腸の調子が悪いと粘膜免疫の力が落ちる

腸の調子が悪いと粘膜免疫の力が落ちる

 今日は、リクエスト頂いた内容になります。その内容とは、IgAと腸の関係についてです。そもそもIgAは様々な分泌液に含まれる抗体ですし、例えば気道粘膜に分泌されるIgAが、どのように腸管と関係しているのか…、というのは当然の疑問点だと言えます。そのあたりを、ごく簡単に見ていくことにします。

 先ず基本的なこととして、私たちの体は生物として大いに進化して複雑になったものだ、ということです。例えば、原始的な姿をしているイソギンチャクの体を見てみると、口と肛門が一緒になっています。「え??」
 即ち、口のような部分からエサを飲み込んで消化し、必要なものだけ吸収した後、ウ〇コを口から吐き出すのです。「そんなこと、考えただけで、ぞっとします…」
 私たちは、入れる所と出すところが別々になっているものですから、鼻や口と腸管とは何ら関係の無いものだと思ってしまいます。しかし、イソギンチャクさんに言わせれば、「口も肛門も一緒ですよ!!」となるわけです。
 私たちの体は、口から食べて口から吐き出していた頃の体が変化していったものですから、口の部分と腸管とは元々一体のものなのです。鼻は、口の部分が口と鼻に分かれたものですから、これも本来は一体のものです。そして免疫系は、口や鼻と腸管が一体のものとして構築されています。一体であるが故に、相互連絡が密になっているのは当然のことだと言えます。

 逆に言いますと、鼻や口から肛門までの器官と、筋肉や血管などとは、非常に遠い関係にあると言えます。例えば、筋肉や血管内にワクチンとやらを放り込んだとします。しかし、それは鼻や口から肛門までの器官とは遠い関係ですから、殆ど効果が及ばないのです。もちろん、病原体が血中に入ってきた場合はそれなりの効果が期待できますが、鼻や口から入ってきてもそれは遠い関係の器官ですから、スルーしてしまうわけです。

 では、掲載した図(高画質PDFはこちら)の左下を見て頂くことにしましょう。鼻や口から、何らかの抗原(病原体などの異種生物)を放り込んだとすると、それを排除するために免疫応答が起こります。免疫機能の何割かを受け持っている仕組みが〝抗体〟なのですが、その殆どは〝IgA(免疫グロブリンA)〟によるものです。
 一方、注射によって筋肉内や皮下に何らかの抗原を放り込んだとすると、それを排除するために、やはり免疫応答が起こります。その場合、〝IgG(免疫グロブリンG)〟という抗体が形成されて働くことになります。言い換えれば、粘膜から入ってくる病原体に関しては、それが血中に入ってくるまでは何の意味も無いわけです。むしろ、ワクチンによる有害作用が人を苦しめることになるだけです。
 因みに、このあたりの話は先にupしています『気道から感染するのに血中にワクチン入れてどうするつもり?』に記していますので、必要に応じてご覧ください。

 次に行きますが、病原体が鼻や口から入ってきた場合、入ってきた部位の粘膜に備わっている免疫担当細胞が病原体を感知して、侵入してきた旨を伝える情報を全身に向けて発信するのですが、その情報は腸管にも届きます。鼻や口と腸管は一体のものですから…。
 特に、小腸の粘膜に備わっている〝パイエル板〟に情報が届くと、鼻や口から腸管までを担当する免疫システムが作動することになります。即ち、パイエル板に備わっている〝M細胞〟と呼ばれる細胞が、免疫系の指令担当である〝樹状細胞〟を刺激します。すると、パイエル板の下層に待機していた〝B細胞〟が、鼻や口の感染巣へと移動しながら〝IgA産生形質細胞〟へと分化します。そして、現場にたどり着いてから、その病原体に特異的であるIgA(分泌型IgA;SIgA)を多量に分泌して病原体を絡め捕ります。
 因みに、この仕組みは、誰かに勧められてワクチン注射を打っても、全く作動しません。筋肉や血管内と、鼻や口から腸管までとは別世界だからです。

 腸管を介したIgA産生システムは、腸管に在ったB細胞がIgA産生形質細胞へと変化しながら現場まで移動する仕組みなのですが、その移動は感染巣が最優先されるわけですが、例えば、肺、乳腺、生殖器などの粘膜へも移動します。とにかく、鼻や口から入ってきたものは、肺にも入りやすいですし、乳児や、将来生まれてくる子にまで伝わる可能性もありますから、粘液と呼べるもの全てに当該IgAを含ませるわけです。
 なお、掲載した図の右上には、乳腺にまでIgA産生形質細胞が移動して、母乳中にIgAを分泌している様子が描かれています。
 なお、IgAは血中にも少量が分泌されるのですが、血中のものは〝単量体〟が8割強を占めているのに対して、母乳中では〝二量体〟が約50%、〝三量体〟が約33%、〝四量体〟が約17%を占めていて(右下の図参照)、防御効果が高められています。
 結局、殆どの感染は、病原体が粘膜から侵入するわけですから、粘膜における防御力を高めることが最優先です。間違っても、そのような感染経路の病原体に対して注射によるワクチンなど打たないでください。そんなことをするから、インフルエンザが流行したり、再びコロナ感染症が流行してしまうのです。

 さて、有効な分泌型IgAを増やす方法についてですが、腸管のM細胞の働きに着目する必要があります。M細胞は、本来は腸管内に居る微生物をパイエル板内に引き込む役割を果たしています。そのため、M細胞の機能が低下すると、病原体の取り込みが遅くなったり、樹状細胞への刺激が減ったりして、IgA産生形質細胞への分化や移動に支障が出てきます。
 従いまして、M細胞を元気な状態にしておく必要があるのですが、そのためには、腸管全体を健全な状態に保っておくことが一つです。もう一つは、豊かな腸内細菌叢を構築しておき、種々の腸内細菌の管理のために活発にM細胞を働かせておくことです。
 巷では、乳業関連企業から特定の乳酸菌を与えるとIgAの産生量が増えると宣伝されていますが、それは、その乳酸菌がせめてもの異物の役割を演じてくれるおかげで、M細胞が目を覚ますからです。従いまして、そのような商業的な細菌を取り込む必要性は無く、自然界に居る莫大な種類の土壌細菌などを腸管内に大いに放り込んでやることのほうが重要です。「手を洗わない人の方が風邪を引きにくい理由」の一つがこれです。

 以上のように、粘膜感染を起こす病原体から身を守るために最も重要なことは、腸管を健全な状態に保つことや、併せて豊かな腸内細菌叢を構築しておくことです。そうすることで、有効なIgAの分泌量が高まるわけです。

 
執筆者
清水隆文

( stnv基礎医学研究室,当サイトの keymaster )
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