アンチエイジングの全貌とポリアミンについて

 抗老化、即ちアンチエイジングについても、少しずつお話を進めて行きたいと思います。このテーマの最大の目的は、見た目の若さを保つことも一つだと言えますが、それよりも、様々な病気を防ぐことにあると言えます。若いうちは比較的、病気になり難いですが、高齢になるにつれて様々な病気に罹りやすくなります。従いまして、病気の最大の原因は老化であると言えるわけですし、老化を防ぐことが出来れば、病気をも防ぐことが可能になる、ということになります。

 人間は誰かに助けてもらいながら生き永らえることも出来るでしょうが、野生動物の場合は過酷です。老化して体の機能が低下すると、草食動物は肉食動物から逃れることが難しくなり、肉食動物の餌食になります。一方、肉食動物は、老化して体の機能が低下すると、獲物を獲る能力が低下して飢え死にすることになります。即ち、野生動物にとって、老化は死を意味することになります。

 現代の日本人は、過保護にされていると言えるでしょう。世界の長寿村と呼ばれる地域に暮らす100歳超の高齢者は、若い人たちと同様に活動していることが殆どです。例えば、バリアフリーなどという考え方とは正反対に、100歳超でも重い荷物を背負いながら大きな段差や斜面を昇り降りしています。日ごろ使っている心身の機能は衰え難いようになっているわけです。現代の日本の住環境のように、世界の長寿村にバリアフリーを導入すれば、彼らの寿命は間違いなく短くなることでしょう。

 また、加齢と老化は別物であって、加齢しても老化しない例は、ヒト以外の動物に見られることがあります。そのような動物はアンチエイジングのための研究材料になっており、大きなヒントを与えてくれています。追々、必要に応じて紹介していこうと思っていますが、加齢すれば老化するのが当たり前であるという先入観を払拭していただければ結構かと思います。

 さて、掲載した図は、本日作成したものなのですが、一度に全てをお話しすることは出来ませんので、今日はポリアミンの話に絞って簡単に紹介したいと思います。併せて、ポリアミンの話は、抗老化という大きなテーマの中の、この部分に該当する話なのだと、立ち位置を確認していただければ結構です。

 現象として、老化が進んでいる人の体内のポリアミン量が明らかに減少していることが、幾つもの研究結果によって明らかになっています。ポリアミンというのは総称であって、具体的には主にスペルミン(精液中に極めて多い)とスペルミジンです。本来は、体内にて生合成されるはずのものなのですが、合成能力の個人差も多く、加齢に伴って明らかな減少を示します。その現象が、老化という現象を加速させていることが明らかになっています。

 ポリアミンの人体における役割は、Web検索していただけば分かりますように(ここでは詳細を割愛しますが)、非常に多くあって、それらの総合的結果が健康寿命延長だということになります。例えば、老化の原因の大きな一つである慢性炎症を抑制すること、DNA損傷を抑制すること、不良タンパク質のリサイクルを進めるためのオートファジーを促進すること、粘膜等のバリア機能を高めること、老化したT細胞の機能を回復させること、高齢者の認知機能を高めること、などなど、多彩です。

 もう一つ言えることは、前回にお話ししましたタウリンのように、私たちは体外から摂取するポリアミンに、必要量の何割かを依存している可能性が高いと考えられることです。その大きな原因になっているのが、ポリアミンを多く含む食品を昔から食べてきたことです。そして、その代表的な食品は、大豆を微生物が発酵した結果として出来上がる納豆です。ポリアミンは大豆そのものにも多いのですが、納豆菌などの微生物が作り出す量も非常に多いものですから、納豆は両者によるポリアミンが足されていることになります。

 納豆などからポリアミンを補給することは、抗老化を実現するための幾つもの方法の中の一つですが、これは補給すべきものの五本の指に入る、有効性が非常に高いものですから、納豆をあまり食べていないという人は、明日からでもメニューの一つに加えていただければと思います。

 
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