肥満は様々な病気のリスクを高めますので、肥満にならないことが大切です。また、外見は太っていなくても内臓周囲に多くの脂肪が付いていると、同じく病気のリスクを高めることになりますので、早めに解消しておく必要があります。
掲載しました図(高画質PDFはこちら)は、抗肥満作用を示すファイトケミカル(植物成分)がまとめられたものです。抗肥満作用の機序ごとに、それを実現する有効なファイトケミカルが示されています。そして、その機序として、食欲の抑制、炭水化物と脂質の吸収減少、脂質代謝の調節、熱発生の促進、脂肪生成の阻害、肥満誘発性炎症の抑制、腸内細菌叢の調節、という7項目が挙げられています。
それぞれの機序を紹介することも大切なのですが、とにかく結論を知りたいと思う方のほうが多いと思われますので、その結論を述べることにします。
掲載した図の左端にまとめておいたのですが、日本の家庭において誰もが比較的容易に入手できるもののみを挙げてみました。これらを摂取することによって、図に描かれている7種類の機序の全てを網羅することが可能になります。
それは、食物繊維やスルフォラファンを多く含む〝ブロッコリースプラウト〟、レジスタントスターチを多く含む〝冷えた玄米ご飯〟、ポリフェノールのうちのフラボノイドであるケルセチンやカテキンを多く含む〝緑茶〟、イソフラボンを多く含む〝大豆〟、ヘスペリジンを多く含む〝みかん(特に皮の内側の白い部分)〟、アントシアニンを多く含む〝ナス、ブドウ、ブルーベリー〟、リグナンを多く含む〝ゴマ〟、クルクミンを多く含む〝ウコン〟、フェノール酸のうちのクロロゲン酸を多く含む〝コーヒー〟、アルカロイドのうちのカフェインを多く含む〝緑茶、コーヒー〟、カプサイシンを多く含む〝唐辛子〟、タンニンを多く含む〝茶、コーヒー〟、有機酸である〝酢酸、クエン酸、リンゴ酸〟などとなります。
上記のものは、図中において赤色の文字で示しておきましたので、後から眺めて頂ければ結構です。
では、若干の補足をしておくことにします。7種類の機序にて働く各々のファイトケミカルを図中で確認していただくと、どの機序の場合にも登場するファイトケミカルがあります。例えばフラボノイドがその典型例です。
このことは、フラボノイドを摂っておけば、7種類の機序によって多面的に肥満を防いでくれる、ということになります。
そして、フラボノイドといいますのは、その分子構造としてフラバンという基礎骨格を持つ物質の総称であって、それに該当するのは、この図におきましてはケルセチン、カテキン、イソフラボン、ヘスペリジン、アントシアニンです。また、そられを多く含む食材の代表例として挙げたのが、緑茶、大豆、みかん、ナス、ブドウ、ブルーベリーだということです。
次に、7種類の機序の多くに登場する物質として、原図中にはポリフェノールが挙げられています。ただ、引用させていただいて文句を言うのは良くないのですが、ポリフェノールというのは、上述のフラボノイドを含む、更に上位概念の物質の総称です。例えば、フラボノイドもポリフェノールですし、その下に挙げていますリグナン、クルクミン、フェノール酸もポリフェノールです。従いまして、原図に小サイズの黒文字で示されている物質名は、物質の分類基準が統一されていないばかりか、重複しているものが沢山あるということです。結局、左端に私がまとめた内容を見て頂くのが最も適切です。
なぜ敢えてこのことを採り上げたのかと言いますと、巷で頻繁に見られる不適切な記述だからです。例えば、「アントシアニンやフラボノイドやポリフェノールは体に良い」という文章があったとします。一般の読者の方は、そのような3種類の物質が良いのだ…、と思うわけです。しかし実際は、アントシアニンはフラボノイドであり、フラボノイドはポリフェノールです。即ち、その3種類ともがポリフェノールなのであって、読者の誤解を招いてしまう劣悪な記載だということになります。科学的な論文でさえ、このようなお粗末な記載が見られるわけです。
では、その他の補足事項に移ります。赤文字で挙げておきました食材は、日本の一般家庭において容易に入手できる代表的なものを選んだ結果なのですが、もちろん、それだけに限定されるものではありません。
例えば、ケルセチンは当研究室のブログ内では登場回数が非常に多いファイトケミカルです。この図では緑茶だけを挙げておいたのですが、その他には、タマネギの皮(特に外側の茶色い皮)、ドクダミ、ネトル(セイヨウイラクサ)、松葉にも多く含まれていますし、単品にしたサプリメントもありますので、入手しやすいものをご利用になれば結構です。
同様のことが他のファイトケミカルにも言えるわけであって、この図にて赤文字で挙げた食材は、最も代表的な例だと解釈して頂ければと思います。
その他の補足事項ですが、今回の記事は、肥満を防ぐための方法の一つとしてファイトケミカルを利用するのが有効だというお話です。この中には、食欲を抑えるファイトケミカルも入っているわけですが、消費カロリーよりも摂取カロリーの方が多い状態を続ければ、やはり太ってしまうことでしょう。従いまして、ファイトケミカルだけに頼るのではなく、生活習慣全体に気を配っていただければと思います。