歯周病の最大原因はマグネシウム不足である

歯周病の最大原因はマグネシウム不足である

 歯に関する記事として、先にupしましたのは『歯の健康維持は象牙細管の存在を意識することから始まる』で、これは歯そのものの健康を維持・増進させる方法についてでした。そこで今回は、歯を支えている歯茎の健康を維持・増進させる方法について見てみたいと思います。

 歯がどれほど丈夫であっても、それを支えている歯茎が不健康であれば、歯がグラグラしてきて、やがて抜け落ちてしまいます。この場合に罹っているのが歯周病(periodontal disease;歯周疾患)です。
 巷では、歯周病を防ぐ方法として、歯ブラシで歯茎をブラッシングする方法が大きく採り上げられています。他には、定期的に歯科医院を訪れ、歯の根元に生じているプラークを除去してもらうことが推奨されています。勿論、それらの方法は有効であると言えますが、根本的な予防法にはなりません。
 或いは、歯周病が進行している場合、その進行を促している歯周病菌を、抗生剤などを用いて駆除する方法が採られます。勿論これも有効だと言えますが、根本原因を解決しないため、やがて再発することになります。
 更に言えば、歯茎の骨(歯槽骨(しそうこつ))において、骨芽細胞の働きよりも破骨細胞の働きが増して骨吸収が進行している場合、これから述べる重要なミネラルが補給されない限り、歯槽骨の回復は望めません。

 さて、掲載しました図(高画質PDFはこちら)の、左下の大きな図を見ていただけますでしょうか。左側が健康な状態、右側が歯周病の場合が描かれています。
 この図に描かれている歯周病の原因は、一つは、精神的ストレスによって多量に分泌されるコルチゾールです。そもそもコルチゾールはストレスに打ち勝つために、タンパク質を分解して糖に変え、濃度の高まった糖をエネルギーに変える、という指令を伝える役割を担っているホルモンなのですが、その目的に合わない作業については、それを抑制する方向に働きます。その、抑制されるものの一つが免疫機能です。その結果、病原性の高い細菌の増殖を防ぎ切れず、そのような細菌が分泌する粘質物によって病的なバイオフィルムが作られることになります。即ち、プラークが形成されやすくなり、その結果として歯周病に罹りやすくなるわけです。
 二つ目は、他の臓器に見られる感染性かつ慢性的な炎症です。炎症を起こすために使われる合図の幾つかは全身を巡りますので、歯周部分も炎症を起こしやすくなります。或いは、炎症の原因が病原性の高い細菌であった場合、その細菌は歯周部分と他の臓器の炎症部分で共通している場合もあります。歯周病は他の疾患の原因になる、という話がありますが、その逆もあるわけです。
 三つ目は、不健康な食事と炭水化物の過剰摂取が挙げられています。不健康な食事というものの内容を挙げ始めると切りが無くなるのですが、一言で言えば、図中に示されているような食餌であり、和食の対極にあるような食餌です。歯周病に併発しやすい疾患としてメタボリックシンドローム(肥満、高血糖、高血圧、脂質異常症)、2型糖尿病、動脈硬化、心筋梗塞などがありますが、これらも不適切な食事が主原因になっていますから、歯周病と併発しやすいのは当然だということになります。

 もう一つ、極めて重要なことがあります。それは、見逃されることが非常に多いものであり、先ほど見た図にも描かれていません。従いまして、別の論文からデータを引用させていただきました。掲載した図の右端のグラフがそれなのですが、上段は血清中のマグネシウム濃度、下段は亜鉛濃度で、棒グラフの左側が健康な人、右側が歯周病の人の場合です。
 それぞれ30人の被験者から得られたデータの平均値がグラフ化されているのですが、歯周病の人ではマグネシウムも亜鉛も大きく不足していることが判ります。従いまして、歯周病を防いだり、治したりしたい場合、マグネシウムや亜鉛の補給をしなければ、大抵の人の場合は歯周病の解決に至らないことが解ります。
 ここで、賢明な人であれば気付かれることでしょう。上述しましたように、歯周病に併発しやすい疾患としてメタボリックシンドローム、2型糖尿病、動脈硬化、心筋梗塞などがあるわけですが、これらの主原因もマグネシウム不足です。もちろん、亜鉛不足も関連しています。原因が同様にこれらのミネラル不足なのであれば、併発して当然だということになります。

 今のような歯磨き剤(歯磨剤)が無かった時代には、塩で歯磨きをしていたと言います。その時代の塩は精製されておらず、多くのニガリ成分、即ちマグネシウムが含まれていました。だからこそ、塩で歯磨きすれば歯周病にも罹り難くくなったのだと解釈できます。もちろん、粗塩に含まれているマグネシウム濃度では充分とは言えませんので、次のような工夫をする必要があります。
 図の上方に挙げた写真のように、塩化マグネシウムの粉末(結晶の集まり)を、ノズル付きの容器に溶けるだけ入れて水溶液を作ります。そして、そのまま数プッシュして口の中に放り込み、数分~十数分ほど口に含んだままにします。その後、飲み込めば全身のマグネシウム補給になりますし、苦くて耐えられないと言うのなら吐き出してもらっても結構でしょう。要するに、特に歯肉溝を中心に、直接的にマグネシウムイオンを供給してやることです。また、歯周病が進行している場合、口の中で溶かすタイプの亜鉛錠を利用して、亜鉛補給にも努めてもらえばと思います。
 それで、何がどうなるのか…? 一言で言えば、足りていなかったことが原因で起こっている疾患ですから、足りていなかったものを充足させてやれば、様々な機能が復活して歯周病も治る、ということです。

 
執筆者
清水隆文

( stnv基礎医学研究室,当サイトの keymaster )
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