さて今回は「抗老化(アンチエイジング)」のお話なのですが、中でもかなり影響が大きいと思われる「老化細胞除去」の方法に関するお話です。加齢によって体内に老化細胞が溜まりやすくなり、それが老化を加速させますので、日ごろから老化細胞を除去するための対策をしていると、年齢を重ねても老いを感じることは少なくなるはずです。そして、これまでに私が書いてきたことの全てを実行すれば、70歳になっても50歳ぐらいにしか見えないようになります。50歳の方なら30~40歳あたりに見えることでしょう。
因みに、これまでに書いてきました記事で《抗老化-アンチエイジング》のカテゴリに分類した記事は53記事あり、これが54記事目になります。また、全体像につきましては『老化の原因と対策 ~概略編~』で述べているのですが、そこで公開しました表『抗老化(アンチエイジング)の方法』の中で、下から3段目の「老化した免疫細胞、その他細胞」の対策として挙げた「老化細胞除去効果の有る成分(ケルセチン、アグリモールB、タウリン、フィセチンなど)を摂る」のうち、今回は“アグリモールB”について紹介します。
先に述べておくのですが、“アグリモールB(Agrimol B)” は、今や知る人ぞ知る、大人気の成分になっています。そして、アグリモールBを含むであろうサプリメントが5千円以上の価格で販売されています。また、その成分を作り出す植物であるキンミズヒキ(金水引、Agrimonia pilosa var. japonica)の“お茶”も売られていますし、キンミズヒキの苗は安価で売られています。さらに、日本では道端や野山に普通に生えている植物ですので、採取してきて自分でお茶にすれば、安上りです(笑)。後で、誰もが採取できるように、キンミズヒキの特徴を紹介します。
◆「老化細胞」の概略
では、復習としまして、「老化細胞」の概略を、ごく簡単に紹介しておきたいと思います。
老化細胞とは、体内において、何らかの損傷やストレスによって本来の役割を果たせなくなり、活動を停止したにもかかわらず、組織内に残存してしまった細胞のことです。
本来であれば、このような細胞は速やかにアポトーシスによって除去されるべきなのですが、うまく処理できずに残ってしまうと、周囲に悪影響を及ぼすようになります。代表的なものが SASP(老化関連分泌表現型)と呼ばれる現象で、老化細胞がサイトカインやケモカインなどの生理活性物質を分泌し続け、慢性的な炎症を引き起こす原因となります。
老化細胞が生じる背景には、細胞が参照している“情報の変質”があります。DNA の修復ミス、エピゲノムのズレ、遺伝子発現の量とタイミングの不安定化、反応プログラムの誤作動などが積み重なることで、細胞は本来の役割を果たせなくなり、老化細胞の仲間入りをしてしまうわけです。(詳細は『老化細胞を生まれにくくするために──細胞が参照する“情報の変質”という視点から』を参照願います)
従いまして、老化細胞が生まれ難い環境を実現すると共に、老化細胞が生じたら速やかに除去することが、抗老化の基本的な視点になります。
◆ アグリモールBとケルセチンの比較
老化細胞を除去するための植物由来成分としましては、先に紹介しましたケルセチン(クェルセチン;quercetin;参照:『長寿のハダカデバネズミも老化細胞を完璧に除去していた』)が代表的なものです。ケルセチンは、老化細胞に対して比較的強いアポトーシス誘導を示し、老化細胞を「積極的に除去する」タイプのセノリティック(老化細胞を減らす作用)物質として知られています。がん細胞にも作用するほど力が強いですので、老化細胞を効率よく減らしたい場合には非常に有用な成分です。
一方、キンミズヒキに含まれるアグリモールBは、同じ植物由来のセノリティックでありながら、ケルセチンとは少し異なる特徴を持っています。アグリモールBは、老化細胞の弱点である代謝ストレスを穏やかに増大させることで、老化細胞だけが生存しにくい環境をつくり出す「穏やかなセノリティック」と考えられます。即ち、強いアポトーシス誘導ではなく、老化細胞の表現型(SA‑β‑Gal陽性)を弱めたり、老化免疫細胞の割合を減らしたりする方向に働くため、特に老化の初期段階にある細胞に作用する可能性があります。
上記を整理すると、ケルセチンは“老化細胞を積極的に除去する成分”、アグリモールBは“老化細胞が生存しにくい環境をつくり出す成分”という違いがあります。どちらも老化細胞を減らすという目的は同じですが、作用の仕方が少し異なりますので、組み合わせることによって、より広い範囲の老化細胞に対応できる可能性があるわけです。
◆ アグリモールBの構造的な特徴
アグリモールBは、ポリフェノールに分類される物質なのですが、他の植物に広く見られるポリフェノールに比べると次のような特徴があります。それは、複数の芳香環がベンジル結合で連結された大きな構造を持ち、タンニン類やエラグタンニンに近い性質を示すことです。
なお、キンミズヒキには、アグリモールA・B・Cといった一群の成分が含まれていて、これらはまとめて「アグリモール類」と呼ばれています。
そして、その構造の特徴が、老化細胞に対する穏やかな作用に関係している可能性があるのだと考えられます。
◆ 昔から薬草として用いられていた
キンミズヒキは、古くから「仙鶴草(せんかくそう)」として、民間療法で用いられてきました。その場合に期待されていた効能は、下痢止め、止血、抗炎症などです。
葉や花穂を煎じて飲むと、腸の働きを整えるとされ、軽い腹部の不調に使われることが多かったようです。また、傷口に外用として当てると、出血を抑えたり、炎症を和らげる効果が期待されていました。
このような、いわば経験的な効能は、アグリモール類を含めた各種のポリフェノールの効果であると考えられます。
◆ キンミズヒキの特徴と見分け方(採集できるように)
キンミズヒキは、日当たりの良い道端、林の縁、河川敷、田んぼのあぜ道、都会であっても公園や空き地で見つかります。日本の気候に適応しているため、特殊な環境条件を必要としません。
背丈は 30~80cm 程度で、細い茎がすっと立ち上がり、その先に黄色い小さな花(花径:6〜11mm、5弁花)が穂状に一列に並んで咲く“穂状の花”が最大の特徴です。花期は、おおよそ 7〜10 月で、最も多く見られるのは 8〜9 月です。周囲の草よりも細く、ほっそりとした姿で立ち上がるため、群生していると黄色い細い穂が点々と並んで見えます。
花が終わると、その部分に果実(花床筒に包まれている)が並んでつきます。花床筒の長さは5~6 mm、径4~5 mmです。また、花床筒の周囲には長さ約3 mmのかぎ状の刺があり、衣服にくっつきやすい性質があります。散策中にズボンや靴下に付いて帰ってくることがあり、これもキンミズヒキの分かりやすい特徴です。
葉はギザギザのある奇数羽状複葉で、5・7・9・11個の大小不ぞろいの小葉からなります。小葉は菱状長楕円形から菱状倒卵形で、長さ3~6 cm、幅2 cmほどで、先端がとがり、葉の縁には粗い歯牙状の鋸歯があります。また、葉の表面には細かい毛がありますので、他の草と比べて質感が分かりやすい植物です。
なお、よく似た名前のものに「ミズヒキ(Persicaria filiformis)」や「ヒメキンミズヒキ(Agrimonia nipponica)」があります。
前者の「ミズヒキ」はタデ科の植物であって、キンミズヒキはバラ科ですので、全く種類の違う植物です。
後者の「ヒメキンミズヒキ」はバラ科で、キンミズヒキの仲間です。ヒメキンミズヒキの特徴は、小葉の枚数が3~5枚と少なめで、葉の先端が丸みを帯びています。花も小さく花径は5〜7mmです。果実(花床筒)も小さくて、刺も少なくて短いです。生えている場所も、“陰地性”のため、山地の林下や渓流沿いなどに限って見られます。これにアグリモールBが含まれるか否かは、誰も調べていませんので不明です。まぁ、生育数も少ないですから、見つけても大切に見守ってあげましょう(笑)
◆ アグリモールBを含む部位
アグリモールBは、キンミズヒキの地上部に広く含まれていて、特に花穂(かすい)と葉に多く含まれているとされています。薬草として利用されてきた歴史でも、花穂と葉を中心に煎じてお茶にする方法が一般的であり、民間療法の知識とも一致します。茎にも成分は含まれていますが、効率を考えると花穂と葉を採取するのが適しています。
キンミズヒキは多年草で、季節によって成分量が変化します。一般に、花が咲いている時期の地上部が最も生理活性物質を豊富に含むため、アグリモールBを目的とする場合には、この時期の花穂と葉を中心に採取するのが良いと考えられます。乾燥させてお茶にする場合にも、花穂と葉は扱いやすく、香りも残りやすい部位です。
採取する際には、花穂や葉を中心に摘み取れば十分です。乾燥させてお茶にする場合には、風通しの良い場所で陰干しにすると香りが残りやすくなります。多年草ですので、根を残しておけば翌年も同じ場所に生えてきます。
なお、苗も市販されていますので、日当たり良好で、水はけの良い鉢を用意すれば、家庭でも簡単に栽培できます。
◆ 採取の最適時期
キンミズヒキの採取に適した時期は、7月~10月頃の開花期です。特にお勧めなのは、8月~9月の盛夏から初秋です。花が最も多く、葉も厚みがあり、採取量を確保しやすい時期です。
秋が深まると花が終わり、穂に実がつき始めますが、この段階でも葉は利用できます。ただ、花穂の成分量は開花期のほうが豊富ですので、アグリモールBを目的とする場合には、できるだけ開花期に採取するのが良いでしょう。
多年草ですので、根を残しておけば翌年も同じ場所に生えてきます。採取は必要な量だけにとどめ、周囲の株を残すようにすると、毎年安定して採取できるようになります。
◆ キンミズヒキ茶の作り方
キンミズヒキは、花穂と葉を中心に乾燥させることで、手軽にお茶として利用できます。採取したら、まず軽く水洗いし、風通しの良い場所で陰干しにすると、香りが残りやすく、成分の変質も抑えられます。直射日光に当てると色が抜けやすく、植物成分が変化することがありますので、陰干しが適しています。
乾燥の目安は、葉が指で軽く折れる程度まで水分が抜けた状態です。完全に乾いたら、保存用の瓶や袋に入れておけば、数か月は問題なく使えます。お茶として飲む場合には、ひとつまみ(1~2g 程度)を急須に入れ、熱湯を注いで 5~10 分ほど蒸らすと、ほどよい香りが出ます。味はクセが少なく、やや草木の香りがある程度ですので、飲みやすいお茶です。
花穂と葉の両方を使うと香りが安定し、成分のバランスも良くなります。葉だけでも作れますが、花穂が入ると風味がやわらかくなります。なお、煮出す方法でも作れますが、長時間の加熱は成分の変化を招く可能性がありますので、熱湯を注いで蒸らす方法が扱いやすく、家庭向きです。
また、キンミズヒキは毒性の報告がない安全な植物ですので、乾燥させて粉末にして利用しても問題ありません。粉末化すると細胞壁が壊れ、アグリモール類の抽出効率が上がるため、お茶としても、料理に混ぜても扱いやすくなります。
◆ おわりに
以上のように、身近な植物であるキンミズヒキに含まれるアグリモールBは、老化細胞を早い段階で穏やかに除去できる成分であり、日常生活に取り入れやすいことが大きな利点です。これまで紹介してきました各種の抗老化対策と組み合わせることによって、アンチエイジングが一層強化されることになるはずです。自然の恵みを上手に活用しながら、いつまでも若い心身を目指しましょう。
