アピゲニンは全身の老化だけでなくUV-Bによる皮膚老化をも抑制する

アピゲニンのアンチエイジング効果

 抗老化、即ちアンチエイジングを主テーマにした記事は、これが3本目になります。1本目はアンチエイジングの全貌を紹介すると共に、ポリアミンの摂取が有効であることを紹介しました。2本目はニコチンアミド(ナイアシンアミド)について、特に皮膚老化を抑制する機序について紹介しました。そして今日の3本目は、全身の老化と、UV-Bによる皮膚老化を共に抑制するために有効な物質としてアピゲニンを紹介しようと思います。

 掲載した図(高画質PDFはこちら)の左上に挙げたのは、1本目にて紹介した【老化する原因】のみを再掲したもので、今日の記事が抗老化対策において、どの部分に相当するかを再確認するためです。即ち、加齢に伴って減少または低下していくものを3種類に分けましたが、そのうちの「体内成分を生合成する能力」に該当することになります。そして、その体内成分の一つがNAD (nicotinamide adenine dinucleotide) であり、もう一つがポリアミンです。今日は、前者であるNADの減少を食い止める方法を紹介することになります。

 図の中央付近にグラフを載せましたが、年齢が進んでいくとNADが減少していく様子が描かれています。減少する理由は、それを作り出す能力が低下することと、作り出されたNADの分解が速まることの両方が関わっています。
 作り出す能力が低下することへの対策は、ニコチンアミドを補給して、それをNMN→NADへと変換する酵素の活性を高めることが有効な対策となりますので、それは既に紹介した通りです。そして今日は、生合成されたNADが分解されることを抑制してやろうという話になります。

 NADを分解する酵素はCD38(cluster of differentiation 38)というものであり、これは加齢と共に増加していくことが判っています。増加していく理由は、老化細胞から放出される炎症性のサイトカインが、マクロファージに多くのCD38を作らせてしまうからだとされています。そして、CD38が増加すると、必要以上にNADの分解が進んでしまい、NAD不足となり、細胞老化が加速される、という機序になります。
 その他、CD38は各種の免疫細胞の表面において受容体としても機能していて、気管支喘息、リンパ性白血病、多発性骨髄腫、糖尿病の腎臓、インフルエンザなどの感染時にも過剰発現していることが確認されています。もちろん、CD38は必要不可欠なものなのですが、過剰になることが種々のデメリットを生むわけですので、適度に阻害してやることは、抗老化のためだけでなく、疾患予防のためにも重要なことだと言えるわけです。
 因みに、CD38を完璧に阻害したければ、例えばダラツムマブ(Daratumumab)という抗がん剤を用いれば、それがCD38に結合して機能を喪失させます。しかし、CD38が完璧に阻害されてしまうと種々の問題が生じてきますので、加齢に伴って過剰になっていく分だけを適度に阻害してやることが大切だということになります。

 図中のグラフの右側に、「CD38 inhibitors(CD38を阻害するもの)」として、アピゲニン、ケルセチン、ルテオリン、クロマニンの4種類が挙げられていますが、今日は一番上のアピゲニンについて紹介することになります。なお、どのようにして阻害するのか…などの機序が気になる場合があると思いますが、実験系としてCD38という酵素の働きが阻害されるか否かを調べて結論を出しますので、阻害機序については推測の域を出ないため、言及を避けることにします。

 もう一つ、アピゲニンの効果として改めて採り上げたのが、UV-Bによる皮膚老化を抑制できる、という研究結果についてです。その機序につきましては、掲載した図の右端に載せておきましたが、要するに、アピゲニンは活性酸素種(ROS)の生成を抑制したり、ROSによって引き起こされるNF-κBおよび過剰なMAPKを阻害したり、UV-Bによって生じたDNA損傷の修復を促したり(NER(ヌクレオチド除去修復)遺伝子の発現を促したり)などの機序によって、皮膚の角化細胞を保護する、ということです。

 では、そのようなアピゲニンをどのようにして摂れば良いのか、という点についてですが、図の左下の表に、アピゲニンを多く含むもののランキングが示されています。
 最も多いのはセロリの種子なのですが、それから生えたセロリにも、それなりに含まれています。
 次はホウレンソウであり、これは普通に食べる葉っぱの部分に多く含まれていますので、誰もが容易に摂取することができる優れた食材だと言えます。
 その次はパセリであり、これもそのまま食べられるものですから、料理の添え物として付いてくれば、それは残さずに食べることが大切です。
 その他、含有量は多くないのですが、カモミール、アーティチョーク、タラゴン、バジル、コリアンダー、オレガノ、タイムなどのハーブ、赤ワイン、リンゴやチェリー、ブドウなどにも含まれています。
 或いは、もっと多く摂りたいという場合には、サプリメントとして何種類も発売されていますので、それを利用すれば結構だと思われます。
 以上のように、加齢とともにNADを分解するCD38という酵素が増えていきますので、上記の野菜を摂取することによって適度にCD38を阻害してやることが、全身および皮膚のアンチエイジングにとって有効だということになります。

 
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