片頭痛の根本的解決法はこれである<後編>

 前回投稿『片頭痛の発症メカニズムと対策<前編>』の続きとして、今回は<後編>に移りたいと思います。
 これまで、頭痛も専門領域の一つであるという医師に指導され、時と場合によって使い分ける薬を進められたり、生活習慣をどのように改善するのが良いのか、という指導をも受けてこられた方は多いことでしょう。また、YouTubeやWebサイトのブログでも情報発信されている医師が結構いらっしゃいます。その各々を実践した結果、以前よりは改善したが、根本解決にまでは至らなかった…、という人が多いのではないでしょうか。何故なら、極めて重要な視点を、日本の医師は殆ど指導を受けていないからです。一方、世界に目を向ければ、これほどまでに注目されているのかと、驚かれることでしょう。

 まず社会的背景として、日本の現代社会は快適さを追及し、それを実現させようとするあまり、非常に大切なものを失ってしまっているのです。そのせいで、例えば世界の長寿村に住む人たちに比べると、ストレス耐性がかなり低下しているわけです。
 ストレス耐性が低下しているというのは、何らかのきっかけが心身に及んだ時、敏感かつ過剰に反応してしまう脳・神経系になっているということです。例えば、生理的周期にてホルモンレベルが大きく変動した場合、それが他の多くの体の機能にまで影響が及んでしまうということです。或いは、気圧の変化、電磁波、匂い、アルコール、特定の食べ物などに過敏に反応してしまい、そのたびに視床下部から応戦のための信号が発せられ、セロトニン神経から多量のセロトニンが分泌され、体中が大騒ぎの状態になります。何故なのでしょうか…。

 私たちの体は、自分の肉体の機能だけで維持されているのではなく、共生している他の生物種の力を借りて、始めて維持可能になっているのです。細胞の中のDNAにも、種々のウイルスが持っていたDNAが多く組み込まれています。或いは、細胞内のミトコンドリアは、リケッチアに近い好気性細菌が寄生したことに始まります。そして、皮膚表面や消化管内は、莫大な種類と数の微生物によって私たちが守られています。私たちは、自分だけで生きているのではないということです。ところが日本の現代人は、その心強いパートナーたちを失いつつあるということです。

 掲載した図(高画質PDFはこちら)は、2023年に報告された2件の論文中のごく一部をお借りしたものですが、片頭痛と腸内細菌叢との関係を図示したものです。
 左上の図は、糖尿病をはじめとした各種の疾患と片頭痛の関係を示したものですが、それらも元はといえば腸内細菌叢の如何にかかっている、ということです。そして、片頭痛と腸内細菌叢とは一本の線で直接結びつけられています。
 右上の図は、左側が健康な中枢神経系であり、それは健全な腸内細菌叢によって実現していることを示しています。一方、右側の図は炎症が起きやすい異常な中枢神経系であり、それは貧弱かつ不適切な腸内細菌叢が原因であることを示しています。
 右下の大きな図は、食べ物によって脳も腸内細菌叢も共に変化すること、および、腸内細菌叢の如何が、三叉神経を含めた顔面に分布する神経、脳幹、そして視床下部などと連携していることを示しています。何故そのようになっているのかといえば、細菌と哺乳類を含めた多細胞生物は、細菌と共同生活しながら進化してきたからです。他に難しい解説は不要です。

 今日の結論を申し上げますと、私たちは近代化がどれほど進もうが、腸管内には莫大な種類の自然界の細菌(大半は自然林の土壌に居る土壌細菌)を幼少期に腸管内に導入し、その細菌たちを育成するために、特に多くの繊維質や種々のオリゴ糖を含むものを食べなければなりません。あなたが満足するために食べるのではなく、片頭痛を防いでくれる腸内細菌叢を構築するために食べるのです。
 あなたのためには、ビタミンB2・B12・C・Eが充分に入っている各種のビタミン、マグネシウムや亜鉛の割合が高い各種のミネラル、トリプトファン・アルギニン・グルタミンが豊富な植物由来のタンパク質、DHAが豊富に含まれるω3系脂肪酸、タウリンなどを補給してください。なお、これらの栄養素は、例えば図の左下に挙げた玄米和定食だけでは充分に摂ることができませんので、サプリメントなどを利用する必要があることにご留意ください。
 併せて、片頭痛が激しい人は、旧来日本人が食べてこなかったものについては、それらを一切口にしないでください。我慢してください。食べれば、腸内細菌叢が不健全なものになり、片頭痛が起こりやすくなります。

 
執筆者
清水隆文

( stnv基礎医学研究室,当サイトの keymaster )
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