肌を若返らせる方法の一つはニコチンアミドの適用

 今回は、皮膚の美容や若返りに関するお話を一つしたいと思います。内臓の老化は外から判りにくいですが、皮膚(肌)の老化は外から見てすぐにわかりますから、何よりも深刻だという人が多いかもしれません。
 皮膚が老化しているか否かは、シワ、タルミ、シミなどが指標にされることが多いと思われます。この中で、シワ(皺)やタルミ(弛み)が増える最大の原因は、皮膚を構成している様々な成分(コラーゲンやエラスチンなどの線維性タンパク質、ヒアルロン酸や尿素などの保湿成分、など)を新たに産生していく能力が低下していくことによるものです。そして、そのような成分を主に産生している細胞が線維芽細胞なのですが、これの活力が加齢に伴って低下していくことが根本的な原因であると考えられます。

 そこで、その対策として、線維芽細胞内のNADの量を高めてやろうとする方法が既に広く用いられています。NADの話は、また別の機会(全身的なアンチエイジングの話の時)にでもすることになると思いますが、老化した細胞では細胞内のNADの量が少なくなっており、その結果として、各種の代謝が回りにくくなっているのだと考えられます。
 NADは非常に大きな分子ですので、細胞外からこれを与えても細胞内には入りません。従って、その前駆物質の中で、細胞内に取り込まれ得る物質を選んで、それを外部から供給してやることになります。そして、化粧品(医薬部外品)の分野で多く採用されているのが、ニコチンアミド(化粧品分野では「ナイアシンアミド」と呼ばれることが多い)を配合する方法です。ニコチンアミドは、皮膚に適用する医薬部外品の有効成分として厚生労働省が認めていますので、今や、多くの製品に使われるようになりました。初めて聞かれる方は、「ナイアシンアミド」で検索してみてください。

 ところで、ナイアシンアミド(ニコチンアミド)を配合した皮膚化粧料を塗布した場合、それは、死細胞によって成り立っている角質層を、一体どれほどが通リ抜けて線維芽細胞にまで届くのか…?ということが懸念材料であると思われます。ただ、掲載した図(高画質PDFはこちら)の下段に示しましたように、外用の塗布にて小じわの改善効果が認められていますので、毛穴などを経由して線維芽細胞にまで届いている可能性があります。
 ただ、この分野の他の研究者らは、当然の方向性として、ニコチンアミドの脂溶性を高め、浸透しやすくしようと考えます。その結果の一つが、図の右上に掲載した「メンチル・ニコチネイト(ニコチン酸メンチル)」です。これは、ニコチン酸(ニコチンアミドの前駆物質)の分子にメントールの分子を結合させたもので、塗布することによって皮内で分解され、ニコチン酸とメントールを生じるというものです。これは開発されてからの期間がまだ短いですから、今後、広まっていくかもしれません。

 さて、私たちは、どうするのが最も良いのか…?ということになります。真皮までの浸透性を高めたニコチン酸誘導体を配合した化粧料を試してみるのも、一つの方法だと思われます。もちろん、今ではそれなりの対価を支払うことになるはずです。
 或いは、ニコチンアミド配合の化粧料でも、それなりの効果が認められているわけですから、それで充分ではないか…、という考え方もあるでしょう。また、ニコチンアミドはサプリメントとして売られていますから、そのカプセル1個の中身を、ごく普通に売られている汎用のクリームまたは乳液に混入して用いれば、同様の効果が安価で実現できることになります。
 そして、真皮には血管網が来ていますから、ニコチンアミドをサプリメントとして摂れば、体の中身からも若返ることが可能だ…、ということになります。因みに、抗老化物質として注目されたMNMは、体内にてニコチンアミドから変換される物質ですので、いきなりNMNを摂取すると、ニコチンアミドをNMNへと変換する酵素を怠けさせて、その遺伝子発現を弱めてしまうことになると考えられますので、やはりニコチンアミドを抗老化物質(の一つ)として重視するのが正解だと思われます。

 
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