スマートフォンによる読書で読解力を高める方法

スマートフォンによる読書で読解力を高める方法

 この記事につきましても、パソコンにて読んでいただく方よりも、スマートフォンにて読んでいただく方のほうが、圧倒的に多数となります。そのことを承知の上で記事を作成しているのですが、比較的詳細な図を毎回作成していまして、スマートフォン(以降、「スマホ」と略します)では見難いだろうなぁと思いながらも、全貌を盛り込みたいが為に詳細な図になってしまっています。従いまして、理想的には、機会が許すならばパソコンにて読んでいただきたいと思っています。パソコンであれば、文中の「(高画質PDFはこちら)」をクリックしていただければ、別ウインドウにて詳細画像が表示されますので、特に2画面以上のディスプレーをお使いの場合でしたら、詳細な図を目で追いながら文章を読んでいただくことが出来るようにしています。もちろん、出先などでスマホで読んでいただく方のことも考えて、文章だけでも多くが伝わるように配慮しながら記事を書くようにしています。

 さて、スマホ使用の場合のデメリットとして、全く同じ文章を読んだとしても、本などの紙媒体で読む場合よりも、読解力が低下することが古くから確認されています。因みに、大きな画面や多画面のパソコンでは、そのような弊害は殆ど生じないことも確認されています。むしろ、本に較べると遥かに大きな画面になりますから、複数の図と文章を並べて同時に確認できれば、学習効果は紙媒体よりも一段と高くなります。
 スマホの弊害は、スマホが普及し始めた頃から、アップルなどの開発者側から既に懸念材料として持ち上がっていました。強い表現がされているケースでは、「スマホは脳を破壊する」などの表現もありました。その後も、大学の教育関係、心理学関係の研究者からも、スマホの弊害を実証する様々なデータが公表されました。
 では、今更、スマホをやめられるのか…と考えたとき、それは時代の逆行であり、決して得策ではないと考えられます。従いまして、スマホをやめるのではなく、デメリットが最小限になるようにしっかりと対策をして、スマホのメリットが多く得られるようにしましょう、というのが良いと思うわけです。

 2022年に昭和大学医学部の研究グループから「あっぱれ!」と思わされる研究結果が報告されていますので、先ずはそれをベースにして、スマホの弊害を再確認してみたいと思います。詳細は原著を確認していただくこととして、私なりにポイントを整理し、強調したいことのみを述べていきます。
 これは、被験者として34名の学生さんが当てられていて、村上春樹氏の小説2種類を、スマホで読んだ場合と、紙媒体(本)で読んだ場合について、読書後にテストが行われました。テストの内容は、小説に書かれていた内容に関連することを問うもので、如何にしっかりと読めて頭に入ったかをチェックするものです。問題数は10問で、その正解率が点数(スコア)化されました。
 結果は、掲載した図の左端のグラフのようであり、スマホで読んだ場合よりも本で読んだ場合の方が、2倍ほど高得点でした。逆から言えば、スマホで読んだ場合は、本で読んだ場合の半分ぐらいしか頭に入らなかった、ということになります。なお、個人差が出ないように、1人の被験者はスマホと本の両方で、それぞれ別の小説を読むようにして2回実験が行われています。

 今では、スマホを使って調べ物をしたりすることが多くなっていると思われますが、手元に適当な辞書や百科事典、或いはパソコンがあるのであれば、そちらを用いたほうが、しっかりと頭に入ることについては、他の研究者の様々な研究結果でも示されています。では、スマホを用いた場合、なぜ頭に入り難いのかという原因を突き止めておく必要があるわけです。
 スマホを使って読書をしているとき、一つは、図の中央に引用した現象が起きていることが確認されました。即ち、スマートフォンにて読書を始めると、額の周りの脳活動が過剰になるのです。これは、かつての人類の生活を考えると、いかにも不自然な入力様式によって情報が目から入るため、前頭葉が混乱状態になることを意味しています。また、その状態は読書後もしばらく続いたそうです。
 一方、本のような紙媒体を用いた読書では、スマホの場合のような脳の過剰反応は見られませんでした。即ち、前頭葉が冷静な状態に保たれていたことを意味します。言い換えれば、高い読解力が維持されていたことになります。
 引き続き、別のデータを見てもらうことにします。掲載した図の右端の図ですが、縦軸に〝一回換気量〟、横軸に〝時間(秒)〟が採られているグラフにおいて、赤色のプロットは紙媒体の場合です。これは、典型例だと言える1人の被験者の結果なのですが、紙媒体にて小説を読んでいると、読書中に3回の深い呼吸、即ち〝ため息〟が生じていることが示されています。しかし、この人物がスマホで読んでいる場合には、読書中に〝ため息〟は生じていません。その他、スマホで読んでいる場合には呼吸が全体的に浅くなり、読み終わってからの呼吸が少し深めになる傾向を示しています。
 この、読書中に時々深い呼吸をする、即ち、ため息をつくことは、読書中に浅くなっていく呼吸を補うための、自然発症的な補償機構であると解釈できるわけです。そして、それによって前頭葉の過剰反応が抑止されているのだと考えられるわけです。逆から言えば、スマホにて読書をしていると、浅くなってくる呼吸を補償するための〝ため息〟が阻害され、その結果として前頭葉の過活動が抑えきれず、読解力が低下してしまう、と解釈できるわけです。

 では、スマホにて文章を読む場合に、読解力を低下させないための秘訣は…? そうです、読んでいるときに時々〝ため息〟をつくことです。深呼吸をすることも同義です。
 考えてみれば、スマホの画面では連続的に画面をスクロールしていくだけですから、本のようにページをめくる息継ぎもありません。延々と、のめり込んだ状態が続いてしまうことになります。しかも、こんな狭い画面の中がせわしなく動いているものは、この自然界には無かったわけですから、ヒトはまだ慣れていないので、脳が非常に疲れます。従いまして、ちょっと読んだら〝ため息〟をついて、ゆっくり息を吐くことで副交感神経優位へと転換させ、適宜、脳を休ませてあげてください。

 
執筆者
清水隆文

( stnv基礎医学研究室,当サイトの keymaster )
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