人体のアーシングについて

人体のアーシングについて

 今回は、体に生じる電圧について見ていきたいと思います。電気関係のお仕事や学問をしている人と、そうでない人との知識や捉え方の差が非常に大きいのがこの分野だと思われますが、後者に相当する人であっても理解しやすいようにお話を進めて行きたいと思います。
 また、人体をアーシングするという考え方が健康分野にも存在していて、様々なアーシング関連商品が売られているわけですが、その効果についても様々な言われ方がされています。一体何が本当で、何が嘘なのかも気になるところでしょう。従いまして、それを一度整理しておく必要もあると思われます。

 先ず、〝アース〟の基本から簡単に紹介します。これは〝接地〟という日本語が、その意味を最も適切に表現しています。
 例えば、私たちは日常的に電気製品を利用していますが、家庭のコンセントに電気製品の電源プラグを差し込んで使う電気製品の場合、その電気製品の然るべき回路に100Vの電圧を掛けることになります。この〝電圧〟というのは〝電位差〟のことであって、どことどこの間の電位差なのかと言いますと、コンセントの2個の穴のうち、短い方(7mm)に来ている電線と、地面との間の電位差になります。「2本の線の間の電位差じゃないのですか?」という質問が返ってきそうですが、それももちろん正解です。
 ここで、掲載した図(高画質PDFはこちら)の右下の図を見て頂けますでしょうか。自宅にある電源コンセントの2個の穴のうち、長い方(9mm)は〝コールド側(接地側、ニュートラル側、グランド側、中性線側)〟と呼ばれていて、そこから伸びている線は屋外に出て、電柱にある変圧器(トランス)に届いたならば、直ぐに地面に埋め込まれた大型の電極へと向かって行きます。それは即ち〝接地〟なのであって、これは業界用語で〝B種接地〟と呼ばれています。
 話を戻しますと、家庭の電源コンセントで得られる100Vの電圧というのは、電柱の変圧器から来ている電線と、地面との間の〝電位差〟だということです。言い換えれば、人工的に作り出した電位と、地球の表面の電位との差が100Vだということです。現代の私たちは、日常生活において直接的に地面に接する機会が非常に少なくなりましたので、〝接地〟という語の実感が湧かなくなっていることでしょうが、コンセントのコールド側は実際に地面に直結されていて、これが即ち〝接地(アース)〟になります。

 もう一つの〝アース〟があります。電源コンセントのうち、濡れた手で触ったり、機械そのものが濡れる可能性の有る機械を繋ぐコンセントには、必ず〝アース端子〟が設けられています。台所や洗濯機置き場や温水式洗浄トイレなどのコンセントには、必ずアース端子付きのものが設けられていますので、探してみてください。
 掲載した図にもコンセントの写真を載せておきましたが、これには2種類のアース端子が設けられています。このアース端子から奥へと伸びている線は、両方とも家の敷地内に埋め込まれた〝アース棒〟へと繋がっています。そして、このアースの種類は業界用語で〝D種接地〟と呼ばれています。要するに、このコンセントには、B種接地であるコールド側と、D種接地であるアース端子の2種類が、地面と直結されていることになります。
 ご家庭に電気のテスターをお持ちの方は少ないと思われますが、お持ちの場合は、コンセントのホット側(7mmの短い穴の方)と、コールド側の間の電位差を計っていただければ、100V~103Vあたりが確認できるはずです。次に、コンセントのホット側とアース端子との間の電圧を測定してみてください。これでも、やはり100V~103Vあたりが確認できます。これで、コンセントのコールド側に来ている100Vは、地面との間の電位差であることが実感できるはずです。

 次は、テスターの端子の片方(黒い方)をコンセントのアース端子にくっ付け、もう片方の端子(赤い方)を指で挟んで、両者間の電圧を測定してみてください。おそらく、テスターは1~3Vあたりを指すのではないかと思われます。これが、最近流行り出した〝体表電圧〟と言われるものです。乾電池が1.5Vですから、それと同等の電圧が生じていることになります。「もしかして電球が点く?」という質問につきましては、電圧はそこそこあるのですが、皮膚の導電性が低いですから次々と電子を送り出すことが出来ず、電球は点かないと思われます。
 「では、人体からこんなに電圧が生じていても大丈夫なのですか?」という質問に対しましては、完璧に自信をもって「大丈夫です」とは言えない状況なのです。この電位差は、地面との電位差、即ち、地球との電位差です。そして、裸足で土の上を歩いたり、素手で畑仕事をしたりなどのような〝接地〟が行われている状況下では生じない電圧だからです。ヒトに進化してからも、原始的な生活をしている時代には生じていなかった電圧です。
 体表電圧が生じる原因は複数あると考えられますが、特に問題にするべき原因は、屋内の配線や電気機器の影響によって人体に生じる誘導電圧です。因みに、私がテスターで体表電圧を計って2.2Vぐらいであることを確認した後に、周波数を測定してみたのですが、約60Hzでした。まさに、関西以西の電源周波数と一致していましたので、体表電圧の大きな原因は屋内の電気設備であることが確認できました。

 次は、非常に高い電圧が生じる〝静電気〟についてなのですが、上記の体表電圧とは原因や現象が全く異なるものです。先ずは、掲載した図の左下を見て頂きたいのですが、その中の左上は、正に帯電した大きな物体に直接触れたために人体の電子がその物体に移動し、人体の上半身が正に帯電した例です。その右は、手すりと手との摩擦によって、手すりから手に向かって電子が移動したために手が負に帯電した例です。その右側は、歩行によって床から靴に向かって電子が移動し、それによって靴が負に帯電すると共に、足元が正に帯電し、頭や手の先が負に帯電した例です。下段の左側は、椅子から服に向かって電子が移動することによって服が負に帯電し、立ち上がった瞬間に椅子の正電荷と離されることによって、代わりに人体の腰部が正に帯電し、手の部分が負に帯電した例です。その右側は、服を脱ぐときの摩擦によって服の電子が人体に移動し、上半身が負に帯電した例です。
 このように、〝静電気〟と呼ばれる現象は、実際に電子が移動してしまったために生じる現象です。従いまして、その電子の偏りを解消することが出来れば、一瞬のうちに静電気は無くなってしまいます。例えば、静電気を帯びた感じがするので電圧を計ってみようと思ってテスターの端子に触れた瞬間、そのテスターの端子を通じて電子のやり取りが終了してしまい、その電位差を計測することは出来なかった、という結果になります。そのため、静電気を測定するためには、触れずに測定する〝静電気測定器〟が必要になります。因みに、私はそれを持っていません。
 静電気による被害は、健康面ではなく、パチッと火花を飛ばして電子がごく一瞬の間に空中を移動することによる被害に限られてきます。例えば、引火物を発火させてしまうとか、精密な電子機器を壊してしまう、などのようなものです。これは産業的には一大事に繋がりますから、静電気を解消することは場合によっては極めて大切なことになります。ただ、健康上に問題が生じるとすれば、先に述べた体表電圧の方だと考えられます。そして、そのどちらの解消にも、次に述べる方法が有効になります。

 体に生じる電位差は、既に見てきましたように地面との電位差です。ヒトが地面との接触を保ちながら生活していれば、体表電圧は常にゼロになります。この状態が地球に住む生物の正常状態であるならば、やはりゼロであることに越したことはありません。
 掲載した図の右上に、サーマルカメラによるサーモグフラフィーを載せておきました。これは、下腿に炎症を持つ人が被験者になったもので、左側はアーシング前の画像です。赤色~黄色の部分は、炎症によって温度が高まっていることを示しています。そして右側は、アーシングをして30分経過した後の画像です。赤色~黄色の部分が殆ど無くなり、炎症が治まったことを示しています。言い換えれば、炎症が強く出ていた原因は接地不足だった、ということになります。

 裸足で歩いたり、素手で地面に触れたりしていれば、自ずと接地している(アーシングしている)ことになりますから、それが理想だと言えます。しかし、都市部のマンションに住み、導電性の低い材質で作られた靴やスリッパを履き、同様の材質で作られた床や絨毯の上を歩き、同様の材質で作られた物に触れるだけの生活を続けていると、電位差を長時間にわたって解消することが出来なくなります。
 そこで、マンション住まいであっても解決出来る方法としましては、コンセントに設けられたアース端子を利用することです。なお、コンセントのコールド側を使っても同様の効果は得られますが、電気設備の故障による思わぬトラブルや、ノイズ成分が入り込む可能性もありますので、使わないのが賢明です。
 そして、アース端子に繋いで使う〝アーシング用マット〟が各種市販されていますので、それを利用すれば結構でしょう。因みに、あまりに導電性が高いと、もし漏電しているものに同時に触れると自分の体を通じて過大電流が流れますので、アーシング用マットには適度な抵抗が入れられています。例えば、アース端子に何らかの電線を繋ぎ、その電線を体に接触させれば急速なアーシングになるわけです、万が一のことを考えるならば、やはり専用のアーシングマットを使うのが安心でしょう。

 
執筆者
清水隆文

( stnv基礎医学研究室,当サイトの keymaster )
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