がんを主テーマにした記事は、これが7本目となります。そのうち、特に有効な物質としてこれまでに紹介したのは、アブラナ科植物から得られるDIM(ジインドリルメタン)やI3C(インドール-3-カルビノール)、特に大根から得られるMTBITC(ラファサチン)、ニンニクから得られるDATS(ジアリルトリスルフィド)、ショウガ(生姜)から得られるショウガオールです。そして今日は、特にタマネギの皮(外皮)に極めて高濃度に含まれているケルセチンをご紹介します。
まず、ケルセチンの抗がん作用についてですが、掲載した図(高画質PDFはこちら)の左上にその結果の一部分を示しました。これは、マウスに膵臓がんの細胞を移植して経過を見る実験なのですが、下段がケルセチンを1%含む餌を与えていた場合、上段はケルセチンを含まない餌を与えていた場合を示しています。なお、がんを識別するために、蛍光を発するように改変したウイルスを感染させたがん細胞が用いられています。
結果は、ケルセチンを含む餌を与えた場合に、がんの増殖が抑えられていることを確認することができます。
併せて重要なことは、例えば一般的な抗がん剤であれば、がんの増殖が抑えられると共に、他の細胞の分裂も抑えられますので、それが強烈な副作用として出てくることです。しかし、ケルセチンの場合は正反対であり、他の細胞に対しては健全性が高まる方向に作用することです。この差は、まさしく雲泥の差となって現れることになります。
次に、ケルセチンの作用機序についてですが、世界の各研究機関において確認された数々の作用機序がまとめられたものを図の右下に示しておきました。実際には、種々の代謝経路に関わっている莫大な種類の因子(タンパク質)の活性変化が調べられています。その中で、図に示されているのはごく一部です。
これらの因子の活性変化の結果として、がん細胞の細胞周期が停止したり、がん細胞内のオートファジーが誘導されたり、アポトーシス(自滅)が誘導されたり、転移が抑制されたり、血管新生が阻害されたり、ということになります。
なお、ケルセチンだけでなく、非常に近い作用を示すエピガロカテキンガレート(EGCG)を併せて摂取したり、それらだけでなく、これまでに紹介した幾つもの有効成分を併せて摂ることによって、がん征圧に対して更なる著効を示すようになると考えられます。ケルセチンは、そのうちの重要な成分の一つとなります。
さて、ケルセチンをどのようにして摂るかについてですが、最も手っ取り早いのはサプリメントとして売られているケルセチンを購入して利用することです。1カプセル当たり500mgのものが一般的となっていて、一瓶あたり数千円程度で入手できます。
次に食餌から摂る方法ですが、含有率の高いものの代表は、タマネギや緑茶、その他には図の左下のグラフに示されているように、色々な野菜や果物にも含まれています。ただ、含有率が圧倒的に高いのがタマネギの皮(茶色い外皮)です。乾燥していることもありますが、それ以上に、タマネギが内部を守るために高濃度のケルセチンを外皮に蓄えているからです。タマネギにとっては抗酸化作用、抗菌作用、防虫作用を備えるためにケルセチンが有効に働いているということになるのでしょう。
タマネギの皮を使ってお茶を作っても結構かと思いますが、含まれているケルセチンの全量を得ようとするならば、粉にして全部を摂取するのが最も良いということになります。なお、粉にして売られている商品(タマネギ皮パウダー)も何種類かありますが、自宅で工夫して粉にしてみてはいかがでしょうか。