「糖質を摂る」というのは単に砂糖やブドウ糖を摂ることではない

「糖質を摂る」というのは単に砂糖やブドウ糖を摂ることではない

 「糖質」という単語を見たとき、あなたはどのようなものを思い浮かべるでしょうか? 「甘いもの」とか、「デンプンが多く含まれているもの」などでしょうか…。そして、「糖質制限」という語を見たとき、何を食べることを減らすことだと思われるでしょうか?「白いご飯を減らそう」、「パンやうどんを減らそう」、「甘い飲食物は控えよう」などでしょうか…。実際に、そのようなイメージの「糖質」ならば、いっそのこと減らしてしまったほうが良いと思われます。しかし、大切にしなければならない糖質は少し違っていて、その大切にしなければならない糖質を制限してしまうことは、絶対に避けなければなりません。

 掲載した図(高画質PDFはこちら)の上段に「炭水化物の分類」を載せました(分類図のみのPNG画像はこちらにあります)。この中で、多くの人が思い浮かべる「糖質」の筆頭は、二糖類の「スクロース(ショ糖)」だと思われます。次には、単純多糖類の「デンプン」だと思われます。次には、単糖類のなかの六単糖である「グルコース(ブドウ糖)」や「フルクトース(果糖)」であると思われます。そして、図にて確認していただきたいことは、他にも非常に多くの「糖質」が存在していることです。

 図の下段には、〝優れた生理作用を示す「糖質」の例〟を挙げました。この文中にも書き連ねておきますが、糖アルコールの「エリトリトール」は抗虫歯、抗糖尿病作用を示します。同じく糖アルコールであり希少糖でもある「キシリトール」も抗虫歯、抗糖尿病作用を示します。希少糖の「D-タガトース」は抗虫歯、抗歯周病。「D-プシコース」は食後血糖上昇抑制、内臓脂肪蓄積抑制。「D-アロース」は活性酸素産生抑制、がん細胞増殖抑制。種々のオリゴ糖(大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、フルクトオリゴ糖など)は、有用腸内細菌の育成。種々の多糖・食物繊維(グルカン、イヌリン、フコイダン、レジスタントスターチなど)は、血糖値スパイクの抑制、有用腸内細菌の育成、免疫機能の構築、自然免疫強化、抗がん作用を示します。
 即ち、糖質の中には、精製された糖質の悪影響を打ち消す糖質も多種類存在しているということです。言い換えれば、糖質を多く含む食べ物であっても、それを精製せずに食べれば、虫歯や血糖値の上昇や種々の生活習慣病などの悪影響が避けられるだけでなく、更なる健康効果が得られるということです。

 そもそも、糖質に対してこんなふうに気を使わなければならなくなった原因は、人間の技術開発です。工業化や産業化です。例えば、今から数百年ぐらい前の時代でしたら、こんなふうに糖質を分類したり、炭水化物を分類したりする必要は無かったわけですし、細かく分類すること自体が難しかったでしょう。そして、人々は食材を加工せずに殆ど丸ごと食べていましたから、この表に挙げた各種の炭水化物の殆どを、無意識のうちにバランス良く食べていたわけです。だからこそ、生活習慣病が少なかったのです。

 ごく簡単に「炭水化物の分類」に関する注釈をしておきます。「希少糖」と言いますのは、日本の香川大学にて40年以上も前から研究が進められている糖で、天然物中には微量にしか含まれていないのですが、これが上述のような優れた生理的作用を示すことが見い出され、応用が進んでいます。化学的分類におきましては「糖アルコール」または「単糖類」に属するものですので、図中では破線で結んでおきました。
 「D-」とか「L-」というのは、分子の立体構造が互いに鏡像の関係にある異性体を示しています。生物は、糖の種類によってD体を好んで作ったり、場合によってはL体を作ったりして使い分けています。図中に敢えて「D-」とか「L-」とかを示しているものは、それを特定したい場合です。また、グルコースの場合はに「β-」と「α-」が存在するのですが、単に「グルコース」と書かれていれば「β-D-グルコース」のことになります。
 「小糖類」という分類がありますが、「二糖類」をこれに含める例がありますので、破線で結んでおきました。主には、炭素数が3以上のものが「オリゴ糖」であると解釈しておけば結構です。
 「食物繊維」と「多糖類」も破線で結んでおきましたが、両者は分類の基準が異なっていて、基本的には植物が持っている多糖類が食物繊維である場合が結構多くなっています。また、「水溶性食物繊維」は「複合多糖類」であることが多いですので、これも破線で結んでおきました。概して言えば、食物繊維というのは糖分子が繋がって繊維状になっていることが殆どですので、そもそも食物繊維と糖質を分けること自体が難しいということです。
 
 私たちが糖質や炭水化物について摂取量を考えるとき、その判断基準は、自然界にそのようなものが多くあって祖先が食べてきたか否かです。例えば、精製された砂糖は自然界には存在していません。或いは、精製されて白い粉になったデンプンも存在していません。或いは、野生の果物はあまり甘くなく、果糖やブドウ糖の含有量はあまり多くありません。従いまして、現代社会に現れたそのようなものに対しては、人体は上手く対応できていないのです。それだけでなく、上述したような優れた生理的作用を示す糖質が取り除かれているわけです。
 逆に、未加工・未精製の食材には、糖質の欠点を補うことが出来る多種類の糖質が豊富に含まれていますから、クリーンなエネルギー源になるだけでなく健康の維持・増進に必要ですので、決して避けたり制限したりすることなく、大いに食べるべきだということになります。

 
執筆者
清水隆文

( stnv基礎医学研究室,当サイトの keymaster )
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