ニンニクの抗がん成分は摺り潰し後に油中にて少々加熱で生成

 ニンニクから得られる物質にも、強力な抗がん作用を示すものが複数あり、その中でも最強だと言えるのがジアリルトリスルフィド(DATS)です。また、同時に生じうるジアリルスルフィド(DADS)にも優れた抗がん作用が確認されています。
 因みに、野菜を含めた多くの植物には、多かれ少なかれ、抗がん作用を示す物質または前駆物質が含まれていますが、どれが最強なのか…という興味も出てくることでしょう。しかし、物質が異なれば作用機序も異なることが多いため、それらを一律に比較することはできません。それよりも、作用機序が異なる物質を少量ずつ多種類摂ることを考えたほうが効果が高いと言えます。それは、西洋医学的な考え方と東洋医学的な考え方の違いに似ています。例えば、最も強力な物質を一つ選んで大量投与すれば、それなりに目立った効果を示すかもしれませんが、いわゆる副作用も強く出てきます。一方、体を健康にして治癒力を増すことを基本とし、それに加える形で少々の薬効を出していこうとする漢方薬の概念に近いと言えます。今後も、更に幾つかの抗がん成分を紹介していこうと思いますが、それらを少量ずつ複数取ることのほうが、結果として高い効果を示すことになると考えられます。
 
 さて、ニンニクの話に戻りますが、ニンニクを由来とするDATSは、元々はニンニク細胞の細胞質に含まれるアリインという成分が、ニンニク細胞の液胞内に含まれるアリイナーゼという酵素によってアリシンへと変換され、それが更に変換されてDATSになります。具体的には次のようです(掲載した図(高画質PDFはこちら)参照)。アリシンが生じるまでの過程は、ブロッコリーや大根などのアブラナ科植物に由来する抗がん物質と同様の生成機序になっており、細胞をすり潰してやることによって初めてアリシンが生じることになります。
 次に、アリシンがDATSに変換される過程についてですが、これは自然界においては何時間という時間をかけてアリシンがDATSへと変化することになり、生じたDATSが昆虫や微生物を撃退するという流れになります。植物にとっての時間は、私たちが食事をする時間に比べると、かなりゆっくりしているため、それでよいのです。しかし、人間はニンニクを目の前にすると直ぐに食べたくなりますので、何時間もかけることは滅多にないでしょう。その場合、DATSが生じないままに食べてしまうことになり、優れた抗がん効果を得ることが出来なくなります。では、どうすれば良いのか…。
 それは、少々加熱してやることです。あまり過熱し過ぎると、DATSが直ぐに気化して無くなってしまいますので、すり潰したニンニクをフライパンに入れて、比較的低温でさっと火を通す感じになります。この時に忘れてはならないことは、すり潰したニンニクが全て隠れる程度以上に油をたっぷりと入れて加熱することです。DATSはニンニク臭の主成分なのですが、加熱しているが故に、生じたら直ぐに気化しようとします。それを、周囲の油が捕捉する形になります。DATSは水には溶けず、油に良く溶けますので、水分を入れていたのでは目的が達せませんので、油を用いる必要があります。

 DATSの抗がん作用に関する論文は、海外には膨大な数がありますので、ご興味があれば検索していただければと思います。どのような種類のがんであっても、複数の機序によってアポトーシス(自滅)へと導きます。それでいて、いわゆる正常細胞に対しては殆ど害作用を示しません。何故なら、私たちの細胞は、昔からこのような成分を摂取してきたからであって、耐性を持っているということです。一方のがん細胞は、その場で生き延びることを最優先していますから、DATSに対する耐性を発揮できないのだと考えられます。

 今日の記事の結論を短く表現しておきますと、ニンニクから抗がん成分を多く得るには、すり潰してから数分間待つことによってアリインをアリシンへと変換させ、その後に、フライパンに油をたっぷりと入れて比較的低温にて、ごく短時間加熱すると、より多くのDATSが得られる、ということになります。どうぞ、天然由来の抗がん成分をご活用ください。

 
執筆者
清水隆文

( stnv基礎医学研究室,当サイトの keymaster )
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