体内の遠赤外線ヒーターを増やす方法

体内の遠赤外線ヒーターを増やす方法

 先に遠赤外線や熱の話をしてきましたが、体が冷えてきたときに温める方法として、最も重要だと言えるのが、自分自身の発熱です。人体の話で「熱」の文字を使うと病的な発熱をイメージしてしまいますが、恒温動物(温血動物)として体温を維持するための最も重要な機能が〝発熱〟だということになります。なお、病的な発熱と区別するために、以降は〝熱産生〟という語を使うことにします。
 「こんな寒いのに、停電になってしまったので暖房器具が使えない」とか、「野外キャンプに来たのだけれど、暖房のための装備を全て忘れてきてしまった」などという場合、頼りになるのは自分自身が持っている熱産生機構だけになります。プラス思考をするならば、「自分の体内にも暖房装置がしっかりと装備されているじゃないですか!」ということです。

 私たちが体温を保つために持ち備えている熱産生機構には、掲載した図(高画質PDFはこちら
の左上に示しましたように、一般的には3種類に分類されています。
 ①の〝代謝による熱産生〟は、体内で起こっている膨大な種類の生化学反応の結果として生じる熱です。例えば、理科の実験の時に、水に酸化カルシウム(生石灰)を投入すると、発熱しながら水酸化カルシウム(消石灰)に変化する…などという現象を体験したはずですが、このように、化学反応の結果としてエネルギーが余剰になった場合は、その余剰エネルギーが熱として放出されることになります。体内では、例えば糖や脂肪酸などがATP分子の結合エネルギーに変換されるときに、平均的には約30%が熱として放出されます。
 ②の〝ふるえによる熱産生〟は、典型例としては体が冷えたときに起こる震えなのですが、運動することによる筋肉の収縮によって発熱します。この発熱も、元はと言えば筋肉内で起こっているエネルギー代謝によるものです。
 そして、③の〝非ふるえ熱産生〟が、今回の主題となるものです。この熱産生は、ミトコンドリアに装備されているUCP-1というタンパク質が関係するものです。詳細は、以前にupしている記事(『余ったエネルギーを熱に変換して肥満を解消する』)に記していますので、必要に応じてご覧いただければと思います。要するに、ミトコンドリアは必要に応じてUCP-1という熱産生が可能なタンパク質を多く発現させ、それを駆動することによって熱を産生するということです。そして、そのタンパク質で生じた熱は、遠赤外線の形でミトコンドリアの内部に行き渡り、ミトコンドリア全体が加熱されることになります。同時に、加熱されたミトコンドリアは周囲に遠赤外線を放って熱エネルギーを逃がしますので、細胞(褐色脂肪細胞やベージュ脂肪細胞)全体の温度が高まり、一説によると、細胞内は50℃あたりまで加熱されるのではないかということです。
 褐色脂肪細胞は、成人であっても肩甲骨の周り、脇の下、首の周り、心臓や腎臓の周りなどに分布していますので、その近くを通っている太い動脈や静脈を加熱することになります。当然のことながら、内部を通っている血液が加熱されることになり、その血液は全身を巡りますから、全身が加温されることになるわけです。
 言い換えれば、ミトコンドリアのUCP-1というタンパク質が遠赤外線ヒーターの役割をしており、血液はオイルヒーターのオイルの役割をしており、人体全体が温められているということになります。

 それならば、寒いのであれば、UCP-1をもっと増やせばよいではないか…ということになります。そして、それを実現させるためには、既に有る褐色脂肪細胞に加えて、ベージュ脂肪細胞を増やせばよい、ということになります。
 先にupしている記事にて、白色脂肪細胞をベージュ脂肪細胞へと変化させるための最も重要な条件として、〝寒冷暴露〟を採り上げました。文中には「ベージュ脂肪細胞は熱産生を主な目的にしていますから、熱産生が必要な状況を多く作ってやれば、白色脂肪細胞からベージュ脂肪細胞への変換が促進されることになります。具体例としては、涼しくなってきても薄着を続けることです。もっと積極的には、冷水浴をするなど、意図的に低温暴露することです。」と記載しました。そして今回は、その他の方法として、掲載した図の右半分に引用した内容をご紹介します。
 日常的に最も良い選択としまして、赤文字にて和訳を入れておきました〝クルクミン〟と〝L-テアニン〟の摂取をお勧めします。因みに、図中に描かれている他のものは医薬品として用いられているものですので、それなりの副作用が生じる可能性があります(詳細は割愛させていただきます)。

 クルクミンの詳細は『クルクミンから生じるテトラヒドロクルクミンの抗がん作用』に記していますが、要は、ウコン(ショウガ科ウコン属、英語名:turmeric)の根茎に比較的高濃度に含まれている黄色の成分で、カレーを黄色くしている原因物質です。また、クルクミンの含有量が多いのは「秋ウコン」であり、その含有量は5%程度となっています。
 L-テアニンは、緑茶の中でも、特に収穫前の2週間以上を遮光してから収穫される「抹茶」や「玉露」などに多く含まれるアミノ酸であり、旨味成分なのですが、太陽光が当たるとカテキンへと変化してしまいます。従いまして、遮光してから収穫される抹茶や玉露などの、少々高級なお茶をお召し上がりください。その他、テアニンには様々な健康効果が確認されていますので、お召し上がりになって損はしないと思われます。火鉢ぐらいしかない真冬の茶室で寒さをしのげるのは、テアニンによるUCP-1増加のお陰であると考えられます。

 
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