強い動電場に身を置くことは必ずしも悪くはない

動電場の効果

 最近、このブログでは電気や磁気と体に関することについて書いていますが、今日の記事もその一環です。そこで、先ずは、ちょっと整理するところから始めたいと思います。何故なら「電気とか磁気とか電磁波とか、そういう人工的なものはみんな体に悪いに決まってるでしょ!!」と悟っている人がいらっしゃるような気がしますので、それを解消したいことが一つです。他には、この手の分野に関わっていない人からすると、やはり、ややこしい分野なのではないのかなと思いますので、今日の話がどれに該当するのかを確認しやすくするするためです。

 掲載した図(高画質PDFはこちら)の左上に、分類のようなものを描いてみました。一番上にもってきたのは〝磁場〟です。工学分野ではこれを〝磁界〟と表現しますが、同じものを指しています。そして、これを〝静磁場〟と〝動磁場〟に分けました。
 〝静磁場〟とは、例えば地磁気がこれにあたります。N極からS極へと描かれている何本もの曲線を磁力線と呼びますが、それには方向性があって、その方向が頻繁に逆転することの無い磁場を〝静磁場〟と呼びます。なお、方向が変わらず強弱のみが変動する場合をどのように扱うかですが、基本的に強弱のみが変動する場合は〝静磁場の強弱が変動する〟というふうに解釈します。
 他の例としては、磁石や電磁石の周囲にできる磁場も〝静磁場〟になります。先に磁気ネックレスの話をしましたが、これは〝静磁場〟によって効果が生じたのだということになります。
 或いは、電流が流れている電線の周囲にも磁場が出来ます。これは一見不思議なことのように思われますが、電気と磁気は表裏一体のような関係になっていて、この世の理(ことわり)の一つですのでどうしようもありません。「そういうものなんだ…」と納得してしまわないと収拾がつきません。この磁場をもっと強くするために、電線をコイル状に巻いて電流を流すと、いわゆる電磁石が出来上がります。

 次に、〝動磁場〟についてですが、磁力線の方向が交互に入れ替わる磁場が〝動磁場〟です。例としましては、磁石そのものが回転するなどして、その周囲のどこか一点における磁力線の方向が入れ替わることになる機器類では〝動磁場〟が生じていることになります。
 他の例としましては、家庭に在る電源コンセントまで伸びている電線に交流電流が流れた場合、その電線の周囲に生じている磁場の磁力線の向きが1秒間に50回または60回の頻度で入れ替わりますから、これも〝動磁場〟だということになります。
 因みに、掲載した図の左下に挙げておきましたが、交流電流によって〝動磁場〟が生じると、同時に〝動電場〟が生じ、それらの変化は空間を伝播していき、いわゆる〝電磁波〟を生じることになります。なお、今日のメインは電磁波の話ではありません。

 では、〝電場〟の話に移ります。〝電界〟も同じ意味になります。これを分類すると〝静電場〟と〝動電場〟になります。
 〝静電場〟の例としましては、いわゆる静電気によって生じるものがその一例です。先に『人体のアーシングについて』にて紹介しましたが、正(+)と負(-)が頻繁に入れ替わることの無い電場のことを指します。
 他の例としましては、乾電池の周囲にも〝静電場〟が形成されていますし、乾電池に繋いだ電線の内部や周囲、及びそれに繋がっている電極同士の間にも〝静電場〟が生じています。この場合、直流電流ですので電気力線の向きが変化しませんので〝静電場〟だということになります。
 もう一つ、先に『静電場を細かく変化させて体内の水分子を揺らせる』の記事にて紹介しましましたように、〝静電場〟であっても、その強弱またはON/OFFを繰り返せば「動き」が有ると言えるわけですが、これは〝静電場の強弱が変動する〟というふうに解釈します。

 さて、今日のメインテーマになります〝動電場〟についてですが、最も典型的な例は、図に示しましたように、電極板に交流電源を繋いだときに電極板の間(及びその周囲)に形成されるのが〝動電場〟です。そして、最も着目しておくべきことは、電流が流れていないことです。もちろん、電流が流れていても〝動電場〟は形成されたままですが、電流が流れてしまうと〝磁場(動磁場)〟も形成されてしまい、結果として〝電磁波〟が発生してしまいます。なお、電磁波については別に記事として作成しておかなければならないのですが、今日のところは割愛します。
 〝動電場〟の身近な例としましては、交流電源に繋がっている電線の周囲に生じているものを挙げることが出来ます。そして、その先に繋がっている電気器具のスイッチをOFFの状態にしているときに〝動電場〟のみが生じていることになります。一方、電気製品のスイッチを入れてしまうと電線に交流電流が流れて〝動磁場〟も生じ、両者によって〝電磁波〟も生じることになります。

 電流を流さずに、電極にて〝動電場〟のみを発生させ、その中にマウスなどの動物を置いたとき、どのような生理的反応を示すのかが実験された結果の一部を、図の右下に示しました。マウスが置けるぐらいの距離を確保しながら、有効となる強さの〝動電場〟を確保するために非常に高い電圧(10kV/m)が掛けられているのですが、適正な強さを求めるために事前に多数の実験が行われた結果としてこの電圧が用いられています。
 ポイントのみ紹介しますが、この実験用のマウスを筒に閉じ込めると、心身のストレスによってグルココルチコイド(コルチゾール、コルチコステロン、コルチゾンなど)の濃度が高まっていきます。しかし、〝動電場〟を掛けておくと、図の右下のグラフに示されているように、グルココルチコイド濃度の上昇が抑えられることが明らかになりました。なお、この実験では関東以北で用いられている50Hzの〝動電場〟になっていますが、60Hzでも同様の効果が得られるということです。
 一連の実験結果も合わせると、電源周波数である50Hzや60Hzあたりの低周波の〝動電場(低周波交流電場)〟は、ストレスが掛かる場面で暴露すると、ストレスが軽減されるということです。

 また別に機会にと思っているのですが、ショウジョウバエに低周波交流電場を与えたとき、寿命が20%伸びたとする報告もあり、その現象に主に関与する遺伝子も特定されました。
 このようなことも合わせると、現代の家庭に張り巡らされている交流電源の電線が作り出す低周波交流電場は、一概に悪いとは言えないことになります。そして、昔に比べて現代人の寿命が延びた一因である可能性もある、ということにもなります。

 
執筆者
清水隆文

( stnv基礎医学研究室,当サイトの keymaster )
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