日常生活から振動を無くしてはいけない

35~45Hzあたりの振動が重要

 現代は、人間関係以外のものは、随分とスムーズに動くようになりました。電車に乗ってもビリビリとかブルブルとかいう細かな振動を感じることが殆ど無くなりました。昔の電車は、特に空調関係のモーターの振動が大きくて、窓ガラスやブラインドや看板などがビリビリと音を立てていたものです。線路も継ぎ目のあるレールが使われていて、走れば必ずガタンゴトンと振動が伝わってきたものです。
 クルマも、随分と振動しなくなりました。昔のエンジンはバランスが良くないため、回転していれば必ず車体ごと震えるのが当たり前でした。最近は、電気自動車はもちろんのこと、4気筒以上のエンジンであれば、振動を感じることは殆ど無くなりました。クルマ好きの人にとって、これは極めて寂しいことです。
 自転車で舗装されていない砂利道を走れば、それこそ激しい振動が体の芯まで響くことになりましたが、現代において街中を走っていれば、拾うのは時々出くわす段差ぐらいのものです。農作業をするときに使う様々な機械類も、昔のものに比べると、随分と振動しなくなりました。あまりに振動が激しすぎると白狼病のリスクが高まりますが、適度な振動が恩恵を与えてくれていた、というお話になります。

 掲載した図(高画質PDFはこちら)の左下は、短期間で結果が出るマウスを用いた実験ですが、放っておくとアルツハイマー病になってしまうモデルマウスに、毎日1時間の振動を与えて3週間経過したとき、増えているはずのリン酸化タウが殆ど無くなってしまっていた、というものです。なお、振動を与える方法は、スピーカーの振動版の上に飼育用のケージを置いて、その中にマウスを入れるという方法です。周波数は40Hzが用いられています。

 図の右下は、糖尿病の結果として生じた足の潰瘍を治療するために、足を振動させる装置にて、2日ごとに15分間、周波数が47Hzの振動が与えられました。すると、28日目には奇麗に治ってしまった様子が示されています。なお、周波数は当該機器の固定周波数となっていますので、その前後の周波数については言及できません。

 図の右上は、振動が与えられることによって関節軟骨の修復が可能になる機序が描かれたものです。先にupしました記事『膝の痛みや変形性膝関節症に有効なファイトケミカル』では、クルクミンなどのファイトケミカルによって修復を促す方法をお話しましたが、併せて〝振動〟を与えることによって軟骨の修復を更に早めることが可能になる、ということになります。
 その場合の機序として考えられることが図示されていますが、即ち、振動を与えるとカスパーゼ-3の発現が減少し、それによって軟骨細胞に起こっている過剰なアポトーシスも減少する、ということが一つです。二つ目は、振動を与えることによってルブリシンという粘液性糖タンパク質の分泌量が増えて、軟骨表面の摩擦が低減され、保護作用も強まる、ということです。三つ目は、振動を与えるとオステオプロテゲリン(OPG;骨(オステオ)を護る(プロテクトする)という意味で命名されたサイトカイン)が増加し、破骨細胞分化因子であるRANKLと結合してその濃度を低下させることによって、破骨細胞分化と骨吸収が抑制される、ということです。

 その他、図の中央に描かれていますように、振動を与えることによって神経活動の活発化、認知機能の向上、シナプス可塑性の向上、痛みの軽減、固有受容機能の向上、筋肉量と筋力の増強、運動能力の向上、筋萎縮の軽減、骨密度の向上、骨折の治癒促進、関節の安定性の向上などが実現される、ということです。また、その結果として、振動を与えることが、神経変性疾患、サルコペニア、骨粗鬆症、痛みなどに対する予防および治療戦略になる、ということが描かれています。

 また、図の右上には、振動は細胞のレベルで効果を与えている、ということが描かれています。もちろん、血行やリンパの環流が増すことも効果が出る一因でしょうが、個々の細胞への直接的な影響が大きいということになります。

 振動の振動数、即ち周波数につきましては、研究例によって違いがありますが、おおむね35~45Hzあたりが最も有効なのであると考えられます。先にupしました記事『ガンマ波を自分で出せないときは外部から与えるのも有効』で紹介しましたように、ニューロンの発火のタイミングが40Hzあたりにあるようですので、どうもこのあたりの周波数が細胞にとって同調しやすいのではないかと考えられます。
 日常的には、多くの家庭にありそうなマッサージ機を活用すれば結構だと思われます。周波数を知る手軽な方法は、スマホのアプリに周波数を測定するものが色々とありますので、それによってマッサージ機から出る音を拾えば周波数を知ることが出来ます。因みに、我が家にあるマッサージ機は3段階が選べて、それぞれ42Hz、37Hz、32Hzが計測されました。
 以上のように、体に振動を与えることは想像以上に多くの恩恵を受けることが出来ますので、大いにご活用ください。

 
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