運動と音楽で脳由来神経栄養因子(BDNF)を増やそう

脳由来神経栄養因子(BDNF; Brain-derived neurotrophic factor) を増やして脳を発達させる。

 子どもの頃だからこそ、やっておくべきことが幾つもありますが、そのうちの一つは先にupしました『おカネで買えない大切なもの』で述べましたように〝心の豊かさ〟を養う活動です。その記事の中で少し触れましたが、入力の無かったニューロンのシナプス(他のニューロンとの接続部分)は〝刈り込み〟の対象になり、一度刈り込まれてしまうと、それを復活させることに困難を伴うことです。この仕組みは、大人になったときに必要になるであろう神経回路のみを残して強化し、それ以外を捨てることによって情報処理の効率化を図るためです。因みに、この仕組みは〝三つ子の魂百まで〟といわれる現象を細胞レベルで見たものとなります(ご参考;『脳は思い通りに発達させることが出来る』)。

 シナプスの刈り込みに遭わないようにするためには、そのシナプスに信号を流し続けることが必要です。表現を変えるならば、将来的に残したい能力を使い続けることだということになります。
 もともと、シナプスの数が最大となる2~3歳の頃は、それこそ無限の可能性を秘めた脳を持っています。その後、入力のしばらく無かった、即ち、使われないと判断されたニューロンおよびシナプスが、どんどんと数を減らしていくことになります。
 逆に、どんどん使ってやれば、ニューロンは軸索(いわゆる「神経線維」)の本数を増やしたり伸ばしたりし、他のニューロンとの接続部分であるシナプスの数や結合強度(結合面の面積)も増やされ、一度に大きな信号を伝えることが可能になります。

 大脳をより高度に発達させるためには、もちろん様々な学習をしなければならないのですが、ニューロンの成長やシナプスの強化のために〝脳由来神経栄養因子(BDNF)〟というタンパク質が使われていて、これの分泌量を増やす、というアプローチも有効になることです。
 DBNFは、脳内の様々な細胞、即ちニューロン、アストロサイト、ミクログリアなどによって産生・分泌されるタンパク質です。これは全身を巡る血液中にまで出てきますので、脳内のニューロンには漏れなく行き渡ることになります。BDNFの役割をもう少し詳しく言うならば、ニューロンの成長・成熟・生存を助け、シナプスの部分には特に高濃度に存在してシナプスの強化に働いている、ということになります。
 従いまして、子どもたちを含め、私たちが学習して新しいことを学ぶとき、BDNFが比較的高濃度に存在していると、ニューロンの成長やシナプスの結合が強化されやすく、即ち学習効果が高まることになるわけです。

 「一生懸命に勉強しているのに成果が出ない…」という場合、BDNFの産生量が少なくて濃度が低いことを原因として挙げることが出来ます。では、どうすればBDNF濃度を挙げられるのかと言えば、〝運動〟と〝音楽活動〟です。
 対象を小学生に限定するならば、運動する場合のポイントとして次のことを挙げることが出来ます。掲載した図(高画質PDFはこちら)にも書き込みましたが、小学生の場合は特に関節部分の骨や軟骨が軟らかいですから、大きな負荷を掛けないことが必須条件になります。また、同じ動作の繰り返しが必要な運動には回数制限や時間制限を設けなければなりません。その上で、出来る限り様々な種目、様々なポジション、様々な動作を伴う運動を多く取り入れることです。また、小学生の時期は体の使い方の基本を習得するための絶好の機会ですから、競技結果よりも動作やフォームの習得・改善に力を入れることが将来につながることになります。
 音楽をする場合のポイントは、自分で楽器を演奏することです。上手である必要はありません。楽器の演奏が有効である理由は、リズムを取りながら頭脳と体や指の動きを連動させなければならず、ヒト以外の類人猿には到底マネのできない高度な作業だからです。また、生楽器から発せられる可聴音や超高周波音が、脳の発達を底上げしてくれることも大変重要な理由になります。
 また、音楽と運動が連動するものとしてダンスを挙げることができます。自分で楽器を演奏するわけではないですが、運動だけの効果よりは、音楽が加わった分だけ脳への刺激量が増すことになり、これはBDNFの産生・分泌量増加にとって大いに有効となります。

 以上のように、「一生懸命に勉強しているのに成果が出ない…」という場合、運動・音楽・楽器演奏の時間を増やすようにしてみてください。もちろん、脳発達の決定的な刺激は学習ですから、それは怠らないようにしていただければと思います。

 
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