身近な万能薬であるヨモギを活用しましょう!

身近な万能薬であるヨモギを活用しましょう!

 年末の餅つきの時期が迫ってまいりました。今年は、またヨモギをたっぷりと入れた餅を作ろうかなと思っているのですが、そのヨモギの生理的効果についてまとめてみましたので、記事にしたいと思います。
 ヨモギは一年中見られる多年生植物で、掲載した図(高画質PDFはこちら)の左端に載せた写真は、本日(12月23日)に、我が家の庭の一角で撮影したものです。特に陽だまりになっている場所では、下方の葉っぱも褐色化せずに奇麗な緑色を保っています。因みに今日も適当量を採取したのですが、それはお風呂に入れるために採取しました。これを書き終わった段階で、そのお風呂に入ろうと思っていますので、感想のレポートはまだ出来ません(^^;

 子どもの頃、手足に擦り傷をした時には、辺りを見渡してヨモギを探し、見つけたならば葉っぱを採って適当に揉みつぶし、傷の部分に当てて押さえました。血が出ていても、数分間押さえておくと血も止まり、あまり痛くも無く、その後はまた遊びに夢中になっていました。殺菌効果も強いですから、患部を水で洗うことが出来なくても、ヨモギの汁で殺菌できますので安心です。もし、近くにヨモギが生えていなかったら、一体どうしていたのだろうと思います。
 ヨモギを使う方法を誰に聞いたのかと言えば、おそらくお爺ちゃんやお婆ちゃんだと思います。昔の人は、みんなそうやって優れた民間治療をやっていました。ヨモギは、生えていない場所を探す方が難しいほど、どこにでも逞しく生えている植物です。

 では、ヨモギにはどのような成分が含まれているのか…、ということについてまとめましたので、それを図の右上に挙げておきました。一通り、ここにも羅列しておきますが、先ずは精油成分、即ち、ヨモギ独特の香りを作り出している成分についてですが、シネオール、α-ツヨン、α-テルピノール、セスキテルペン、β-カリオフィレン、ボルネオール、カンファー などです。このうち、精油成分の約半分を占めているのがシネオールであり、これがヨモギの香りの主原因になっています。
 そもそも、植物が持っている精油成分は、外敵(細菌、他の植物、昆虫、動物など)から身を守るために役立っているものです。進化の過程で偶然に出来上がった代謝産物なのですが、これを高濃度に持っている個体が生き残って子孫に継承していくことで、今のヨモギの成分構成になったのだと解釈できます。また、単品ではなくて、これらの組み合わせが相乗効果を生み出しているのだと考えられます。
 次に、その他の成分では、ケイヒ酸誘導体としてクロロゲン酸。フラボノイドとしてユーパチリン、ジャセオシジンなど。クマリン類としてウンベリフェロン、スコポレチンなど。カフェ酸誘導体としてカフェオイルキナ酸、などが主なものです。
 その他には、他の多くの植物と同様に、生きていくための基本的な成分として各種のミネラルやビタミン、繊維質を含めた炭水化物、脂質、タンパク質が含まれています。

 有効成分の考え方ですが、植物の中には強烈な生理作用を示す物質が含まれていることがあり、その典型例は毒草です。多くの場合は、ヒトに備わっている受容体に真っ先にくっ付いてしまい、ヒトはその受容体を使えなくなってしまいます。ただ、それを微量にてコントロールして使えば、薬として利用できることになります。
 一方、ヨモギには極端に強い生理作用を示す成分が高濃度に含まれていることはありません。例えば、採ったばかりの葉っぱをジューサーにでもかけて青汁にして飲んだとしても、何らかの副作用でヒトがダメージを負うことはありません。もちろん、それ以前に、ヨモギを少量にして、他のものと混ぜなければ、味的にとても飲めたものではないでしょう。要するに、安全な植物であると言えるわけです。
 「安全=効かない」と思うのは、毒草と薬の関係を知っている場合です。しかも、それは西洋医学的な捉え方をしている場合になります。ところが、ヨモギの場合は単品で強烈な生理作用を示す成分は入っていませんが、各種の成分の絶妙な存在比率が相乗効果を生むことによって非常に優れた生理作用を示す、ということになります。
 次のような例があります。例えば、何かに著効を示す生薬を持ってきて、その生薬には一体どのような凄い成分が含まれているのだろうと思い、抽出して活性成分の本体を分離および精製していきます。すると、その作業を進めていくうちに、活性が現れにくくなっていきます。即ち、一つの物質が効いているのではなくて、何種類かの成分が共存しているからこそ、強い活性を示していたことが判ってきます。ヨモギの生理活性も、このパターンになると思われます。簡単に言えば「ヨモギには〇〇〇という成分が含まれているから〇〇に効く」のではなく、「ヨモギという総体が効く」ということです。

 では、どのような生理作用を示すのかについて見ていきましょう。これにつきましては、図の右下にまとめておきましたが、ここにも羅列しておきます。
 【内服による効果】
青汁にして飲んだ場合は、抗高血圧、抗動脈硬化、抗肥満、抗糖尿病、抗アレルギー、抗高脂血症、自己免疫疾患の改善、各種ビタミン・ミネラルの補給などです。
生葉から抽出したエキスを飲んだ場合は、子宮内膜症を患っている場合の子宮内膜細胞のアポトーシス促進、不妊症や月経困難の改善です。
乾燥した葉をお茶にして飲んだ場合は、健胃、下痢止め、貧血改善、神経保護作用などです。
生薬である「艾葉(がいよう)」を内服した場合は、止血、沈痛、消炎、収斂、生理不順の改善、下痢止め、下腹部の冷え改善などです。
精油成分を内服した場合は、血液循環促進、発汗作用、解熱、鎮痛、抗炎症、健胃・整腸、喘息・気管支炎の改善などです。
 なお、よもぎ餅にして食べた場合は、あまり多く食べるわけにもいきませんから、上記のような生理的効果を、穏やかに得ることが出来る、ということになります。

【外用による効果】
生葉を外用に直接利用した場合は、止血、収斂、殺菌の効果が得られます。
「艾葉」エキスでうがいをした場合は、歯痛、のどの痛み、扁桃炎の改善、風邪の咳止めの効果が得られます。
「艾葉」エキスを湿布しとて使った場合は、ウルシ・草かぶれ、あせも、湿疹の改善効果が得られます。
浴湯料として(お風呂に入れて)用いた場合は、腰痛、神経痛、リウマチ、肩こり、冷え症、のどの痛み、あせも、肌荒れなどの改善、温熱効果、美肌効果が得られます。

【蒸気による効果】
「よもぎ蒸し」として用いた場合は、子宮や卵巣の加温、血流の改善、生理不順や生理痛の緩和、ホルモンバランスの調整、冷え性の改善、リラクゼーション効果が得られます。
 なお、「よもぎ蒸し」は図の下方にイラストを挙げておきましたように、乾燥させたヨモギの葉に水を浸して煎じ、出てきた蒸気を浴びるものです。

 以上のように、ヨモギはまさしく万能薬と言えるもので、世界の多くの地域で太古から重宝されてきました。そのような優れたものが、庭先や空き地に行けば勝手に生えている…。まさに、神が与えてくださった大きな恵みの一つだと言えます。大いに活用しましょう!!

 
執筆者
清水隆文

( stnv基礎医学研究室,当サイトの keymaster )
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