ショウガから高濃度の抗がん成分を得る方法

ショウガオールの生成法と抗がん作用

 がんを主テーマにした記事は、これが6本目となります。そのうち、非常に優れた抗がん作用を示す成分としてこれまでにご紹介したものは、アブラナ科植物から得られるDIM(ジインドリルメタン)やI3C(インドール-3-カルビノール)、特に大根から得られるMTBITC(ラファサチン)、ニンニクから得られるDATS(ジアリルトリスルフィド)などです。今回は、ショウガ(生姜)から得られるショウガオール、そのなかでも特に6-shogaolをご紹介することにします。

 抗がん作用の強さについて、一体どれが最も強力なのかを比較してランク付けすることは、現実的にはあまり意味の無いことだと解釈していただいて結構かと思います。その理由は、それぞれが異なった作用機序を示す可能性があるからです。従いまして、理想的には様々な成分を一緒に摂ることによって相乗効果を狙うことのほうが得策だということになります。
 ショウガに含まれている成分にも様々なものがあり、ここで強調する6-shogaolの他にも、炭素鎖が長い8-shogaolや、更に長い10-shogaolもありますし、それぞれにヒドロキシ基(-OH)が一個付いた6-gingerol、8-gingerol、10-gingerolもあります。これらも多かれ少なかれ抗がん作用を示しますので、単離された6-shogaolのみを摂るよりも、6-shogaolの含有量を高めた〝ショウガ〟を摂取することのほうが理想的だということになります。
 因みに、生のショウガは〝生姜(ショウキョウ)〟、乾燥させたショウガは〝乾姜(カンキョウ)〟として漢方にて用いられていて、それぞれは異なった作用を示すため使い分けられています。そして、今日ご紹介するのはどちらかと言えば後者のほうになります。ただ、乾姜の製法によって6-shogaolの含有量が違ってきますので、ここでは抗がん作用を最も高める方法についてご紹介することになります。

 図(高画質PDFはこちら)の左上に、2018年に報告された論文内の表の一部を掲載しましたが、種々の条件にて6-shogaolの生成度合を比較してみた結果、薄く切ったショウガを150℃前後で加熱乾燥した場合に、最も生成度の高まることが確認されました。どういうことかと言いますと、生のショウガにもごく僅かに6-shogaolが含まれているのですが、それ以外の有効成分の殆どはgingerolの形で含まれています。例えば6-gingerolであれば6位の炭素にヒドロキシ基が付いているのですが、加熱することによってこれが外れ、6-shogaolへと変化します。その場合の温度条件として120℃、150℃、180℃の3条件にて比較された結果、150℃の場合に6-shogaolが最も多く生じたということです。
 なお、180℃では150℃の場合よりも減少していますが、その理由は、gingerolからshogaolへの変換には水分または酸性成分(要するにH+)の共存によって促される(即ち、奪ったOHをH2Oにしなけらばならない)ため、180℃になるとショウガ内の水分蒸発が速すぎて変換に至らない分子が生じてくることが原因だと考えられます。
 また、その後に行われた実験で、150℃にて乾燥させる場合の経過時間とshogaol産生量との関係が調べられました。その結果、6時間後に最も増えることが確認されました。なお、7時間になると減少に転じましたが、その原因については、生じたshogaolが分解・重合したためであろうと報告者らは考察しています。

 さて、自宅で抗がん作用の強い乾姜を作る方法ですが、選ぶべきショウガは、いわゆる〝ひね生姜〟です。新生姜よりも多くのgingerolを含んでいて、僅かではありますがshogaolの含有率も高くなります。
 次に、ひね生姜をスライスしてオーブンに入れ、150℃にて6時間加熱するのが最も多くのshogaolを得る方法だということになりますが、生じたshogaolの分解が始まる直前の時間でもありますから、実際には、もう少し短い時間に設定するのが良いと思われます。掲載した図の左下グラフを見ると、1時間後であってもそれなりにshogaolへと変換されていますから、無理をする必要は無いと思われます。また、温度コントロールが難しい場合は、表中にも示されていますように120℃でもそれなりにshogaolへと変換されていますから、180℃あたりの高温に達することよりはマシだということになります。
 高温乾燥を終えた乾姜は、湿度を避けて密閉できる瓶などに入れて保管すれば、比較的長持ちするのではないかと思われます。

 6-shogaolの抗がん作用につきましては、「ショウガオール」などと日本語にせずに、「6-shogaol anticancer」をキーワードにしてgoogleの画像検索でも行えば、随分と多くの文献の図表に行きつくことが出来ますので、ご興味があれば検索してみてください。なお、日本語で「ショウガオール」として通常検索を行いますと、生姜を売っている食品会社さんのサイトが主に出てきます。或いは、その流れで「80℃が良いですよ~」などという情報も出てきますので、気を取られないようにして頂ければと思います。
 掲載した図の右下方にあげた文献は、これまでの知見をまとめ上げたもので、6-shogaolの抗がん機序を5種類に分けて示しています。詳細は図から読み取っていただければと思います。また、がんの種類につきましては、どの部位に生じたがんであっても、多くの研究結果によって高い有効性が実証されています。特筆すべきことは、殆どの場合において、がん細胞だけに有効に働き、正常細胞に対しては悪影響を与えない、むしろ健康効果を高める結果になっています。まさしく、夢のような抗がん剤になるのですが、製薬企業にとっては大敵となる成分でもあります。では、6-shogaol含有量を高めた乾燥ショウガを、是非ご活用ください。

 
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