健全な若者でも別途補給しなければタウリン不足になる

タウリンは体内でも作られるが、充分量は作れない

『健全な若者でも別途補給しなければタウリン不足になる』

 先にupした記事に『祖先は巨大な貝塚が出来るほど多量の貝を食べていた』というものがあり、そこにタウリンの導入編と言えるものを書きました。今回は、その続きということになります。
 因みに、先にupした内容の概略は、私たちの祖先は少なくとも縄文時代から多量の貝類を食べてきましたので、必要とするタウリンの全量を自分で生合成しなくても、特に魚介類から多量のタウリンが得られたため、生合成能力を衰えさせてしまった人類もしっかりと子孫を残すことが出来た、ということが一つです。二つ目は、ヒトは必要とするタウリンの何割かをアミノ酸のメチオニンやシステインから生合成できますが、その能力は予想以上に個人差が大きいことについて触れました。今回は、先ずはこの件に関する幾つかのデータを見ていただこうと思います。

 掲載した図(高画質PDFはこちら)の左端は、図中にも注釈を入れましたが、平均年齢:25.3±0.5歳の、至って健康な青年53名(日本人37名、韓国人15名、中国人1名)から得られたデータです。3つのグラフがありますが、横軸は全て〝血漿タウリン濃度〟です。
 上段のグラフから見ていきますと、縦軸は〝収縮期血圧〟です。先ず注目していただきたいことは、53名の青年の血漿タウリン濃度のバラツキです。横軸を見ていただくと、低濃度の被験者では20数nmol/ml(ナノモル/ミリリットル)ですが、高濃度の被験者では60nmol/mlになっています。そして、両者の間には様々な濃度を示す被験者が万遍無く存在しています。即ち、健常青年であっても、決して満足できないタウリン濃度の被験者が沢山いるということです。
 では、このグラフ全体を概観してみることにしましょう。すると、血漿タウリン濃度と収縮期血圧の間に負の相関が見られることが判ります。即ち、血漿タウリン濃度が低い被験者ほど、収縮期血圧が高いという傾向です。
 中段のグラフは〝拡張期血圧〟と血漿タウリン濃度との関係を示したものですが、上記と同様の傾向、即ち、血漿タウリン濃度が低い被験者ほど、拡張期血圧が高いという傾向が見られます。
 下段のグラフは縦軸に〝脈圧〟が採られていますが、脈圧は〝収縮期血圧-拡張期血圧〟で算出される数値で、この数値が高いほど大動脈の柔軟性が失われていることを意味します。結論的には、血漿タウリン濃度が低い被験者ほど、大動脈の柔軟性が失われている傾向のあることを示す結果となっています。繰り返しますが、平均年齢が25.3歳の青年において、この結果が得られていることです。

 次に、中央下のグラフを見てみることにしましょう。これは、横軸に〝年齢〟、縦軸に〝血漿タウリン濃度〟が採られているグラフです。単位の表示の仕方が異なりますが、実質上は同じです。なお、これは米国における研究結果であり、被験者の所属、実験系などが異なると、データも異なってくることが多く、全体的に高めの数値になっていますが、大切なのは年齢と血漿タウリン濃度の関係です。
 結論的には、年齢が進むほど、血漿タウリン濃度が勢いよく低下していっていることが確認できます。先に見た平均25.3歳の青年のデータと併せると、若くても既に血漿タウリン濃度が低い人がいるわけであり、その人が食生活を変えずに40歳、50歳、60歳、…というふうに加齢していった場合、血漿タウリン濃度の低下は非常に重大な健康不良をもたらすことになると言えるわけです。例えば血圧も相当高まることになるでしょう。

 次に、タウリンの生理的な役割について見てみることにしましょう。それは膨大過ぎるため、コンパクトにまとめることが非常に難しいのですが、図の右側に、2種類に分けて、一つは<分子~細胞レベルにおける作用機序>として、もう一つは<個体レベルにおける作用>として箇条書きにしてみました。それぞれの詳細は割愛させていただくことにして、その箇条書きの部分をここにも書いておきますが、ざっと流し読みしていただくだけで結構です。

<分子~細胞レベルにおける作用機序>
・浸透圧差を作り、細胞の内容積を調節する。
・イオンチャネル(K+、Ca2+、など)の開閉に関わる。
・細胞内Ca2+とMg2+のバランス調節に関わる。
・抗酸化物質として生体膜の安定性を維持する。
・好中球からの活性酸素種の放出を抑制する。
・リンパ組織におけるT細胞やB細胞の活性化に関与する。
・過剰な炎症反応を抑える。
・抱合によって処理すべき物質の水溶性を増し、解毒を促す。

<個体レベルにおける作用>
 血管を拡張させる、高血圧を防ぐ、血小板凝集を抑制する、動脈硬化を防ぐ、不整脈を防止する、血栓症を予防する、心不全を防ぐ、強心作用を示す、心筋や骨格筋の過興奮を抑制する、心筋や骨格筋の収縮力を調整する、骨格筋の疲労を軽減する、脂肪利用率を高め持久運動能力を向上させる、インスリンの分泌を開始する、血糖値を正常化させる、糖尿病を予防する、肥満を予防する、肝臓機能を回復および促進させる、コレステロールの排泄を促進する、アセトアルデヒドの分解力を向上させる、アルコール禁断症状を抑制する、シグナル伝達物質として神経系を正常に動作させる、胎児期~幼少期において脳を健全に発達させる、目の暗順応を短縮させる、網膜症や白内障を防ぐ、カテコールアミンの放出を抑制する、気管支喘息を改善する、てんかん発作・不安・多動を抑制する、ストレスを軽減する、小腸ぜん動運動を促進する、ミネラルの吸収を促進する、免疫力を強化する、放射線障害からの回復を促進する、発がん率の低下や浸潤・転移を抑制する、各種臓器の機能を維持する、不妊症を改善する、老化を抑制し、寿命を延長する、などです。

 裏を返せば、タウリンが不足してくると、上記の全てに不具合が発生することになります。即ち、身の周りで目にする殆どの不具合や疾患が、タウリン不足によっても起こってしまう、ということです。従いまして、まだ補給されていない方は、是非とも補給を始めていただければと思います。
 なお先にupした記事にも書きましたが、日本では純度の高いタウリンは医薬品としてのみ使用可能になっていますので、日常的な摂取につきましては、米国などの海外にて何種類も売られているカプセル製剤(1カプセル当たりタウリン1,000mgが主流)を是非ご利用ください。

 
執筆者
清水隆文

( stnv基礎医学研究室,当サイトの keymaster )
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