺激が、機序であると考えられます。
「体力の維持、代謝の促進」につきましては、戸外に出るための歩行や軽運動が、機序であると考えられます。
なお、表には右端の欄に「引き続き期待されるメリット」を挙げておきましたので、後で結構ですから眺めておいていただければと思います。
以上のように、夜空を仰いで星を見るという行為が、多方面にわたる健康効果を発揮することが解ります。ゆっくりと寝ていることも健康に繋がるかも知れませんが、この時期ならではの澄んだ夜空を仰いで、星に思いを馳せてみましょう。因みに、「思いを馳せる」とは、過去や未来に心を飛ばすこと、見えない出来事に想像を寄せること、自分の感情を重ねて繋がりをを感じること、などを意味します(^^)
