ワクチン注射後は免疫細胞が腕に集合する

ワクチン注射後は免疫細胞が腕に集合する

 今日は、〝免疫〟という極めて精緻で複雑で高度な仕組みのうち、最も基本的な部分の紹介をしようと思います。それは、多くの医療人が見逃してしまっている、最も初歩的な内容でもあります。

 人間社会において何らかの事件が起こった場合、その現場に警察官とか、消防隊とか、救急医療隊とか、警備隊などの人たちが集まってきます。その場合、そこから少し離れた場所では、上記の人たちが不在になりますので、無防備な状態になります。また、一般の人たちも、その事件を見に行こうと家を留守にします。すると、空き巣狙いを本職にしている輩のチャンスが到来することになります。

 私たちの体でも同様の現象が起こります。何のワクチンでも結構なのですが、そのワクチンを腕に注射するとします。すると、各種の免疫細胞が注射部位に集まってきて、その異物を取り除こうとします。その活動が少し大きめでしたら、注射部分が赤く腫れてきて熱を持ち、痛みも出てくることでしょう。そしてこの状態は、人間社会にて事件が起こった場合、その現場に警察官や消防隊などが集まってきて事件の処理をしている状態に相当します。
 また、リンパ節が腋窩に多数存在していますから、注射した側のリンパ節にも多くの免疫細胞が集合してきて、そこが腫れたりすることもあるでしょう。この状態は、遠隔地から召集されてきた警察官や消防隊などが、近隣の署にて関連業務をこなしている状態に相当するわけです。

 免疫細胞が現場に急行するのは、現場にいた免疫細胞から集合命令が発信されるからです。命令に使われるのは主に〝サイトカイン〟と呼ばれる様々な種類のタンパク質で、現場の近隣だけでなく、全身的にも行き渡ることになります。すると、全身から免疫細胞(の何割か)が集まってくることになります。また、体の一部分で起こった事件は、全身の力を集中して対処するという、高度に発達した多細胞動物ならではの行動に移ることになります。
 ワクチンを打たれた場合、全身に分布していた免疫細胞の何割かが、ワクチンを打たれた左腕の現場に向かうことになります。また、現場に向かわない免疫細胞であっても、現場での処理に注力できるように、活動エネルギーの配分を、現場に有利になるように変更します。その結果、全身的な防御力が低下することになるわけです。

 例えば、打たれたワクチンがインフルエンザのワクチンであったり、コロナ感染症のためのワクチンであった場合、打った本人は「これでインフルエンザやコロナに感染し難くなった」と喜ぶ人がいるかもしれません。しかし実際は、その逆のことが起こるわけです。何故なら、鼻や喉の粘膜、下気道から肺に至るまでの粘膜の防御に当たっていた免疫細胞の何割かが、打たれたワクチンへの対応のために現場に出向いたり、出向かなかった場合でも仕事のスタンスをワクチン成分の処理に傾けるからです。そして、この無防備になった粘膜は、空き巣狙いであるインフルエンザウイルスやコロナウイルスの絶好の侵入チャンスとなるわけです。

 その他、ワクチン接種後にヘルペスウイルスによる帯状疱疹が出る場合もありますし、他の感染症に罹りやすくなるのも、全身がワクチン成分の処理に集中しているせいで、他のものへの防御力が低下してしまっているからです。

 「ワクチンによってNK細胞が増えるって聞いたのですが…」という話もあります。しかし、もし増えたとしても、それはワクチンが打たれた現場付近に多く駐留することになります。何故なら、呼吸器粘膜に多く駐留しなけらばならない理由が全く無いからです。免疫系は想像を絶するほど賢いわけで、腕から異物が入ってきたならば、次からは、その腕の部分から異物が入ってこないように強化するのみです。逆に言えば、「腕から入ってくることが判っているのに、なぜ呼吸器粘膜を強化しなければならないのですか?」ということになるわけです。
 なお、ワクチン接種に伴う免疫力低下は、一般的には1週間程度で回復するとされています。従いまして、少なくとも、受験などの肝心なイベントがある1週間前から当日までは、何らかのワクチンを注射することは絶対に避けなければなりません。
 掲載した図(高画質PDFはこちら)に、上記のお話を図示しておきましたので、あとでご覧ください。

 
執筆者
清水隆文

( stnv基礎医学研究室,当サイトの keymaster )
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