『体内におけるAGEs生成の最大原因は単純糖質の多い飲料』
AGEsとは終末糖化産物のことであり、体内で生じる〝内因性〟のものと、食事などによって体外から入ってくる〝外因性〟のものに分けることができます。そして、後者の方、即ち外因性のものにつきましては、先にupしました『食べ物に含まれる終末糖化産物(AGEs)も危険だから避けよう!』にて紹介しました。そして今回は、内因性のものについて紹介していこうと思います。なお、AGEsの危険性は、内因性のものと外因性のものとの足し算になりますので、両方に気を付けなければならないことになります。
外因性のAGEsに関する復習を簡単にしておきますが、これは特に肉類を高温調理した際に非常に多く生成されますので、そのような調理方法にて作られた食餌を食べないことが最善の選択となります。例えば、焼肉を週に一回、少量だけ食べるというのであれば、その弊害はかなり小さいと考えて結構でしょうが、毎日の弁当に、焼いた肉、ベーコン、フランクフルト、鶏の唐揚げなどが欠かさず入っているというのであれば、それなりの弊害を被ると考えて結構でしょう。その弊害とは、がんを含めた種々の生活習慣病や早期老化に見舞われることです。
では、今回のテーマである内因性のAGEsについてですが、体内では高温になることはありませんので、外因性のAGEsとは異なったメカニズムによってAGEsが生成されることになります。それは主に、糖の代謝の途中、詳しく言えば、特に〝果糖(フルクトース)〟が、解糖系においてピルビン酸に至るまでの中間代謝産物として生じる〝グリセルアルデヒド〟が主原因になる、ということです。
あまりに詳しい内容は、この手の分野の知識を仕事の一部にされている方以外では、その必要性が低いと思われますので、最小限のみ紹介させていただきます。掲載した図(高画質PDFはこちら)の右上の図をご覧いただきたいと思います。
この図の左上は、食餌に含まれている糖質(デンプンなどの多糖類、ショ糖などの2糖類、ブドウ糖や果糖などの単糖類の混合物)から、消化や代謝によって「ブドウ糖」が生じることを示しています。なお、果糖も量が少なければ、小腸上皮細胞内にてブドウ糖に変換されてから肝臓に向かうのですが、量が多くなるほど変換されずに果糖のまま肝臓に運ばれる量が増えることになります。その後は、肝臓において、ブドウ糖の何割かがポリオール経路を経てソルビトールになり、更に果糖(フルクトース)へと変換されるものが出てくることになります。
一方、図の下方から果糖に向かう矢印は、例えば甘い飲料によく使われる「果糖ぶどう糖液糖」を飲めば、それに含まれる果糖を直接的に摂取してしまうことになることが示されています。
結局、過剰になったブドウ糖の何割かが体内にて果糖に変換されたり、最初から果糖として摂取したりすることによって、その合算としての果糖が体内に生じることになります。そして、その果糖が解糖系にて代謝されていく過程において、中間代謝産物である〝グリセルアルデヒド〟が幾らか生じることになり、それが危険なAGEsへと姿を変えていくことになります。なお、グリセルアルデヒドから生じるAGEsを、この図においては〝GA-AGEs〟と表現しています。
グリセルアルデヒドが生じるもう一つの経路として、図にはブドウ糖から果糖を経ずにグリセルアルデヒドが生じる経路も描かれています。この経路は少し細めの線で描かれていますが、当然のことながら、この経路も〝GA-AGEs〟を生じさせることになります。
なお、GA-AGEsはもちろん総称であって、実際にはその図の右端に挙げられている種々の分子が存在しており、それらが毒性の強いGA-AGEsの例になります。おおよそ、「普通の糖質を摂っただけなのに、こんなにヘンなものがいっぱい出来るんですね!!」という解釈で結構です。
その他、図には黒色の矢印で示されている種々の経路もあり、それによって作られるAGEsには別の接頭辞(Glu-、Fru-、Glycol-、GO-、MGO-、3-DG-など)が付けられています。そして、これらはGA-AGEsよりも毒性が低いことを表しています。逆に言えば、グリセルアルデヒドを経て作られるGA-AGEsが最も強い毒性を示すことになるわけです。
ここまでの最重要ポイントだけを繰り返しておきますと、最も毒性の強いAGEs、即ちGA-AGEsの元になる糖として最も危ないのが〝果糖〟だということになります。果糖は2糖類であるショ糖(砂糖)の構成要素ですし、「果糖ぶどう糖液糖」と称される甘味料には相当な量の果糖が含まれていますので、そのようなものを避けることが、健康を維持するために重要だということになります。
最後に、ぜひ避けるべきものの具体例を見ておきたいと思います。図の下段に引用させていただきましたのは、様々な種類の飲料の中に含まれている糖質の量を示したグラフです。左のものほど高濃度になっていて、飲料100ml中に含まれる糖質の量がg(グラム)で示されています。
例えば「ユーグレナ飲料」は100ml中に17.92gの糖質が含まれていますので、通常商品内容量である125mlを飲むと、22.4gの糖質を摂ったことになり、角砂糖(1個が3.3g)を6.8個食べたことに相当します。角砂糖を6個とか7個とかを食べるのは誰もが抵抗を示すと思われますが、健康に良さそうなユーグレナ飲料の125mlであれば簡単に飲んでしまいそうです。だからこそ、怖いのです。
その右側の「乳酸菌飲料A」の糖質含有量も同レベルです。商品内容量が65mlですから、これを2本飲めば、前述の「ユーグレナ飲料」とほぼ同量の糖質を摂ってしまうことになります。乳酸菌飲料も健康に良さそうなイメージを抱いている人が多いですから、結構飲まれているのではないかと思います。しかし、飲んだ直後に血糖値スパイクを生じさせ、余剰のブドウ糖や、処理しきれなかった果糖からグリセルアルデヒドが生じ、更にGA-AGEsが生じ、種々の病気の引き金が引かれると共に、老化が促進されることになるのです。
全般的な考え方としましては、何万年前とか、何千年前という時代の、私たちの祖先が飲んだり食べたりしてこなかったものは、私たちもそれらを避けるべきです。その最大の理由は、体が対応できていないからです。