食欲を抑えたければ青色のメガネをかければ良い

食欲を抑えたければ青色のメガネをかければ良い

 先に、『肥満を防ぐためのファイトケミカル』を紹介しましたが、その中には〝食欲を抑制するファイトケミカル〟がありました。今回は、別のアプローチによって、過剰な食欲を抑える方法について見ていきたいと思います。

 私たち人類は、農耕を始める前は、狩猟採集を主とする食生活を送っていました。様々なものを食べてきましたが、やはり美味しいのは、熟した果実でした。植物のほうも、自分の種子を周囲や遠隔地まで運んでもらうために、鳥や、お猿さんに果実を食べてもらう方法を編み出しました。
 ただ、熟していない若い果実を食べられてしまうと、その内部に在る種子も未成熟であるため、地面に落下しても芽を出せません。従いまして、植物は、内部の種子が未成熟である頃には、果実が鳥やお猿さんに食べられないように工夫をしました。具体的には、味を不味くするだけでなく、渋かったり苦かったり、更には毒を含ませる種類の植物も出現しました。
 いよいよ種子が成熟すると、植物たちは、それを包んでいる果実を大いに食べてもらいたい…、とする状況が訪れます。そこで、植物たちはどうしたかと言いますと、果実に甘味や芳香を持たせ、鳥やお猿さんに好まれるようにしました。更に、その変化に気づいてもらえるように、それまで緑色であった果実の色を、赤色へと変化させるようにしたわけです。

 地球上の多くのものには〝共進化〟という現象を見ることが出来ます。植物が果実を緑色から赤色へと変化させる仕組みを獲得していったことが、果実を食べる鳥やお猿さんが、緑色から赤色へと変化していく様子をしっかりと識別する能力を高めさせることになりました。
 このことは即ち、果実を食べない草食動物や肉食動物の場合は、緑から赤への変化に対してあまり鋭敏でなくても日常生活に支障は出ませんので、その能力が高められることはありませんでした。
 掲載した図(高画質PDFはこちら)の左上に、犬とヒトにおける、色の見え方の比較を載せておきました。犬は、ヒトには見えない紫外線の領域まで見えますが、可視域の全体における色の感覚が乏しいと言えます。特に緑色から赤色までの波長については、ヒトのように鮮やかな緑色、黄色、橙色、赤色などが見えないとされています。
 犬の場合、餌であるか否かは主に嗅覚によって判断しますので、色はあまり重要ではないのだと言えます。一方、ヒトや、その祖先であるお猿さんは、果実の熟し具合をしっかりと判断できる必要がありましたので、その能力が高められたということです。

 赤色は、果実の他にも、健康な哺乳類の新鮮な肉の色でもあります。例えば、切り離されて放置された肉は、徐々に赤身を失っていきます。腐敗していく可能性もありますから、赤色なのか茶色なのかをしっかりと見極められる能力は貴重です。お猿さんは、ごくたまにしか肉を食べませんが、ヒトは狩猟採集生活にて動物の肉を多く食べてきました。赤い肉の色は、まさしく食欲を大いに高めることにもなったのだと考えられます。

 このように、果実の成熟度を見分ける必要のあった鳥やお猿さん、および、その後に誕生した人類は、緑色~黄色~橙色~赤色の色をしっかりと判別できる能力を高めたということです。また、動物の肉をも多く食べてきた人類は、赤色と茶色の識別能力をもしっかりと高めたということになります。
 因みに、犬の場合は、左上図のスペクトラムからも、赤色も茶色に見えるということですから、色で肉の新鮮さを判断できませんので、もっぱら嗅覚で判断することになります。

 ところで、赤色や、それに近い暖色系の色は、ヒトの本能として美味しい食べ物を連想させる色だということになるのですが、その逆の色は何でしょうか…?
 およそ、食べられるものには滅多に無い色として、水色~青色を挙げることが出来るでしょう。なお、青色よりも更に波長の短い青紫色~紫色のような色は、ブルベーリーやナス(茄子)のような実がありますので、あくまで〝水色~青色〟だということになります。
 このような寒色系の色をしたものは、ヒトは本能的に「これは食べ物ではないだろう」と思います。そのため、普通ならば条件反射のように始まる、だ液や消化液の分泌なども起こりません。そして、「食べたい!」という感情、即ち〝食欲〟は高まらないことになります。

 そこで、体重を減らしたいと思っているのだけれども、食欲がどうしても止まらない、と困っている人に朗報があります。それは、赤色や、赤色に近い暖色系の色を見ないことです。そして、そのための最も手軽で現実的な方法は、青色のメガネ(青色のサングラス)をかけておくことです。赤いトマトも、イチゴも、新鮮な牛肉も、全てが茶色っぽく見えるだけです。この方法ならば、誰かが隣に居たとしても、その人に迷惑をかけることはありません。
 更に効果を上げたいのであれば、照明を青色(のLED)に変更するのが良いでしょう。この場合、青色のメガネを掛けなくても大丈夫になります。補足するならば、赤色の波長の光が周囲に無ければ赤いものも赤く見えませんので、例えば黄色のLEDを照明にしたとしても、赤いものが赤く見えません。ただし、やはり全体的には、寒色系である青色のLEDのほうが全体的に食欲減退の効果が高いと言えます。赤いトマトも、イチゴも、新鮮な牛肉も、全てが灰色っぽく見えるだけで、食べる気がしなくなります。

 
スポンサーリンク
執筆者
清水隆文

( stnv基礎医学研究室,当サイトの keymaster )
世間一般では得られない、真に正しい健康/基礎医学情報を提供します。

stnv基礎医学研究室をフォローする
五感熱-光-電場-磁場
この記事をシェアする([コピー]はタイトルとURLのコピーになります)
stnv基礎医学研究室
タイトルとURLをコピーしました