糖尿病はマグネシウム補給で予防および治療ができる

糖尿病はマグネシウム補給で予防できる

 医療機関において〝糖尿病です〟と診断された人は、あなたの身の周りにも複数いらっしゃることでしょう。そして大抵は、何らかの薬を処方されて飲んでいらっしゃるはずです。進行している場合は、インスリン製剤を注射されている場合もあるでしょう。
 或いは〝糖尿病予備軍(境界型糖尿病)〟だと診断された人もいらっしゃるでしょうが、その人も何らかの薬を処方されて飲んでいらっしゃることでしょう。しかし、「マグネシウムを補給してください」と言われた人は殆どいらっしゃらないと思われます。何故なら、医療者側は、糖尿病を本当に治すつもりが無いからです。

 マグネシウムと糖尿病の関係は、数十年以上も前から明らかになっているのですが、医療現場には届きません。その最大の理由は、血糖値を下げるための様々な機序ごとに薬を用意できますので、糖尿病が大手製薬企業の重要な市場になっているからです。医師も、定番となる薬が存在しているからには、それを利用することが、誰からも文句を言われない方法になります。だからこそ、現場の医師にマグネシウム補給を勧められることは今後も無いでしょう。

 現代の糖尿病治療が、マグネシウム不足を助長することによって、糖尿病を更に進行させてしまっているケースもあります。例えば、糖尿病患者さんの場合は高血圧や心不全を抱えていることが多いですので、その場合に処方される利尿薬がマグネシウム排泄量を増やしてしまっているケースです。
 或いは、糖尿病を改善させるために医療者側から勧められる〝糖尿病治療食〟がマグネシウム不足であることが多く、これによっても糖尿病が進行することになります。
 或いは、胃酸の分泌を抑えるために処方されたプロトンポンプ阻害薬がマグネシウムの吸収を抑えてしまっていたり、その他の医薬品や酒などがマグネシウムの排泄量を増やしてしまっている場合もあります。

 もう一つ、見逃されがちなケースですが、血中マグネシウム濃度(血清マグネシウム濃度)を測定しても、基準範囲下限ぎりぎりに収まってしまっている場合があり、低マグネシウム血症とは言えないため、マグネシウム補給が勧められないことです。しかし問題は、血中ではなく細胞内のマグネシウム濃度なのであり、深刻な状態にまで低下していることが多いわけです。
 なお、細胞内マグネシウム濃度に着目すべきであることにつきましては、『普通に食べているだけではMg欠乏症になる可能性が高い』にて書いていますので、必要に応じてご覧ください。

 では、マグネシウム不足がどのような機序にて糖尿病(2型糖尿病)を引き起こすのかについて見ていきましょう。
 掲載した図(高画質PDFはこちら)の左上は、膵臓とマグネシウムとの関係が示されたものです。見るべきポイントについては図中に文章化しておいたのですが、それは次のようです。
 膵臓(のβ細胞)では、GLUT-2と呼ばれるグルコーストランスポーターによって、グルコースが細胞内に取り込まれます。取り込まれたグルコースは、解糖系やクエン酸回路(クレブス回路)に入ってATP産生に用いられるのですが、これらの多くの段階でマグネシウム(Mg2+)が各種酵素の補因子として使われています。そして、産生されたATPの濃度が高まると、細胞膜にあるカリウムATP(KATP)チャネルが閉じられます。これが閉じられると、細胞膜の電位が変化してカルシウム(Ca2+)チャネルが開き、カルシウムが流入します。細胞内のカルシウム濃度の高まりが刺激となって、インスリンの前駆物質(プロインスリン)の産生量が増やされ、インスリン顆粒中にてインスリンへと分解され、細胞外に放出されることになります。なお、マグネシウムはGLUT-2の正常な発現調節にも関わっている可能性も示唆されています。
 以上のような仕組みになっていますので、マグネシウムが不足した場合には、膵臓β細胞における解糖系やクエン酸回路がうまく回らないことによって、充分量のATPが産生できなくなります。そのため、カリウムATPチャネルが開いたままとなり、それによってカルシウムチャネルが開かなくなり、その結果として、インスリン分泌不足が生じる、ということです。

 もう一つ、肝臓とマグネシウム不足との関係が示されたのが右下の図です。同じく図中にポイントを文章化しておきましたが、それは次のようです。
 肝細胞に備わっているインスリン受容体や、GLUT-4と呼ばれるグルコーストランスポーターの配備は、マグネシウムによって促されるようになっています。また、高血糖になった場合の余剰のグルコースを用いたグリコーゲン合成は、マグネシウムによって促されると共に、アミノ酸やグリセロールからの糖新生は、マグネシウムによって抑制される仕組みになっています。
 そのため、マグネシウムが不足した場合には、インスリン受容体の減少によるインスリン抵抗性が生じたり、高まってきた糖濃度を肝細胞が正しく検出できなかったり、高血糖になった時にグリコーゲンへの変換ができなかったり、糖新生にブレーキが掛からなくなったりします。結局、マグネシウム不足によって、インスリン抵抗性と高血糖の持続が引き起こされることになり、一言で言えば、マグネシウム不足は血糖値コントロール能を失わせる、ということになります。

 糖尿病の罹患率については遺伝的な要素もあるのですが、そればっかりは後天的に変えることは出来ません。私たちにできることは、ヒトとしての適切な食餌を摂り続けることです。うっかりと、欲望に任せて不適切な食餌を繰り返し摂って糖尿病になったからと言って、それを医薬品で治そうとしても無駄です。医薬品では絶対に治りません。治す方法は唯一、原因となった不適切な食餌を改めることです。今回の場合は、特に不足しているマグネシウムを補うことを強調しておきます。

 
執筆者
清水隆文

( stnv基礎医学研究室,当サイトの keymaster )
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