幸福度を高めるのは自己決定感と将来への方向性

幸福度を高めるのは自己決定感と将来への方向性
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【1】はじめに
 「幸福度」という言葉は広く使われていますが、何がそれを高めているのかにつきましては、個人の経験や印象に基づいた説明が多く、科学的な根拠に基づいて整理されることは多くありません。実際のところ、人生の満足度や幸福感は、その人の性格や境遇だけで決まるものではなく、個々のステージにおいてどのような選択をし、どのように将来を見通しているか、といった要素が大きく関わっているのです。
 近年、日本国内で行われました大規模な調査では、幸福度を強く左右する要因としまして、「自分で選んで生きている感覚(自己決定感)」や「将来への方向性や生きがい」が一貫して上位に挙げられています。
 そこで、今回の記事では、これらの調査結果をもとに、幸福度を高める要因を整理しながら、日常生活の中でどのような視点を持つことが大切なのかについて見ていこうと思います。

【2】日本の大規模調査が示す「幸福度を左右する要因」
① SOMPOインスティチュート・プラス(2024年、7,471人調査)
 2024年に実施されました全国調査では、幸福度に影響する要因を重回帰分析によって検討しています。分析の結果、幸福度に最も強く関連していたのは 「生きがい・未来への希望」でした。即ち、「所得・富」や「交友関係・人間関係」よりも影響が大きく、“将来に向けて何かに取り組んでいる感覚”が、日々の幸福感を支えていることが示されています。
 次に影響が大きかったのは「所得・富」、続いて「交友関係・人間関係」でした。これらは従来の研究でも幸福度との関連が指摘されている要因ですが、今回の調査では“未来への方向性”が、それらを上回る結果となっています。

② 経済産業研究所(RIETI、2018–2020、2万人調査)
 経済産業研究所が2018年から2020年にかけて行った大規模調査では、幸福度を左右する要因として「自己決定感」が強く関連していることが示されています。ここでいう「自己決定感」とは、“自分で選んで生きている感覚”のことです。
 因みに、分析の結果、幸福度に影響する要因の上位は <1>「健康」、<2>「人間関係」、<3>「自己決定感」の順でした。これは、「所得や学歴」よりも、「自己決定感」のほうが幸福度への影響が大きいという点が特徴的です。
 また、“他人に決められた目標や行動を続けている人”は、幸福度が低い傾向がありました。逆に、“自分で選んだ行動を積み重ねている人”は、生活満足度が高く、将来への見通しも安定していました。
 この調査結果は、“何を選んだか”よりも“自分で選んだかどうか”が幸福度を左右するという点を明確に示しています。

③ J-Stage(2022、18万人調査)
 2022年に公開された18万人規模の調査では、「人生でやりたいことがある」と答えた人は全体の24.5%にとどまりました。さらに、幸福度への影響を分析すると、「やりたいことの有無」は、「既婚・収入・家族関係・仕事状況」といった要因よりも影響が小さいという結果でした。つまり、「やりたいことがある=幸福度が高い」という単純な関係は成り立たないということです。むしろ、“生活の安定”や“周囲との関係性”のほうが、幸福度に強く関連していました。
 これの解釈としましては、「やりたいことがある」人でも、それを実現できていない場合があり、そのことが幸福度に影響することは確かです。そして、そのこと以上に、複数の大規模調査では、そもそも“やりたいことの有無”そのものが幸福度の主要因ではないことが示されています。言い換えれば、やりたいことが無くても、そのことが幸福度を下げることはあまり無いということになります。

【3】調査結果を統合すると見えてくる共通点
 複数の大規模調査を並べてみますと、幸福度を左右する要因には共通した特徴が見られます。どの調査におきましても、幸福度に強く関連していたのは、“自分で選んで生きている感覚(自己決定感)” と、“将来に向けた方向性や生きがい ”でした。
 上述の調査結果のポイントを振り返ってみますと、SOMPOインスティチュート・プラスの調査では、「生きがい・未来への希望」が最も強く幸福度に関連していました。また、経済産業研究所の調査では、「自己決定感」が「所得」や「学歴」よりも強い影響を持っていました。さらに、18万人規模の調査では、「人生でやりたいことがあるかどうか」は幸福度への影響が小さく、「生活の安定」や「人間関係」のほうが強く関連していました。
 これらの結果を総合しますと、幸福度を高めているのは、特定の行動や大きな夢/目標の有無ではなく、“自分で選んだ行動を積み重ねていること”と、“将来に向けて何らかの方向性を感じていること” であると言えます。言い換えるならば、“内容よりも選び方や向き合い方”が幸福度に影響しているという点が、複数の調査で共通して示されている特徴だということになります。

【4】日常生活で取り入れられる視点
 調査結果から見えてくるのは、幸福度を高めているのは特定の行動や大きな夢/目標ではなく、日々の選択の積み重ねや、将来に向けた見通しでした。ここでは、日常生活の中で取り入れやすい視点をいくつか整理します。どれも大きな変化を求めるものではなく、今の生活の中で無理なく実行できる範囲のものです。

一つ目は、自分で選んだ行動を少し増やすことです。
 大きな決断である必要はありません。食事の選び方や、帰り道の過ごし方といった小さな選択でも、自分で選んだという感覚が積み重なることで、自己決定の感覚が安定していきます。調査では、この自己決定感が幸福度に強く関連していました。

二つ目は、将来に向けた小さな方向性を持つことです。
 「生きがい」や「未来への希望」といった言葉は大きく聞こえますが、実際には、数週間先や数か月先に向けた小さな見通しでも十分です。たとえば、学びたいことを一つ決める、体調管理のためにできることを一つ増やす、といった具体的で実行しやすいものが適しています。

三つ目は、生活の安定や人間関係を整えることです。
 18万人規模の調査では、生活の安定や周囲との関係性が幸福度に強く関連していました。やりたいことの有無よりも、日常の基盤が整っているかどうかが幸福度を支えているという結果です。無理のない範囲で、生活リズムや人との関わり方を見直すことが、将来への見通しを持ちやすくする土台になります。

四つ目は、完璧な計画を作ろうとしないことです。
 調査結果が示していたのは、「大きな夢や目標を持つこと」ではなく、「自分で選んだ行動を続けていること」でした。計画を細かく作り込むよりも、実行しやすい行動を一つ選び、それを続けるほうが幸福度に影響しやすいと考えられます。

 これらの視点は、どれも大きな変化を求めるものではありません。日常の中で選択を一つ増やし、将来に向けた小さな見通しを持つことで、幸福度を支える要素が少しずつ整っていくのです。

水瀬あかり

水瀬あかりの ひとこと

 今日の記事を読みながら、「思うように進めない日が続いている」と感じた方もいるかもしれません。周りの人が前に進んでいるように見えると、自分だけが取り残されているような気持ちになることがあります。でも、その感覚は決して特別なものではなく、誰の中にも静かに生まれるものです。
 うまくいかない時期があることは、失敗や停滞を意味しているわけではありません。体調や環境、気持ちの揺れによって、行動のペースが変わるのは自然なことです。立ち止まっているように見える時間も、心が次に進む準備をしているだけで、無駄になることはありません。
 今日の中で、自分で選んだ行動を一つだけ増やしてみてください。大きなことではなくて大丈夫です。部屋の空気を入れ替える、温かい飲み物を用意する、少しだけ歩く。そうした小さな選択でも、心の負担がわずかに軽くなる瞬間があります。その積み重ねが、将来の見え方を静かに変えていきます。
 もし今、つまづいていると感じているなら、その気持ちを否定しなくて大丈夫です。つまづきは、前に進もうとしているからこそ生まれるものです。今日のあなたが選んだ小さな一歩が、これからの毎日を支える力になりますように。あなたのペースで進んでいいということを、どうか忘れないでください。

 
執筆者
清水隆文

( stnv基礎医学研究室,当サイトの keymaster )
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